三百十七話
『お、おい……トツカユキカズ、君は何を――』
『ど、どうなっているんだこれは』
ブチブチブチ! っと全身が裂けるような痛みが迸る。
『お前らそこで俺が戦う様を見てろ! 座なんて所にはまだ行かせないぞ!』
俺に謝ってあの世へ行くかの如き所業をした二匹の聖獣にはお仕置きにこの後の戦いを黙ってみてて貰うんだよ!
「おらぁ! 逃がさないぞコラァ!」
バシュっと竜巻を消し飛ばして現れた対邪神の使徒・魔獣寄生型NO,2に向かって俺は指さして啖呵を切る。
ヴァイリオの能力で全身から光を放ち突進する。
「ギ、ギギ!」
「おーっと! こっちも忘れちゃ困るZE! なんか判断できねえけど厄介みたいだしYO!」
「退け! 新たな神獣の邪魔をするな!」
ヴァイリオの演技を続けてやる!
腕を広げるとローティガの炎のツメが形成され、ムーイの妨害をものともせずに立ちはだかるラルオンの搭乗する竜騎兵に殴り掛かる。
「OH!?」
が、さすがはラルオンなのか巧みな操縦技術で装備している剣……異世界の戦士由来に見えるエネルギーソードで受け止める。
が――バチン! っと音を立ててエネルギーが消し飛び吹っ飛ばされた。
「ユキカズ? だ、大丈夫なのか?」
「悪いな。今は話している時間はない」
ブシュ! っと振るった右腕が反動に耐え切れず吹き飛ぶ。
ぐ……やはり俺の体じゃ耐え切れない……か。
けど問題ない。腕が吹っ飛んでも別の部位を生やして代用してやる。
『はやくその力を使うのをやめないか! 君の体が負荷に耐えきれていない』
『気持ちはわかるが無理だ! そんなことをしたら弾け死ぬぞ』
聖獣たちの抗議の声が聞こえる。
俺の体なんて知った事じゃない。
お前らの無念をここで晴らすんだよ!
ぐびぐび吸い込みやがって、あいつだけでもボコボコにしないとイラつくだろ!
「ユキ――」
ムーイが俺の異常を察して止めようと手を伸ばすが捕まる訳にはいかない。
翼を広げて竜巻の中で逃げようとうごめく魔獣寄生型NO,2に向かって突撃する。
「ギ……ギギギ!」
カッと目玉を見開いて魔獣寄生型NO,2が薙ぎ払いの高威力の熱線を放ってきた。
そんな攻撃が当たるか!
紙一重で避けて接敵すると同時に片方の羽がはじけて抜け落ちた。
本当、やわすぎる体に呆れてしまう。
「ああ……ユ、ユキカズが、ボロボロに――」
手を掴めなかったムーイが嘆くように言葉を漏らす。
悪いな、どうもムーイにいつも心配させてしまう。
ギュムっと弾けた羽の代わりとばかりに俺に引っ付いていたムーイの分身が出血部分を抑えてくれる。
しかも溢れるエネルギーを受け止めてくれているようだ。
「おら!」
二つある尻尾の一つで魔獣寄生型NO,2を掴んで残った腕を振りかぶりヴァイリオの光のツメで叩きつける。
「ギギ――ギ……」
ガイン! っと聖獣の力由来で生成したエネルギーの盾で受け止めやがった。
この野郎! どんだけ頑丈なんだよ。
「じゃあこっちだ!」
右足にエネルギーを込めて蹴り上げる。
「ギギ!?」
ガイン! っと良い感じの音が響いて魔獣寄生型NO,2の装甲が大きくゆがんだ。
おーし! あと少しでぶっ壊せるぞ。そうしたら寄生して奪ったエネルギーを奪い返してやる。
ブシュ! っと右足がはじけ飛んだ。
はは、大丈夫大丈夫、変身で腕や足が沢山ある魔物になれば腕や足の数本吹っ飛んで再生不可だったとしても不便じゃない。
『無茶をするな! 死ぬ気か!』
『君が壊れて行く様を私たちに見せてどうしたんだ』
『自暴自棄になるな! ああ……君の性格を知っていたはずなのに。確かに君は無茶をするのだった。これは……私のミスか』
中から出たエネルギーで……崩壊したヴァイリオとローティガの体を再構築するのは、俺じゃ無理か。
せめてヴァイリオたちの解析がもう少しできればな。
いや……俺の中にこの二者は居る。エネルギーを取り込んだ状態で解析をすれば再構築だって出来るはずだ。
そこで大人しくしてろよ?
「これで、とどめだ!」
残った左足と尻尾で光のツメと炎の尻尾で仕留めようとした直後――。
ドガガガと無数のナンバースキルと、凝縮された熱線が俺の体をゆがませるほどの衝撃が走る。
「ぐあ!?」
いてーな! 致命傷にはなってないが悶絶するほどの痛みだったぞ。
幸い体の方は流れているエネルギーの関係で貫かれることは無かったけれどエネルギーが巡って無かったらぶち抜かれていたのは間違いない。
吹っ飛ばされて魔獣寄生型NO,2を落としてしまった。
「逃がすか……よ!」
落下するのを追撃するように体を回転させながら追い打ちをかます。
「ギィイイイ――」
ドゴ! っと良い感じにへこませて完全に沈黙……よーし! 後は……と二射目が魔獣寄生型NO,2に放たれた。
その衝撃で爆裂しやがった。
バァ! っと周囲にヴァイリオたちのエネルギーが爆発するようにあふれ出す。
そのエネルギーを俺は出来る限り吸収するんだが……拡散したエネルギーを吸うのが俺だけじゃない。
さっき攻撃した奴は誰だ!
っと、エネルギーを奪っているのを見るとラルオンの搭乗する竜騎兵から金属の触手がパラボナアンテナみたいに出ていて吸い込んでいて、他に空にマシンミュータント・対邪神の使徒・魔獣寄生型NO,3って奴がいる。
ヴァイリオ用に待機してたってか? 準備万端なことだなおい!
ん? よくよく見るとこっちも結構ボロボロだ。
「くそ! 阻止できなかった」
ってやってきたのは健人たち。
ああ、そいつがどこかにいるのをオウセラから聞いて探してたって事か。
同時作戦が行われていたんだったけれど、邪魔されたら失敗したようなもんか。
「させないぞ! ユキカズ! 大丈夫かー!?」
ムーイがラルオンと竜騎兵に向かって殴り掛かり、妨害をしている。
まあ、無茶してる自覚はあるから尻尾だけで合図を送って置こう。
「んぐうううううう」
が、爆心地に近い俺が一番、ヴァイリオたちのエネルギーを受け取ったのは間違いないぞ。
残された尻尾と分身のムーイが補助となって立ち上がる。
羽が吹っ飛んでいるのでまだ飛べない。
「HEY! 随分と力を蓄えているみたいだNE! 俺っちにも分けてくれYO!」
っと、ラルオンが竜騎兵で狙いを定めて襲い掛かってくる。
「おい! 雪一、やべーんじゃねえか!」
「ちょっと、重症なんてもんじゃないのに何その力。圧迫感が半端ないわよ? 大丈夫?」
健人とレルフィ、それとリイ、ルセトさん達が駆けつけてくる。
「ケント! あいつが逃げる。追いかける?」
「ああ、そうだが……」
ルセトさんが健人に魔獣寄生型NO,3は吸い取ったエネルギーでパワーアップした後、高速で逃げ出したのを報告していた。
「ここは私達に任せて健人……あいつの足止めをして」
「そうだな。アイツをそのまま行かしていられねえ」
何か決意に満ちた顔の健人が魔獣寄生型NO,3を追いかけて行く。
「そろそろ本気でいくZE!」
で、ラルオンの方は吸収したエネルギーでパワーアップしたのかそれとも不利を判断したのか竜騎兵から光が放たれて高速移動をする。
「早い! さっきより動きが良くなってるぞ」
ムーイが防戦一方になっていく、攻撃が命中しても致命傷には至らないが足止めがほぼ不可能だ。
「ユキカズ! くうう……」
リイたちではラルオンを止めるのは無理だ。
アリでゾウと戦うほどの戦力差がある。





