三百十一話
「ガア、ガアアアアアア!」
で、ローティガは助けを求める念の方は相当狼狽えているようではあるのがヴァイリオ経由で伝わってきている。
話す訳にはいかないのは相手に施された部分から情報が洩れるだろうからという話だ。
敵を騙すには味方からだとか。
「HEY! ギギ――随分と卑怯なことをするんじゃないかYO!」
で、竜騎兵の方からラルオンの声が聞こえてくる。
どの口が言うんだ? いや、言わされているんだろうが。
ああ、そこで喋るのか? 生憎とレラリア語でしゃべっているから言語は分かっても答えてやるのは如何なものかとは思うんだがな。
ヴァイリオが使った言語はこの世界の言語だし、一方的に通じるって事だろう。
反応は……してはいけないだろうなぁ。
ちなみにヴァイリオには俺が通訳している。
『応じたいだろうが我慢してくれ』
『わかっている』
俺は無言でムーイに視線を送る。
「さて、俺も神獣として力をつけて行かねばならぬ。お前たちはその為の贄となって貰わねばな」
本当さー……物語だとこういった化け物とかどこかに居たりするんだろうけど、そのポジションを俺が担うってのは本当にどうなんだろうって愚痴しか出てこない。
漁夫の利で出てきた第三勢力なのかなー……まあ、俺の気配って聖獣だと一発でわかるそうだし神獣とは名乗れるのかな。
「いけ! 我が僕よ! 俺はこいつを相手にしよう。十分に甚振ってやれ!」
ノリノリのヴァイリオが俺の振りしてムーイに命令する。
「……」
ムーイも分かってるからか武器を握りしめて竜騎兵の前に構える。
人間より少し大柄程度のムーイが見上げるほどに大きい竜騎兵と対峙する光景……。
ちなみにムーイの体格は多少大きくすることは出来るけれど、ムーイのスペックからしてこのサイズで戦うのが良いとの判断だ。
場合によっては膨らんである程度大きくなるというのも考えているけれどムーイのセンスでそのサイズとなった。
仕込みは十分……任せたぞムーイ。
後ろ手にムーイが親指を立てた。
任せてくれって事だ。
「さーて……ローティガだったか、十分に甚振り聖獣としての力を頂こう、どうやら妙な連中に操られているようだがそのまま私の一部としてくれる」
ぐ……マジでその下り、受け入れないといけないの?
「ガ、ガアアアアアアアアアアア!」
たぶん、操られている状態でも操っている奴と同じ意思を持って俺への敵意を募らせてるぞ。
逆に不安になってきた。
このまま俺、殺されたりしない?
ピンポイントで額を狙ってくるのは分かる。
で、後は後方にいる迷宮種共の援護射撃が懸念点か。
正直に言ってヴァイリオの傷は一応塞がっているけれど完全回復には程遠い。
ハンドレッドダガーとかいろんなナンバースキルをぶっ放されて耐えきれる程、状態は甘くはない。
健人たちは別動隊で動いているが……という所でモクモクと煙が周囲に漂い始めた。
ああ、エミールが離れた所からスモークブレスを使ってくれているのだ。
さらに植物操作で遮蔽物を大量に出している。
「では行くぞ! はあああああああああ! ガアアアアアアア!」
激しい雄叫びと共に俺とヴァイリオはローティガに向かって駆けだした。
ここからはほぼヴァイリオに任せた戦闘に近い。
精々力を込めて魔眼と魔法を放つのがメインとなっている。
『ユキカズ、君の力と私の力を合わせて使わせて貰うぞ!』
『俺がいることで使える能力が増えるならやってくれ』
『もちろんだ!』
「これでも食らうが良い! スターライトストリーム!」
ヴァイリオの額の魔眼からまばゆい光が放たれて光の放流となり周囲に大きな爆発を巻き起こす。
俺の習得魔法のスターショットとエネルギーバーストを触媒にヴァイリオの光のスキルとの混合スキルだ。
「ガァ!?」
放たれた光でローティガが目を晦ませ、若干光で焼け焦げたがそれ以上のダメージは与えられていない。
これが健人とか俺だったら光で大ダメージ、下手すりゃ失神してただろう。
もしもヴァイリオと戦う事を想定した場合、光属性の耐性装備は必須か……もしくは闇属性の魔法で光への対策を施すって所かな。
……まあ、ムーイが全耐性を持っているから俺とムーイ自体は問題無いか。
「ガァアアアア!」
わずかに目くらましを受けて激昂したローティガが雷を纏った強靭な前足で切り裂いてくる。
恐ろしい速度と強靭な一撃だ。
想像通り俺の部分を狙って薙いで来るのをヴァイリオは見切って大きく横に飛ぶが遅いとばかりに突進し、再度振りかぶってきた。
「はあああああ!」
プラズマクローとでも言うべき一撃をヴァイリオが光を宿した牙で噛みついて受け止め弾き飛ばす。
うげ……早すぎる。
進化して大分パワーアップした俺だけどこの速度に追いついていない。
これも数秒のタイムラグがあって認識できたに過ぎない。
ピコっとローティガの攻撃名が今更表示される。
グロムルカー
いや……つーかそんなスキル名を解析出来てどうするんだ。
ヴァイリオに寄生している影響で分析力が大きく向上してるって事なんだろうけどスキルを分析出来てもな。
習得とかは出来ないし、わかるだけってのも……とはいえ威力がシャレにならないのだけは攻撃倍率とかステータス部分も見えて洒落にならない。
よくもまあ、ヴァイリオはこんな攻撃を受けて生きてたもんだ。
「ガァアアアア!」
バチバチ! っとローティガに雷が落ちて雷を纏う。
「ふん!」
で、ヴァイリオも光を放ち始める。
光の膜か……。
「まだまだ小手調べ、ふふ……聖獣の体をもう少し馴染ませねばな」
ヴァイリオさん、演技が半端ないのをどうにかして?
馴染むもなにも俺はそんなことしてないから。
内心ツッコミまくりで酷いのは分かってる。周囲の評価なんて気にする状況じゃないのは。
集中しろ……ヴァイリオが命懸けで注意を引きつけているんだ。
俺は俺に与えられた仕事を最大限こなす。
じゃないとヴァイリオの努力が無駄になる。
この世界を守りたいって……あんな重傷を負って、大事な仲間をおいて逃げなきゃいけなかった屈辱を、その意思に泥を掛けてはいけない。
全てはローティガとラルオンを助けるためなんだ。
そのための汚名なんて気にする必要はない。
チラッとムーイの方に視線を向ける。
「これはどうだZE!」
ラルオンの操縦する竜騎兵の攻撃で土煙が起こるのをムーイは流れるように叩きつける剣を殴りつけて逸らしながら飛び掛かる。
「おっと、それは受けるつもりはないYO!」
バサァ! っと羽ばたきでムーイを跳ね飛ばす。
跳ね飛ばしでべちゃっと地面に叩きつけられるムーイだけど即座に元の形に戻って追撃をよけきった。
いや、時々耳とか被弾するのだけどムーイは液体系の迷宮種故に急所に当たらない限りは致命傷にならない。
「グルル!」
っと、ムーイの方が御しやすいと判断したらしい後方にいる迷宮種が数匹、ラルオンに加勢するとばかりに接近してくるのだけど直後、腰を低くしたムーイが飛び上がってアクセルエアを叩き込む。
「ググル!?」
で、ナンバースキルで加速して避けるまでは良いのだけどラルオンの周囲をウロチョロする。
「邪魔だZE! お前らは下がってないと、こいつの獲物になっちまうYO!」
一匹、ムーイが捕まえた奴を動きを封じるとばかりに体を一部金属に変えてしまっていた。
それだけで動きが大きく鈍っている。
な、なんだ? ムーイから……妙な気配がする。
おい、俺が授けたナンバースキルを使ってないか?





