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三百十話


「さて、ユキカズの提案した作戦に関してだが……ヴァイリオ、君が閃いた手立ては万が一の手段として有効だ。いざという時に切りなさい」

「……ああ」

「あまり助言らしき助言が出来ないのが口惜しい所か、ユキカズ。君の頑張り次第でこれからの結果が変わってくる。望む未来の為に手段はあまり余計な矜持は考えない方が良い」

「お前もヴァイリオのようなことを言うな……」


 どいつもこいつも俺の主義にケチをつけるなぁ。

 綺麗事じゃ片づけられないのは分かってるけどこうも言われると言い返したくもある。


「何、多少の小細工をするまで、これで効果があったら良いし、失敗しても問題あるまい」


 なんだろ……すごく嫌な予感がする。

 こういう軍師の作戦ってえげつない事ありそうで嫌だなぁ。


「効果は多少期待できるぞ? それはだな――」


 と、聞いて俺は嫌な気分になったのは言うまでもない。

 ヴァイリオは笑ってたぞ。こんな小細工が効果があるのか激しく謎だ。


『あ――う、ぐ……きょ、拒否――開け――』


 と、ローティガサイドから道を開く申請の念が座の方から流れ、ベリングリが拒否をしている。

 もう一体の反応も賛成寄りの念が流れてきている。徐々に改造が進んでいるのだろうと推測されている。

 そんな座の攻防内でヴァイリオから新たな信号が流れ込んでくる。


『うぐ……ベリングリ、あぁ――す、すま――』

『ヴァイリオ!? おい! どうした? おい!』


 ま、一番驚いたのはベリングリの意志だと思う。

 後で謝罪するしヴァイリオもしろよ? 本当、申し訳なく思ってるから。




 で……作戦を練って数時間後の事だ。

 町を防衛するために近づいてきたローティガを含めた侵略部隊が雁首揃えてやってきていた。

 先発はローティガでその隣には竜騎兵……更に後ろにいる迷宮種は、ヴァイリオの記憶よりも数はだいぶ少ない。

 警戒はしておいた方が良いか。


「グルルル……」


 ローティガが現れた俺たちを前に唸り声をあげている。

 その隣にいる竜騎兵も戦いに参加するとばかりに構えていた。

 あそこにラルオンが載っているか。


 機械仕掛けの聖獣ローティガ

 試作第一世代バイオモンスター・ホワイトマシンミュータント・デビルドラゴン


 ピピっとヴァイリオの記憶ではなく俺の視界にローティガと竜騎兵の名前が表示された。

 機械仕掛け……なんとも皮肉が聞いたネーミングだな。

 その隣の竜騎兵もなんとも嫌らしい名前だ事で。

 まあ、相手の名前が浮かぶのは最後の神獣に選ばれた俺の能力らしいからこんなもんかね。

 で、俺たちはというと俺とヴァイリオ、そして隣にはムーイが立っている。

 ムーイは人より少し大柄だけど、ヴァイリオは竜騎兵より大きいのでサイズ感が果てしない。

 いや……まあ、ムーイも多少体積を増やせるけどね。

 ちなみに町の警護を任されたエミールは巨大化して後方で守りを固めているぞ。

 健人やリイたちはオウセラの指示で別行動中。カトレアさんは回復や支援をするために町の結界ギリギリでこちらの戦況を傍観するとの話だ。

 俺たちと共に戦いたいと町長を筆頭に義勇兵が名乗りをあげたけど避難民を守ってほしいと町に待機して貰った。

 最悪の場合は一目散に逃げて貰わないといけない。

 俺たちに任せてほしいとしか言いようがない。この状況で余計な犠牲を出す訳にはいかないんだ。

 勝てたとして犠牲者が多いのは……これが戦争だとしても好ましい事じゃない。

 相手が相手だ、無駄ともいえる犠牲なんて絶対にさせたくない。

 結界も強化はしたけど迷宮種の中にはすり抜けて入る奴もいるので心もとない。


「……」


 ギュッとムーイが愛用している竜騎兵用の剣を肩にかけて強く握りしめている。

 何が何でも守らないといけないもんな。

 ラルオンの戦闘モーションのデータはしっかりと学習して貰った。

 バルト仕込みの超ハードモードを出来る限り体験させたぞ。

 脳内の模擬戦闘だったけど、ムーイの才能の底知れなさってのは果てしないもんだ。

 とはいえ、予想外の何かが来る可能性は大いにあるので警戒はしっかりとして貰う。

 悠々と相対してにらみつける俺たち。

 元々ヴァイリオが語り掛けてもまともに返事してないんだから会話は不要か?


「ガアァア!」


 おや? 操られているし、会話を相手はする気はない癖にこっちの異変に関して好奇心があるようだぞ?

 なら自己紹介となる……んだけど、嫌だなぁ。


「お初にお目にかかる。俺は……よくわからないが新たな神獣らしいな、名前はまだ無い。お前たちが俺の狙っていた聖獣を随分と弱らせてくれたからさ。こうして……聖獣を吸収させて貰った。もはやこの聖獣ヴァイリオは俺の一部だ。実に素晴らしい力を俺は得たよ」


 ヴァイリオが口を開いて、なんかカリスマがある感じで自己紹介……ややきざっぽく説明する。

 で、今の俺がどんな姿でどんなことをしでかしているのかというとな?

 ヴァイリオの眉間からニョキっと俺が生えてるように見えるだろう。

 尻尾をポニーテールみたいに後頭部から生やして、エミールに貸してた杖を握らせている。

 魔眼をぎょろりと開いてるぞ。

 で、ヴァイリオの目は光沢が無く、感情もなく操られ……いや、取り込まれている感じだ。

 名前を名乗らないのは俺のせめてもの懇願だ。ここで兎束雪一って名乗るのは避けたかった。

 オウセラも名乗らない方が良いって言ったし、相手に無駄な情報を与えないのが大事だってさ。

 ムーイも喋りたくても出来る限り喋らないようにと注意している。特に俺の心配をするようなことを言ってはいけないとまでね。


「この世界をお前たちは侵略しようとしているようだが、残念……それは俺がすることだ。ふふ、侵略者はお前たちだけではなかったという事なのでな。この町の連中も、迷宮種ムーフリスとエミロヴィアも俺の洗脳の魔眼で既に配下となっている。後で一人一人頂き俺の一部となる運命だ」


 耐えろ! なんでこんな邪悪な魔物の演技をしないといけないのかと抗議してヴァイリオを含めた周囲の連中に苦笑された屈辱を気付かせるな。

 健人が古いRPGの悪役みたいだと言ったことを忘れるな!

 ヌシとか取り込んでプレイヤーに襲ってくるボスがいたらしい。俺がそんな類の邪悪な魔物だとでも?

 なんでこんな邪悪ムーブを俺がしないといけないんだって叫んだよ!

 パラサイトに進化したツケが何処まで付いて回るんだ!


『ユキカズ、君が嫌なのはわかっているから今は耐えてくれ。敵にどれだけ軽蔑されたとして気にしてもどうしようもない。おそらく君の記憶にある敵も生きていたらもっとひどいイメージを君に持っているぞ?』


 ああ……藤平辺りはそうだろうな。

 あいつが仮に意識が残っていたら俺なんて邪悪の塊だろう。

 変異する直前に言いたい放題したしなー……。

 他にも俺が神を僭称するアイツとかも、俺を何処までも卑怯な奴だと思ってそう。


『たださー……ヴァイリオ、俺に乗っ取られムーブをノリノリでするのはどうなんだよ!』

『悪いね。でも中々これは楽しいものだよ』


 本当、お茶目というかよくわからん所がヴァイリオにはある。こんな演技が楽しいのか? 俺になり切って邪悪ムーブするのって。


『ふふ、君だからこそ出来る付き合いだと思っている。本来の立場であったら冗談ではないだろうさ。私自身がこんな演技をするとは思わなかった……何が起こるかわからないものだ。面白いもんだよ』

『……』


 と、ともかく……本当は乗っ取ってなんかいないぞ。


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