三百九話
「ああ、で、戦いで重要なのは作戦なんだが何か無いか?」
「ふんわりとノープランで進化とかしてんじゃねえよ」
「作戦が無いわけじゃないっての。ヴァイリオとだって色々としながら作戦の打ち合わせはしたさ。けどそこに健人やムーイ、エミールが会話に入って無いから、より強固にするためにこうして聞いてんだ」
俺はヴァイリオの情報をもとに作戦の内容を話す。
そう、目的と作戦はこの先の戦いで重要だ。
目的はラルオンとローティガの救出だ。
「――って感じの作戦で行こうと思うんだが行けると思うか?」
「実に目玉の化け物がやらかしそうな邪悪な攻撃じゃねえか」
「わかってるよやかましい!」
こうでもしないとラルオンとか助けられないだろ。
「えっとなー」
ムーイがここで挙手する。
こういう時のムーイってエグイというか俺が受け入れがたい提案してくるのがお約束なんだよなー……。
何を言ってくるだろうか?
「……ムーイ、ちょっと体を貸してほしいっきゅ。たぶん、そっちの方が良い気がするっきゅ」
が、ラウがムーイを遮るように声をかける。
「ん? わかったぞ」
ぶちっとムーイが体を分けてラウを抱き上げると、ラウの持っていたオウセラの玉が光ってムーイがラウごと包む。
すると光となって……オウセラが姿を現した。
「どうやら神獣の子がヴァイリオと話が出来たようで何より……あまり時間は無いようだ」
「おう出やがったな」
「これはこれは……私の子孫と良くしているものだな。異世界の戦士・健人、最初の神獣に選ばれし者よ」
仰々しい感じに翼で紳士のように一礼してオウセラが健人へと挨拶をした。
リイは先祖って事で祈るように一礼して返す。
「あまり顕現していられないが何か知りたいことはあるかね? 無いなら作戦の補強に入りたい」
ホウって語尾っぽい声音でオウセラは聞いてくる。
森の賢者って能力だったか。
知略は得意科目っぽいもんな。
「基本的に救出をしたいという考えで行きたいのは承知している。が、手札を切るタイミングを随分と間違えているのだ。情報は宝、ヴァイリオ。君の声は座からローティガへと伝えることは出来るだろう?」
「う、うむ?」
「そして最後の神獣に選ばれし者にして未知の領域に行くユキカズ……君は自身の立場を利用しきれていない」
「はあ……」
で、更にオウセラはムーイの方へとチラッと視線を向けて振り返る。
「……まあ、最適解が良いとも言い切れないのでね。それはあの方も喜ばないだろう。面白みの無い行動は時にすべてを失いかねない」
「その思わせぶりな話し方止めてくれない?」
「ああ、すまないね。これも性分なんだ。ラウの事をこれからもよろしく頼むよ。この子はいずれ私に似てくると思うから」
はあ……ラウがオウセラに似てくるのかー……似るんじゃなくて徐々に成り代わられるとかだと困るんだけどなぁ。
「成り代わる訳ではないよ。君たちと一緒にいるとそう育っていくだけなのだよ」
俺の内心の愚痴を読まないで下さい。
「ちなみにラウが君たちに執着するのは最初はユキカズ、君から発せられる力を感じた本能からだけど、そのあとはこの子の意志だ。こうして協力するのも一種の養育費と思ってほしい」
はいはい。オウセラが手伝ってくれるのはラウの養育料って事ね。
「そこはおいおいとして、力が劣るものが時に手段を選ばず知恵を駆使するのは目標を達成するのに重要な要素だ。雪一、君とヴァイリオの望みを達成するための作戦を補強する……すでに敵の勢力がどういった名であるかは分かっているだろう?」
それが分からねば話にならないとオウセラは俺に挑発してきた。
俺はヴァイリオに寄生したままフッと改造された迷宮種たちに組み込まれていた基盤を出現させて浮かべる。
「随分と悪意と意志が組み込まれた代物だったけど製造メーカー名は分かったよ」
進化したお陰で解析と復旧に関して出来ることが増えた。
ま、本格的なのはフィリン並みの機械や魔導の知識が必要っぽいけどね。
世界救済―――神話討―プ―グラム、ラグナ――
って奴、復旧されたら……。
世界救済センター神話討伐プログラム、ラグナロク
って出たけどこれはそこそこフェイクが混ざっていた。
ハッキング対策ってのも完備してるつもりかね。最初は騙されたけれど魔物の本能というか勘が働いて更に解析した所でロゴに組み込まれた文字が切り替わった。
世界救済センター・邪神討伐プログラム・アポ・メーカネース・テオス
とね。
なんか聞いた覚えのある文字列な気がするようなそうじゃないような気がする。
後はプログラムの羅列しか書かれてなかったけれど、よくもまあここまで悪意ある代物があるのかって呆れたもんだ。
少なくとも肉体と意識、魂まで意のままに操り命令を実行するように組まれている。
情報交換も定期的に行われていて命令や書き換えも行われる。
うまい事その流れでハッキングしていけたらよかったけれど生憎とこの基盤で得られる情報は限界がある。
「そこまで分かればある程度は問題ない。爆発物を解体するのを意識するといい」
「そりゃあ何よりで」
兵士ってそういった技能を覚える職種だったかなー。
まあ……ミリタリー的な発想だとそうなるのかもしれない。
日本に居た頃のFPSゲームとかに相手の基地に爆弾を仕掛けるってルールの戦いとかあった気がするし。
そんで俺の技能が基準を満たしていると理解したのかオウセラは、ムーイ……ではなくエミールの方に顔を向けた。
「エミール。君は都市防衛。いざという時に味方が駆けつける時間を稼ぎたまえ」
「わかったんだな。頑張るんだな」
「健人。君とリイ、それと他の腕に覚えのある者たちは別動隊として動いてもらいたい」
「へいへい。何をすりゃいいんだよ。話次第だぜ?」
「そこは後で説明する。で」
オウセラはムーイに近づくと耳元で何やらこそこそと話をする。
ムーイはなんか目を見開いて顔を赤くしたかと思うとすぐにはっとなって頷き、真剣な表情になった。
「わかったぞ」
「君も閃いていた最適解も切る可能性は大いにある。が、口にはしない方が良い。彼は好まないだろうから」
「そうならないように頑張る」
あのさ……頭いいのは分かるけどしっかりと伝えてほしいんだけど?
三国志とかで軍師と将軍の仲が悪かったとかいう話ってこういった所もあるのかな?
兵士は将軍や軍師に逆らえない立場なんだけど。
一応、ヴァイリオが将軍になるのかな? となると俺は軍師? いや……違うか。
精々偵察兵か工作兵かな?
「ユキカズ、君はこれからの数時間にムーフリス、ムーイに戦う相手の情報を出来る限り体験させなさい。彼女の戦闘センスは把握しているだろう? 教えた分だけ成功の可能性が上がる」
「わかったよ」
ムーイにラルオンの戦闘データを体験させろって事ね。
残り時間は刻一刻と近づいているけれど想定される攻撃をムーイに……寄生状態で見せる映像として教えればいいのか。
訓練は大事だもんな。俺も竜騎兵の操縦訓練をバルトに叩き込まれたっけ。
お陰で藤平相手に余裕を持って戦えたし、その辺りのありがたみは痛いほど知っている。
……そういえばバルトがラルオンの動きをデータにして俺と模擬練習させてくれていたな。
確かあの時……ラルオンに異世界の戦士の力を付与した状態での模擬戦闘なんてのもあったぞ。
色々と調整してくれていたけれど、こうして戦う事になると思うと何が幸いするかわからないもんだ。





