二百六十六話
「こっちのムーイは力の源がある方だぞ」
と力の源があるって方のムーイが元気に片手を上げて言う。
「こっちは……力の源が無い方だぞー」
それで力の源が無いムーイがやや呼吸が荒い様子で答える。
「大丈夫なのか?」
「今は大丈夫だぞ。こうして触れば力が流れるからしばらく動ける」
力の源のある方のムーイが触ると無い方の呼吸が安定する。
なんか凄い芸だな。
と言うか……ムーイって分裂出来るか。
よく考えたら前にデリルインの攻撃を受けた際に切断された体をすぐにくっつけていたもんな。
「「力の源が無くてもしばらくは動けるけどあんまり派手に動くと動けなくなっちゃうぞ」」
ムーイからすると分裂した自分ってどんな感じなんだろう?
「「ユキカズ、ムーイが別れたらどんな感覚なのかって思ってるでしょ?」」
察しないで欲しい。そんなにも俺ってわかりやすいんだろうか?
「別れたばかりだから同じだぞ。だけどこっちの力の源が無い方がユキカズの事を想う気持ちを多く分けてるつもりだけど……やっぱりこっちのムーイもユキカズが好き!」
愛の告白が強いなぁ……。
「だからユキカズ、力の源が無い方のムーイに寄生してみて欲しいんだぞ。ムーイの力の源が大きい所為で出来ないなら無い体を用意したら出来るかも知れないし、さっき言ったユキカズの本能にも良いと思うぞ」
そう言いながら力の源が無い方のムーイが寄生しやすいように腹に一筋の亀裂をグバァと開かせる。
実験内容に関しては分かった。
確かにこの方法なら俺もムーイに寄生する事が出来るかも知れない。
「これが上手く行ったらユキカズ、寄生してる方のムーイの事を考えて自由にさせなくて良いぞ。ムーイ、ユキカズの体の動かし方を知りたいし、ユキカズにメチャクチャにされたい」
いや……メチャクチャにされたいってのもどうなの?
これが女心って奴なの? よく分からない。
「ううん……素直に言わないとユキカズ分からないのがわかったから言うとね。寄生して欲しい。ムーイ、ユキカズが寄生して居るのが幸せだから」
これがムーイの本心って事なんだろう。
あんまり良いとは思えないけどムーイの生体として分裂出来るから困らないって事なんだろう。
約束しちゃったので実験には付き合おう。
「それじゃ寄生してみるぞ」
「「うん!」」
力の源の無い方のムーイに近づき、俺は開かれた穴へと入り込んで寄生を行う。
「ああぁ……ユキカズがムーイの中に――入って、入ってくる」
卑猥な言い方しないでくれない?
ぐぐぐ……っとムーイに寄生を完了させて体の中にある力の源がムーイの体の中を循環して行く。
……ふむ、時々ビリっとするけど焼けるほどのエネルギーの流れは無いようだ。
あ、よく確認するとムーイの体、中を膨らませていて結構スカスカだ。
ムーイを半分にしてるから当然か。
お菓子を食べればこの部分が補充されるって話だっけ?
それと……ムーイが自身を女になりたいって決めて居るからかよく分かって無かった部分に内蔵が出来てる。
カトレアさん達から教わった事を反映させているんだろう。
「どうだー? ユキカズ」
「特に問題は無く寄生出来たみたいだ」
「おー! やったー!」
力の源を持って居る方のムーイが我が事の様に喜んでいる。
「えへへー……ユキカズがお腹に居るー」
で、寄生している方のムーイがお腹を抱え込んで嬉しそうに言った。
「いいなー」
羨むのもどうなんだろ?
って所でニュッとムーイの体の一部がそれぞれ丸まって双方に交換される。
「この感じ。懐かしいぞー」
「えへへー」
共有も可能って感じなのかね?
「遠隔で意識が繋がっている訳じゃ無いんだな」
「そうだぞー念のために一部を交換してみたんだぞ」
色々と便利な体をしてるなぁ。
「ユキカズ、このムーイはユキカズの為のムーイだぞ。だからどんな事をしても大丈夫、凄い力で消費しても良いしカーラルジュみたいに苗床にしても良い。その分、補充出来るぞ」
それもどうなんだ? 消耗品にして欲しいってのは間違ってると思う。
やっぱりムーイは基本スペックがおかしい。
ムーイの体で手を開いたり閉じたりして確認する。
前に寄生してどうにか生きてた時に比べたら不思議な位力が出るなぁ。
全身を使ってエネルギーを循環させていたのとは異なり、何もせずに俺の体の中にある力の源が供給している。
「俺が寄生したムーイと力の源のあるムーイだとどっちの力が多い?」
「少しだけ力の源のあるムーイの方が強いぞー」
ああ、やっぱりそうだよな。
少しだけこっちの方が足りない。
って思って居る所で力の源のある方のムーイが絡んで来る。
「えへへ、ユキカズがムーイと同じ種族になったような気分ー」
元々お前の体だからな。と言いたいけどムーイが言いたいのはそういう事じゃ無いんだろうなぁ。
なんか俺が寄生した方の体は元々のムーイの体に比べて角張ってるような気もする。
「ユキカズがムーイの体をどう使うかでムーイも学べるぞ」
前にやったな。
ムーイ自身の手をスラッシュウォークアイに変化とかさせたりしたっけ。
今のムーイの兎っぽい体もその辺りから学習した結果だった。
昔はマシュマロとかモチみたいな体付きだったもんな。
俺から学べる事が多いって事なんだとは思う。
「もう少し実験して良い?」
「今度は何をするんだ?」
「えっと、ユキカズの体をそのまま抑え込んで無理矢理楽しい事をするって事も出来ると思う」
急いで寄生を解除しなきゃ行けないかな?
そんな巧妙な作戦と強引な行為は何があっても抵抗するぞ。
と言うか誰からそんな事を教わったのかな?
「しないから安心して欲しいぞ。そうじゃなくて、ユキカズとずっと一緒に居る方法だぞ」
こんな感じ? と言いながら俺が寄生して居る方のムーイがヌルッと動いて寄生して居る俺をそのまま外に出して尻尾の全てに纏わり付く。
そして尻尾に擬態して……大きな尻尾が三本になってしまっている。
そこそこ重たいが、ふわふわで密度のある尻尾になってしまった。
もはや尻尾の方が俺より大きいんだが。
「どうだー? これでムーイに寄生してるって思われないぞー」
「尻尾が増えたのが気にならないならな」
「後、エミロヴィアに寄生しながらムーイともこれで出来るぞー尻尾経由でエネルギーを流すんだぞ」
そんな方法がねー……まあ、それで良いならやってみても良いけどさ。
とりあえず尻尾の一つは寄生用の触手な感じで運用すれば良いのか。カーラルジュの呪いで変化はしてるけど寄生能力を付与は出来る。
「後はなーユキカズの姿に変わるって方法もある。そうするとユキカズが大きくなった感じになる」
ああ、ムーイが俺を寄生させたまま俺の姿に化ける形だな。
なんかちょっと訳が分からないだろうけど……マトリョーシカみたいと言えば分かりやすいかもしれない。
「ユキカズ、ムーイはユキカズが大好きだからこうして寄生していて欲しいぞ。あ、でもユキカズも一人になりたいとかムーイがいると気まずい時とかあると思うから言ってくれたら離れるぞ」
力の源のある方のムーイに戻ったり、何か維持が出来る様にするようだ。
「……わかったよ」
俺の中にある余っているエネルギーを上手くムーイに使う事が出来るんだから無駄にはならないだろう。
まあ、この方法だとムーイの力の源と反応させて迷宮種の力に変化を入れて使うって事は出来ないけどね。
これが返事を保留にした償いって思えば良いか。
……なんとなくコレはコレでムーイからすると健人の楽しい事に匹敵する事なんじゃないかとも思えるけど。





