二百三十四話
検証の為に再度俺はムーイとの寄生を行う。
ぐぐぐ……っと繋げた所から力の源が反応してエネルギーが増幅して流れ込んで来る。
「ムーイ、極力俺に流れないように意識してくれ」
「わ、わかったぞ」
ムーイは戦いの申し子で本人の能力で天賦の才があるんだ。
こう言った難しい体の操作もすぐに出来る様になるだろうし俺だって練習してギリギリのラインを掴んで見せる。
「言った俺が言うのもなんだけどよ。雪一、お前も凝り性だな」
「いざって時に備えてだ。何が起こるか分からないんだから」
本当、思えば人生って言うのか何が起こるかよく分からない。
日本に居た頃だって異世界に来るなんて思いもしなかったし、兵士になった時だって迷宮に置き去りにされるとか思いもしなかったし、異世界の戦士の力を使い切った時だって魔物化してサバイバルするなんて思いもしなかった。
俺に出来る事は今できる事を全てして行く事なんだよ。
で、ムーイの高密度エネルギーに体を慣らして焼け付かないようにする練習をする。
ゲイザーになったので耐性面も強化された。
正義のパワーで焼き焦がされる邪悪な魔物がパワーアップして正義を乗り越える事が出来るかも知れない。
ふははは、お前の力はこの程度か? って感じでさ。
ムーイって正義の味方なのかと言ったら善良だからきっとそうだろう?
って感じでムーイに寄生して極力流れないようにするのだけど。
「うぐうううう……」
ムーイが俺へエネルギーが流れないように思い切り踏ん張ってる。
確かに流れ込むエネルギーは減ってるんだけど……それでも多い!
しかもムーイの体自体が強靱になるのか締め付けが強い! 圧殺されかねん!
けど負けるか!
「くうううう……あ!」
ドバァ! っと効果音でも流れてきそうな勢いでムーイの全身から俺へエネルギーが流れ込んで来る。
「アッチィイイイイ!」
ムーイと繋げた神経部位に途方も無いエネルギーが流れ込んで俺の神経を焼き焦がす。
カッと俺の体内にある神迷コアにムーイのエネルギーが流れ込んで増幅してムーイの体に戻って行く途中で神迷コアも活性化!
『――!!!???』
チリチリと何か悲鳴のような物が聞こえる様な気がする。
カーラルジュとフレーディンの悲鳴かな?
ズルンとムーイとの寄生を解除して転げ回っているとエミロヴィアが気を利かせて液体を俺に振りかけてくれる。
徐々に傷が治った所で俺自身も回復魔法を掛けて傷を治療する。
うう……触手とその中身の管の部分まで焼けちゃって……治すのが大変だ。
回復魔法や薬の存在に感謝……日本だったら治療するのに何ヶ月もかかるだろう。
「エミロヴィア、助かる」
「どういたしましてなんだな」
「ユ、ユキカズ。ごめん」
「気にするな。次行くぞ。どうやったら上手く寄生出来るか実験だ」
「え……続けるのか?」
意外と言った様子でムーイが答える。
そりゃあ続けるだろ。操作はピーキーだけど上手く使えばって可能性は捨てきれない。
何よりこう言った訓練をする事で俺も強くなれる可能性がある。
Lvだけが全てじゃ無いと俺は兵役で学んだぞ。
むしろLvを上げる前にどれだけ基礎を上げるのが大事かと学んで居るので訓練は苦では無い。
毎日の訓練はカーラルジュにやられて命をどうにか繋いで居た時以外はしてるんだからな。
「当たり前だ。ムーイ、お前もしっかりと俺に力を流しすぎない訓練するんだ」
「うん」
「そこは「おー!」だ」
「お、おー……」
「元気が無いぞ! おー! だ」
「お、おー……」
どうにもムーイらしい元気さが無いな。
俺の怪我なんて気にしてどうする。治せば良いんだよ。
「神獣様は努力家ですね」
「よくやるぜ。つーか寄生って言葉で嫌がってるけどよ。ムーイとカエルがパワーアップするって事を考えると合体の方が響きがよさそうじゃね?」
「キュー?」
なんか健人が耳当たりの良い言い換えを提案しているが、やってることは寄生なんだからその案はどうなんだろうか。
竜騎兵や魔導兵だと搭乗って感じではあるけどさ。
って感じで休憩をしている間、オレとムーイは寄生の実験を行い続けた。
「背中に乗って触手でムーイの力の源に繋げるパターンだとー……」
って、俺が触手をムーイに刺した所でモリっとエネルギーが俺の中に入り込んで来る。
「グフ……」
吐血してしまったぞ。
エネルギーありすぎだろ。触手も焼けて千切れた。
「ムーイのパワーが凄いぜ」
「オレじゃなくユキカズのお陰で増えるんだと思うぞー」
神迷コアよ。お前はムーイの力の源にどんな増幅効果を施してるんだよ。
あの手この手でやろうとするのだけどどれもパワーが強くて俺が耐えれない。
どうにか俺が耐えられて、ムーイがパワーアップ出来るラインを見極めないとな。
「ムーイは天才だから、出力の調整さえ出来りゃ問題は解決するはず」
「お、オレそんな凄くないぞ」
「何エミロヴィアみたいに遠慮してんだよ。ほら、しっかりと実験するぞ」
と、ムーイが俺へと流し込むエネルギー循環を調整させつつ焼かないように工夫をしていく。
その間に俺の体は何度も焼けるけど回復魔法を使って治した。
「集中できない程に焼かれない範囲で居れば良いか? 常時回復魔法を使い続けるとか……」
ゲイザーの魔導の極みで魔法に関しちゃ疑似習得状態だ。
回復魔法はそこまで使えなかった俺もある程度は使用可能になった。
結構強い魔物だなゲイザー。
魔法封じの魔眼もあるしデフォルトはコイツで良いだろクラスだ。
自動回復効果のある魔法、リジェネイトを前もって発動させて集中を維持すれば……出来るか?
合体時間制限があるけどムーイを一時的にパワーアップで……。
ナンバースキルって手もあるけどそれはダメだ。最後の手段でしかない。
「ユキカズ……オレちょっと疲れたから今はもう良い」
で、何度も検証をしていたらムーイが言ってきた。
「そうか? じゃあ次の休憩に入ったらまたやるぞ」
「ええ……うん。わかった……ぞ」
もじもじとしながら絞り出すようにムーイは頷いた。
やって欲しがった癖に今更どうしたって言うんだよ。
「なんだな?」
エミロヴィアも首を傾げてるぞ。
「はー……面倒くせー」
健人がそんなやりとりに何か愚痴ってた。
うるさいな。ムーイが力を合わせないといけないっぽい勘を持ってるんだから実験は大事だろ。
この手の直感に関しちゃムーイは神がかってんだぞ。
パラサイトの進化をしなきゃいけないって事もあった。
カーラルジュに殺され掛けた時だって事前にムーイはパラサイトを勧めてた。
なので結構ムーイの勘を俺は信じてるぞ。
「頑張ろうな」
「うん!」
返事は良くなったかな? 機嫌も大分良いようだし出発前の不機嫌な様子で気になったんだ。
アレだ。俺が能力頼りで怠けてるから機嫌が悪かったんだと思う。
思えばブルと一緒に居たときは余裕があったら稽古とかしてたもんなー。
休憩もしてたけど段々腕立てとか楽しくなってきてたんだ。
ああ、ブルとブルの母ちゃんと腕立てするの凄く楽しかった。
あんな感じで頑張らずにLvを上げて進化すりゃ良いだろってのが良くないとムーイの直感が告げていたんだ。
「えー……なんでしょうか。何か誤解をしてそうな気がしているのですけど」
「俺も分かるぜ。アイツはそこら辺は鈍感だ」
なんか健人達が言ってるけど誤解なんてしてない。
怠けて居るといざって時に痛い目を見るんだ。ナンバースキルがあるから楽勝だぜ! と進化出来るから楽勝だぜ! は同種の問題なんでな。
そんな感じで休憩は終わった。





