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二百二十話


「……」


 再度沈黙が俺達の間を支配する。


「あー辛気臭い! ユキカズ! そこのカエルみてえな迷宮種を気に掛けるのは分かったけどこっちの事も少しは考えろ!」

「あ、ああ。ラウの無事を確保できた訳だから一旦村へと帰ろう」

「ッキュ……ううう」


 ラウの方はと言うとリイの腕の中で落ち込んでいる様に見える。


「どうした? ラウ?」

「キュウ」


 どうにも元気がない。


「何かあったのか? ラウ?」


 ムーイも心配そうにラウをあやそうとするのだけど、ラウの元気がない。

 病気とかフレーディンの能力の後遺症って訳では無さそうだが……。


「おそらく、敵に誘拐されて利用されてしまった己の弱さを嘆いて居るんですよ」


 リイが言うとラウがプイっと不機嫌そうに顔を逸らす。

 ああ……そういうことか。


「そんなことを気にしてどうするんだ」


 ラウを連れて出るって段階でこんな事が起こる可能性だってあったんだ。

 何より安全な場所であるはずの村から連れ去られたのは気付かなかった俺達の落ち度でもある。


「今はラウが無事だっただけで十分だ」

「ッキュ」


 そう俺が宥めたのだけどラウの機嫌は悪いままのようだ。

 ムーイがラウの機嫌が悪くてオタオタとしている。

 はあ……ここでしっかりと宥めないと大変そうだ。

 かなり成長が早い訳だし、俺の言うことも殆ど理解して居る赤ん坊だから諭してみるか。


「ラウ? これからも俺達の戦いでこういうことに巻き込まれる可能性があるんだ。そんなにもイヤなら縁が遠い、リイの村に戻って平和に過ごすか?」

「ッキュウウウ!」


 それだけはイヤだ! っとラウはこっちに振り返ってやる気に満ちた声を上げる。


「よろしい。この程度の事を何時までも引き摺らない。今回はお前が悪いんじゃない。お前が連れ去られたのに気付かなかったみんなの責任でもあるんだからな」


 わかったか? 引き摺るなよ?

 と、何度も念押ししてラウに諭す。


「キュー……」


 なんとなく納得いかないという顔を少ししていたラウだったが、それでもふて腐れるのは止めてムーイへと抱っこを要求するように両手を挙げた。


「おー!」


 ムーイがその要求に応えてラウを抱き上げる。

 よしよし、仲が良いことで。


「後はこれか」


 俺達は迷宮種ザヴィンの亡骸へと視線を向ける。

 フレーディンとエミロヴィアによって倒された奴な訳だが、こっちの処理を考えねばな。


「エミロヴィア、コイツはどうする?」

「オデはいらないんだな……ユキカズが好きに使って良いんだな」


 まあ、エミロヴィアからすると使い道はないよなぁ。

 フレーディンみたいな愛着もないわけで。

 素材って事で持ち帰っても良いのか? 皮とか骨とか何かに使えそうだし。

 迷宮種って素材としてどうなんだ?


「ユキカズ、コイツに寄生するのかー?」


 いきなりムーイが爆弾発言をぶっ放してきた。

 え? いや、なんで俺が迷宮種ザヴィンに寄生して体を操るって発想が浮かんで来るんだ?


「まー今回の戦いから考えると丁度良いかもしれねえな」


 健人もなんか納得気味に頷いてるけど、なんでだよ。


「いや、なんで?」


 その考え自体がドン引きだぞ。死体操作する方になれよ。

 いや……まだ蘇生させられるかもしれないけどさ。

 ムーイが死んだ時の事を考えれば、緊急処置でどうにかさ。


「だってよ。なんかお前、そこのカエルに寄生した時にスゲー力出してただろ? 迷宮種への寄生だと力が出せるなら良いんじゃね?」

「ムーイが迷宮種の気配が凄かったって言ってたし、力が出るのはそうだが……」

「それとも何か? 意のままに操るとかできねえってのか?」

「いや……」


 エミロヴィアを操った時は殆ど俺の思い通りに操っていた。

 頭を潰す操作はできなくはないはず、迷宮種であろうとな。

 ただ……うーん? かなり邪悪すぎないか?


「少なくともマンイータージャイアントグリズリーを操るより強いんじゃねえの? 素のお前と寄生状態だったらどっちが強いか分かるか?」

「そりゃあさっきの感覚から考えて寄生した方が強いだろうけど……」


 なんか間違っているような気がしなくもない。


「お前さ、これからの事を考えたら渡りに船じゃねえか」

「ユキカズユキカズ。コイツに寄生するよりオレに寄生したらきっともっと強くなれるぞー」


 ムーイがなんかワクワクするって感じで言ってくる。

 なんでだよ。


「雪一、お前って割と過程に拘るよな」

「邪悪すぎるからだよ」

「ハッ! 今更何言ってんだよ」


 健人の手段を選ばない提案に俺自身も嘆きたくなる。

 ああ……俺ってやっぱり邪悪な進化をしてきてしまったんだなぁ。

 ムーイはカモンカモンってしてるし。


「はいはい。とりあえず実験はしてやるけどな……近くの村に一旦帰ろうな」

「ッキュー!」

「神獣様のお力が増すのですから今後の為にもやってみましょう」


 リイも拒否しないのかー……邪悪な化け物め! とか罵られるより辛い。

 肯定されるってのもな。

 ブル、お前は今の俺をどう思うんだろう? ライラ教官辺りは怒ってくれるかな?

 なんて思いつつ迷宮種ザヴィンの体の傷、フレーディンが抉っただろう穴に腕をパラサイトの触手に変えてねじ込み、寄生を行う。


「体の中に入らねえのかよ」

「入らなくても寄生はできるんだよ」


 エミロヴィアの時は強引に入り込んだんだけどな。

 上手く操作できるかな?

 と、感覚で触手がザヴィンの神経に届いたのか、カッと俺の中にある神迷コアが発動した様に感じる。

 それ以外にもあるザヴィン自身の力の源も同時に発動したのかエネルギーが強く巡回し始めた。

 えーっと意識とかは戻らないようにバイパスを最低限に……。

 ムクリと、迷宮種ザヴィンの体は起き上がる。

 肩車する感じに俺は触手を伸ばしたまま乗った。


「これで良いか?」

「弱点剥き出しじゃねか、やるきを見せろ」

「うっせー! 実験なんだから良いだろ」

「オレに寄生はー?」

「しなくて良いだろ」


 なんでそこまで寄生提案するんだよムーイは!

 お前の所為で今、このサイみたいな奴を操作する羽目になったんだろうが。

 ザヴィンも体付きは大きいからラウやリイを乗せるのは問題無いか。

 マンイータージャイアントグリズリーよりは遙かに小さいんだけどな。

 二足歩行もできるサイの亜人……よりは大きい3メートル弱の迷宮種だったんだろう。

 よくこんな奴を俺は昨日見つける事ができなかったな。

 何処かですれ違ったって事なのかね。

 グググ……っと俺の中のエネルギーが供給された所為なのか膨れていく。

 ……もっと大きくできるのか?

 俺自身の能力で何処までできるのか分からないが、出来る様な気もする。


「んで、雪一、お前はアイツをどうすんだ?」


 健人がフレーディンの墓標となっている木の前で佇むエミロヴィアへと意識を向ける。


「……今はそっとしておきたい。様子は見るからさ」


 俺を恨んで決着を付ける事になろうとも、エミロヴィアが決めたことだ。

 生かした責任は取る。


「そんじゃ行くぞー」

「おー」


 って事で俺達は一旦村へと戻ることにした。


「エミロヴィア、俺達は一度村へと戻るぞ」

「わかったんだな……オデはしばらく、兄貴のオハカに居るんだな」


 力なく、エミロヴィアはそう答え、俺達に手を振っていた。


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