二百十二話
そう思って飛んでいるとフローデットリーアイが見覚えのある煙を纏って飛んでこっちを見てきた。
なんだ? 集合してレギオンになりたいから俺も混ざれとか念話で洗脳でもしようとしてんのか?
案の定、それっぽい微弱な念が飛んで来てた。
目で睨んで拒否してやったらオズオズと怯えた様子で背を向けて逃げて行く。
ふむ……どうやら俺の方が遙かに格上だった認識だったようだ。
ただ、お前には用事が無くとも俺にはある。
目を開いて解析を行うぞ。
アレを解析したら進化が開く挙げ句、ポイントで姿が変化出来る。
フライアイ系の上位種の解析が出来るのはお得だろう。
「ギィイイイイ!?」
なんで追いかけてくるの!? って感じで声を上げてバタバタと飛んで行こうとしてる。
悪いな。じっくりと観察させてもらいたいんだよ。
と、じっと見てると振り返って威嚇の声を上げてきてる。
「まあまあ落ち着けって。ちょっと見させて貰うだけだからー」
「ギィイイイ――!」
魔眼で抵抗しようとしてたけど避けて見てたらフローデットリーアイが白目を剥いてしまった。
それからゆらぁ……っと元に戻ったかと思ったら何か熱い視線を向けてくる。
「ギィ……ギィ……」
もっと、もっと私を見て……わかった。あなたの誘いに乗るわ。
って近隣種の特性を俺が持って居るからか意志が伝わってくる。
おい……何を勘違いしている?
「ギィイイイイ」
マイダーリン! 私はあなたの物よー!
「来んなー!」
ゲシッと蹴り飛ばして我に返させようと試みる。
「ギィ! ギィイイイイ!」
あう! でも負けないわー!
蹴っ飛ばしたのに負けじとフローデットリーアイが俺に情熱的な告白染みた目線で飛びかかってくる。
「良いから落ち着け、全て忘れろ」
できる限り魔眼に力を入れる。
するとバチバチ! っと魔眼同士がぶつかり、すぐに進化寸前のフローデットリーアイの魔眼を押し切り何かしらの魔眼を抑え込んだ。
カッとフローデットリーアイの姿が変化してGLブレッシングフローアイへと進化し……そのまま、パタパタと呆然としている。
しばらく解析に見ていたら、何処かへ飛んで行ってしまった。
……カラーリングが俺に似てたけど気にしない様にしよう。
「どうにか逃げ切ったか」
なんか進化に激しい影響を与えてしまったような気がするけど、襲われるよりマシか。
異常な進化をさせて放置は危ない気もするけど……ヤバいなどうしよう。大丈夫だと思いたい。
フローデットリーアイの解析は済んだし、GLブレッシングフローアイも動かれるまでに見つめて居たら不思議とすぐに解析が終わった。
んー……Lvを上げてもっと魔眼の数を増やす意味でやっぱりゲイザーに進化した方が良いか?
さて……件の迷宮種は何処にいるのかねーっと飛んで確認。
そこそこ木々に覆われている所為で隈無く飛んで調べないと見つけられない。
見る事さえ出来れば名前で一発なんだけどなー……といろいろな名前の魔物を空中で見ながら飛ぶ。
なかなか見つからないなー……そこそこ奥地まで飛んで来たけど行きすぎたか?
と、来た道を戻り周辺を捜索する。
迷宮種って危険な魔物認識で残骸とか見つかるもんだけど……弱肉強食の残骸が多くてムーイが通った様な跡は見つからない。
要するに魔物の死体がたまーにあるだけでこれだとよくある奴。
まあ、ムーイの食性が独特って事なのか? アイツが俺と出会う前の跡は果物化した魔物の亡骸とかだったし。
カーラルジュの場合は死体が多かったっけ。
カーラルジュはどんな食性なのかを取り込んだ所で紐解くと、客観的な所だと……肉か? なんか獲物をいたぶってる姿が浮かぶ。
肉と何か別の……感情とかを主食にしてたっぽいが、あんまり紐解くと引っ張られそうなんで切り上げる。
アイツの思考は理解しがたいほどに冷血で卑怯そのものだからな。
強欲に俺を取り込んで力にしようとして進化の苗床になった訳だし。
何にしても件の迷宮種が何を食うのか分からないから追跡が難しいな。
地形把握だけしてムーイに気配で察知して貰うのが良いか。
そこで……川辺のちょっと開けた所で迷宮種って名前が視界に浮かぶので確認。
「あー……」
名前を確認すると、迷宮種エミロヴィアと出ている。
空から見てると茂みにのそのそと入って……なんか花を周囲に展開して隠れようとしてるっぽい。
パタパターっと舞い降りる。
「何やってんだ?」
「うわ! 驚いたんだな!?」
のそのそと……エミロヴィアに声を掛けるとビクッと跳ねる形で振り返った。
んー……所々生傷があるぞ。
「あ、お前なんだな。逃げ切ったのに何なんだな」
「いや……飛んでたら見つけたから声を掛けただけだが? 件の兄貴は?」
「兄貴は今別行動してるんだな。オデは今、隠れながら傷の手当てをしようとしてる所なんだな」
「へー」
フレーディンはここに居ないのね。
で、エミロヴィアなんだが無警戒にペラペラと答えている。
「傷の手当てね」
「そうなんだな。こうやって草を生やして複数の草をこうして混ぜて傷に当てるとあっという間に治るんだな」
エミロヴィアは生やした薬草を不思議な力で折り重ねて薬草が勝手に絞り上げて液体を作り出し、傷口へとしずくを落す。
すると傷が消えて行く。
まあ……薬草の調合だな。兵役時に習ったので知ってる。
植物操作がエミロヴィアの能力なんだろうけどこう言った応用も可能か。
しかし……この素直さは一種の美徳なのではないかと思うぞ。
「この前は散々だったんだな。兄貴にも怒られちゃったんだな」
「そりゃ大変な事で」
俺の動きを警戒して居るエミロヴィアはチラチラと様子を見ながら愚痴った。
そりゃあ打ち合わせ通りに行動できなかったエミロヴィアへと苛立ちから叱ったって所か。
傷は別件だろうか。
「ムーイを狙うのは辞めたのか? 件の兄貴は」
「そうだと思うんだな」
素直に引き下がってくれたんならそれでも良いとは思うが……どうなんだろうか?
「それでお前は何のようなんだな! オデや兄貴を倒すってんなら相手になるんだな」
「今の所はそこまでは、ただ近くの村の連中がもっと奥地の方で迷宮種が暴れてるから困ってるって話で、色々と退治するために俺が偵察してんの。お前等も迷宮種なんだからここに居たら討伐されんぞ」
だからサッサとここから去れと注意しておこう。
フレーディンはともかくエミロヴィアの素直さに免じてさ。
「わかったんだな。兄貴にそう伝えておくんだな」
これで素直に聞いてくれりゃ楽なんだがな。
なんて言うか俺の勝手な想像だけどアニメの憎めない悪役ポジションって感じだよなコイツ。
「なんだな?」
「この辺りってそこそこ強い魔物が居る訳だが、お前って戦えるのか?」
こう、強さ的にエミロヴィアの強さでこの辺りの魔物に勝てるのだろうか?
迷宮種って災害指定される化け物な訳だけど弱い迷宮種はどんな風に対処してるのだろうか?
「そこは植物さんに任せて締め上げたりして倒すんだな。それでも無理ならできる限り植物さんに任せて逃げるんだな」
能力で対処するって当たり前の返事か……まあ当然か。
俺だって魔眼で魔物を対処するし。
エミロヴィアは怪力とか持ってる訳でもないみたいだしな。
これで災害指定されるほどの化け物なのかねー……強くなっていった結果、化け物になるのかな?
「この辺りに凄く美味しそうな虫さんの気配がするんだな。お前知らないんだな?」
「虫ねー……襲ってくる魔物以外でも探すとしたらどんなもんだろうな」
「キラキラと光ってたんだな。おびき出そうと思うんだな」
「プリズムカブトってのなら見たぞ」
さっき木に止まった所で見かけた。
「きっとそれなんだな。何処で見たんだな?」
「あっちの山」
「ちょっと遠いんだな……植物さんの匂いで呼べたら良いんだな」
ジュルッとエミロヴィアが涎を拭って山の方を見ている。
「取ってくるか?」
「良いんだな?」
エミロヴィアの目がキラキラしてる。
いやーなんて言うかお菓子を作っている所を見てるムーイみたいで非常に心地良い。





