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百九十五話


「やー歌えや踊れやで楽しい祭りだぜー!」

「なんか楽しいなユキカズ!」

「ああ……そ、そうだな。う……」


 定期的に体から魔力があふれ出て熱線を暴発しそうになるのを俺はターミナルポイントに力を流し込んで村の結界強化ブーストに変換させる。

 これ……乱用してたらターミナルポイントが壊れるとかありそうで恐いぞ。

 どうなってんだ本当……力が足りないと嘆いていたけど今は漲り過ぎて困る。なんとなく神迷コアって所が怪しい。

 項目をチェックする事が出来て詳細の断片が載っているのだ。



 神迷コア

 カーラルジュ×宮の力の源×し×××が××の力で変質××した物。

 性質変化し、カーラルジュのテ××ソ×ルイ×トグ×ウは失われたが所持者の力と溶け合い新たな力を生み出す。

 成長条件は????



 いや……伏せ字多過ぎだろ。絶対コレを設定した奴が遊んでるのが分かる。ともかく、どうやらこの神迷コアって代物が生み出すエネルギーが多すぎて俺から放出されている状態なんだ。

 出力が異様に増えたのに体が追いついて居ないという状況だろう。

 スタミナ回復力向上を所持した時のような感覚が嫌だなぁ。

 睡眠時間が短くなっちゃったんだし……今も短いんだけどな。

 一週間寝たのは蓄積した疲れからだけど。


「キュー」

「ラウの定位置がユキカズの頭になっちゃってるな」


 ムーイが俺の頭に乗るラウに向かって微笑みながら言う。


「色々と世話を村の人たちに任せてるのになんで俺に引っ付きっぱなしな訳?」

「しょうがねえだろ。お前かムーイと一緒じゃねえと泣きわめくんだからよ。初日なんてずーっと泣いてるからムーイがあやしに行ったんだぞ」


 懐かれたと思うべきなんだろうとは思うけど……。


「えへへ、ラウ。まだお菓子食べる?」


 ムーイはムーイでラウを相当甘やかしている。

 しかし……その、なんだ? 兵士をしていた経験というか習性とも言いがたいのだけどパーティーをして居る状況を見てると条件反射で厨房に立ってお菓子作りをしなきゃいけない感覚に襲われる。

 ……イベント時に菓子作りが出来るからって呼び出されて作らされた所為か。

 悲しきかな兵役の影響。

 ……なんか間違ってる気がする。これは兵士じゃなくて菓子職人の感覚だろ。


「そういえば……今までムーイは頑張ったからお菓子を作ってやらないとな」

「え? ユキカズ作ってくれるの!?」

「頑張ったご褒美を何時もやってただろ? 力の源を取り戻したんだから祝うべきだろ」


 何より村を救われた事に対する感謝の祝いってのがむずがゆい。俺じゃ無くて頑張ったのはムーイと健人だろ。


「お? 何かやるのか? じゃあ俺は用事があるから気にしなくて良いぜ」


 なんかここで健人がノリの悪い事を言っている。

 用事って何があるんだ?


「用事って?」


 ムーイが小首を傾げて尋ねる。


「そりゃおめえ分かるだろ? へへへ、良い女とたーのしい時間に決まってんだろ?」


 ……最もくだらなそうなネタをぶち込んで来やがったぞ。


「お前等にも教えてやるぜ。この村のイイ女」


 と、健人が手招きして連れてきたのは……カーラルジュがラウを狙って襲いかかった時に抱きかかえていたオウルエンスの人だった。

 回復魔法を施されたのだろうけれど、爪痕が残っている。


「神獣の申し子様、この節はどうもありがとうございました」

「いやー我が身を盾にして赤ん坊を守ろうとするその心意気は良いと思わねえか? カーラルジュを仕留めた後、ラウがお前の所に尽きっきりで手が掛からないので担当を外されても気に掛けた挙げ句、村の周辺警備も買って出るイイ女だぜ」


 って健人がやや乱暴に肩を寄せると若干困った様な様子を見せつつオウルエンスの……女性は恥ずかしそうにして居る。

 まんざらでも無いって事であろうか?


「実は隣村の異変を察知して行こうとしてたのもコイツでな? 俺が代わりに行くって事でお前等と出会った訳よ」

「この辺りの案内をしてくれたぞユキカズ」

「そ、そうなのか」

「という訳でたーのしい時間を楽しもうぜー」

「いえ……お言葉は嬉しいですけど……まだ仕事がありますので、失礼いたしますね」

「おう。つれない対応。でも俺はここじゃ引かねえぞーつーわけで俺はしつこくアタックするんでお前等勝手に楽しんでろよーじゃあなー」


 って形で……健人は気に入ったオウルエンスの後を追いかけて行ってしまった。

 うん。健人って割と本気でアホな類いだ。

 この村を守ろうと動いていたのも女と楽しい事……をしたい為だったんだろうと容易く想像出来るぞ。

 なんか何処かで聞いた様な気がする愚かさだ。


 口ぶりから……行く先々であんな事をしているのではないだろうな?

 確かに俺の良い人センサーに引っかかりそうな感じだけどさ。

 健人じゃなくてあの女性がだけどな。


「アイツはともかく菓子作りでもするか」

「わーい! ユキカズのお菓子ー!」

「ムーイ、もう魔力とかは平気なんだろ?」

「うん。手伝うぞー!」


 それは何より……俺は村の人に手を上げてお願いする。


「ちょっと厨房をお借りして良いですか?」

「神獣の申し子様が厨房に如何様で?」

「祝いの席なんで料理を振る舞いたくて、お願いできないですか?」

「滅相も無い! 神獣様へと貢ぎ物を差し出す事はあっても施しを受けるなど恐れ多い事でございます」


 わー……なんか、神獣ってのが信仰の対象過ぎて面倒臭い感じだな。


「そこをどうか頼むよ」


 元の異世界では一介の兵士だったから出来た事だったのか?


「し、神獣様の申し子様がどうしてもと仰るのでしたら……どうにか話をしてきます」


 って村の代表達が揃って集まり色々と話し合いをし始める。

 結果だけで言えば厨房を貸してくれる事になった。

 現在の祭りで出される料理をしている厨房を、全て中断して俺に出そうとしたのでそんな気を遣わないようにと一般家庭の厨房を貸して貰ったぞ。

 で、材料は村中にある品を集めて貰えた。

 ムーイが居るのでそんな大量に要らないとお願いしてだけどな。

 そんな訳で村で分けて貰った食材を確認。


「おっしゃ! 腐ってないミルク発見!」


 瓶に入れられたミルクを匂いで判断して確保!


「あ、これがミルクだったんだな。ユキカズのくれた奴にそっくりだと思ったぞ」

「俺が寝てる間にムーイは既に試飲済みか」

「うん。ユキカズが探してたから覚えたぞ」


 それは何より、どうやらこのミルクは……ゴートミルク、山羊の乳らしい。

 バターもこれで作りやすくなるな。

 ボッソボソのパンじゃなくふっくらとパンが焼けるので前よりもよりそれっぽく作れるはず。


「後は樹液もあるのか……」


 結構オウルエンス達の文化能力も高いようだ。

 甘い物が出来ればほしいと頼んだので色々と取りそろえている。

 樹液はやや糖度が低めだけどもっと煮詰めれば良いだけだ。

 メープルじゃないけど甘みはそこそこで雑味もあるけど……ここはアエローを砂糖に変えるときの特殊技術の応用で純度も上げられる。


 名前はラカバシロップか……問題は無さそう。

 それとハチミツもある。甘い物はそこそこ確保出来そうだ。

 ぶどうっぽい果物もあるし、人里のありがたさが染みる。

 いろんな物が作れるのは素晴らしいな。


 って事で用意された食材の中の端っこ、厨房を掃除するために用意されたヘチマっぽい植物が目に行く。

 乾燥させればスポンジ状になる感じで干されている代物で、まだ干して日が浅い様子だ。

 ……なんだろう。このヘチマっぽい植物。

 クーオラシノムカオって植物みたいなのが目利きで分かる。


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