百八十二話
「なんかキラキラして綺麗だな」
「ああ……もうここに人は居ないけど、魔物の侵入はしばらく押さえ込める。しばらく安全地帯になったな」
エネルギー源は魔石が使われて居るのは判断出来る。
上手いこと潜り込めばエネルギーを奪うことも出来そうだけど村の結界や偽装が解けかねないので避けるべきだ。
「ここをどうするかは後でオウルエンスの連中が決めるだろうな。廃棄するにしてもここにある物資を持ち帰るとかもあり得る」
全滅した隣村って扱いだろう。
俺達が元々居た異世界だとそう言った場所の話は聞かない訳じゃない。
場合によっては脅威が無いなら移住する人も出てくる。先人の墓さえ荒らされなければここを新しい移住者に使って貰いたいと思うのは俺の傲慢だろうか。
「ま、とにかくこれで夜襲に備えなくても良いみたいだな。助かるぜ。お前さん器用だな」
「出来る事をしただけだ。とにかく家に戻ろう」
と、俺達は安全なのを確信して家に戻る。
「話が色々と飛んだな。最後の神獣がお前を選んで魔物になったか……」
「俺を選んだ神獣はな。で、健人。お前のナンバースキルは何番なんだ?」
どうやら作られた神獣の順番で選んだ神獣が分かるみたいだけど、健人は一体何番のナンバースキル持ちだったんだ?
飛野が五番だったのは覚えて居る。藤平は何番だったか。
「ん? 俺か? ナンバー1。この世界で聞いた話だと始まりの神獣、神を騙る愚かなる侵略者を喰らう狼……<ワン・アジン>だそうだ」
「そんな名前があるんだな」
「アイツらが語る名前だけどな。実際はどうだか……声が聞こえた頃に聞いた話じゃ親が決めた名じゃないとか言ってたがな」
健人も神獣の声が聞こえたのか。
ともかく健人を選んだ神獣は最初の神獣って事のようだ。
なんとなく銀色の狼みたいな魔物なんだろうってのは……判断出来る。
「ま、何の因果か始まりの神獣に選ばれた俺と最後の神獣に選ばれた雪一ってな」
因果とか言われても全く嬉しく思えない出会いだな。
「法則で考えると……俺を選んだ神獣も名前があるんだよな」
「なんて名前だったか覚えてねえ。後で調べてやるよ」
まあ、異世界に来ていきなり死なないようにしてくれた訳らしいけど、俺の場合は浸食早すぎるんだから文句くらいは思っても良いよな?
こんなサバイバルな状況じゃなく、ブルやフィリンの側で魔物化したならまだマシだったろうに。
いや……なんか俺を選んだ神獣じゃなくその後ろに居る奴が黒幕っぽいから別か。
「ユキカズ……」
ムーイはお菓子を食べて若干眠そうにして居る。ラウも満腹みたいだし、早めに寝かせてあげるのが良いか。
「そんじゃムーイは休んでくれて良いぞ。健人はどうする?」
「もちろん俺も寝るに決まってんだろ。ラウが夜泣きしてたたき起こされそうだけどな」
「その辺りは安心してくれ、俺があやしておく。ムーイも無理して起きなくて良いからな?」
「わかった……なあユキカズ……明日からラウと同じ、この村に居た人たちと同族の所に行くんだよな?」
「ああ」
「ならさ……ユキカズ、ラウを見て分析出来ないか?」
ムーイの問いに健人が小首を傾げる。
「何の目的でだ?」
「えっとな、ユキカズの話だと人間って見た目が違うと迫害したりするんだろ? 幾らユキカズとケントが嫌な顔されないって言ってもオレはカーラルジュと同じ迷宮種だから……できる限り見た目を近づけて怖がられない様にしたい」
おー……ムーイなりに気を使った第一遭遇をしたいって事な訳ね。
無駄な争いは避ける意味で姿を変えるのは良いか。
「そんな事出来るのか?」
「ああ……分析を終えると体のパーツを似せる事が俺は出来るからムーイの肌をオウルエンスみたいに変えれるようになる」
俺の場合はあくまで俺自身に分析を終えた魔物のパーツを付与する形だけどムーイに施すとより似た偽装になる。
「ただムーイの体格だと相当巨漢のオウルエンスになると思うけどな」
この村で死んでいた者たちの体格から考えるとそうなる。
「要らぬ騒ぎを警戒してるようだけどよ。この世界は地方じゃ別の人種も居るからそこまで騒がれねえと思うぞ?」
「えっとな……後、ラウが安心出来る様に真似たい」
恥ずかしそうにムーイが呟くと健人は納得したように頷く。
「あー……幾ら世話をしてくれると言っても赤ん坊ってのは敏感だからな。まだ目もそこまで良くはねえけどおかしいってのは分かるだろうぜ。元気になったら尚の事だ」
だからこそ似せて安心させたいって事なんだな。
ただなー……。
「俺の分析って生き物の場合、生きていないと進まないからなー……ラウ以外も見られると分析の進みも早いだろうけど……わかった。できる限り頑張るよ」
「お願いだぞユキカズ」
「ああ」
「キュ……ウウウウ……」
ラウは若干ぐずっているのでムーイがあやして機嫌を取る。
「よし……ムーイ、ラウにお腹を見せるんだ」
「ん? わかった」
ムーイがラウを抱き上げてお腹の位置へと降ろす。
「いないいなーい……バァ!」
赤ん坊にはお約束だよな。
目を閉じてカッと開く。
「キュ――!? ウウウウウウウ!」
なんか驚かれて泣かれてしまった。
く……魔眼で強引に寝るように催眠とか考えるけど赤ん坊にする事じゃ無いのでやらないぞ。
「ユ、ユキカズ!?」
「お前なー……自分が化け物だって自覚を持ちやがれ!」
化け物……地味に傷つくなー。
くっそ……しょうがない。
「おーごめんごめん。じゃあこれだー」
泣くラウと目線を合わせてから視界をぐるぐると渦巻き模様になるかの如く目の視線を動かす。
ぐるぐるーっと動く俺の目玉の動きをラウは目で追い。
「キュッキュ!」
泣き止んで機嫌良く笑い始める。
アレだよな……赤ん坊のベッドの上でぐるぐる回る奴。
「生きてるベッドメリーみたいな事してるなお前。というか見てるだけで目が回りそうだ」
アレってそんな名前なのか。
「魔物の種類的に魔眼とか使えるだろうから催眠でもするかと思ったが……」
その手は考えたが却下しただけだ。
もしも隠れないと行けなくてラウに泣かれたら困る時には使うかも知れないけど今は不要だ。
「つーかこんなので喜ぶってコイツ、大物になるかも知れないぞ」
「唯一の生き残りなんだ。劇的な出生って事で大物になるんだったらなっても良いだろ」
「うん?」
ムーイはピンと来ないと言った様子でラウをあやしていた。
「さて、ラウを見てオウルエンスの分析をしておかないとな」
サンプルがラウだけだとなんとなく分析が終わるのに時間が掛かりそうだが、気にしない。
「ついでに健人、お前って……人の姿にはもう戻れないよな?」
異世界の戦士は延命出来ても人には戻れないって事だろうか?
出来れば人間を分析出来れば俺も元に戻れる可能性があるのでダメ元で聞こう。
「いいや? 戻れるぜ? 今はお前等に警戒していつでも戦えるように変身してるだけで」
「くっそ。そうなら先に言え。人の姿見せろ。俺だって人間に戻りたいんだよ。今は出来なくてもな」
少なくともパラサイトとしてムーイに寄生して居るから人化は無理だとしても俺は人間に戻りたいに決まってる。
「まあ、ターミナルの修理が出来るみたいだし、良いか」
健人は妥協したとばかりに姿を変えて見せた。
パッと見だと二十代後半から三十代前半くらいの体が引き締まった男だ。
ちょっとチャランポランな印象だけど無表情で居れば出来る男に見えなくも無い。
そんな印象の顔つきをして居る。
「これで良いか?」
「変身って魔力消費しそうだけどどうなんだ?」
「お前は?」
俺は無いなー……って同じ感覚なのかも知れない。
「無い」
「こっちも似たようなもんだぜ。ただ、気が引き締まりすぎてゆっくりしたい時はこっちの姿で居るな」
さてねとばかりに軽く両手を挙げる健人。
「そんで、人の姿をしてる俺の姿を見てお前は分析ってのができるんだったか?」





