百六十八話
「……」
ニュッと俺は仰向けで寝息を立てるムーイの腹部から体を伸ばして組んだかまどで菓子作りをしながら……パラサイトの固有能力、宿主改造の項目を出した。
もちろん、ムーイの体を弄る事は本人の承認済みだ。
体力 生命力改造??? 装甲強化4
力 腕力改造3 脚力改造3
頭脳 洗脳0
繁殖力 ???
特殊能力 エネルギー効率化3 出力効率化2 負荷軽減3
文字通り宿主を弄る能力で簡略化した項目って感じだ。
強化するのに俺のEVO・Pを使用する。
全部使い込んでムーイの体を強化した。
体力とかは単純に生命力に直結する要素で弄るとタフになったりするようなのだけどムーイの体が特殊過ぎて弄れないのに弄った登録が載っている。
装甲ってのは単純に肌の強度を上げた形だ。
上げることで戦闘時に甲殻化した際の強度が上がっているのが分かる。
力とかの項目も文字通り腕力を上げたり出来る……のだけど余計にエネルギー消費や俺自身に掛かる負荷が増す。他に俺が解析させて反映させた変化した部位をより強靱にする効果もあるようだ。
頭脳は知力を上げたり出来るかと思ったのだけど、どうやら知力低下させて操りやすいようにする改造っぽいので全く弄ってない。
繁殖力に関しては謎。
ムーイの体って不思議で満ちていて参考にならない。
パラサイトとして解析が出来てない形だ。
で、特殊能力ってのは上記に当てはまらないすべてって形だ。
他に体の造形とかも自由に弄ったり出来るみたいではある。あり得ない所に口を設置したり、頭の形を変化させて目立つ色に変えたりなんかが可能なのが分かるんだけど……ムーイの体って結構自由に形を変えれるからここで弄る必要は全くない。
というか宿主の強度がここでは強くて不可って感じだった。
パラサイトとしてそこは弄れないって事だな。
で、特殊能力の項目で燃費の悪いムーイの体をできる限り効率的に、負荷が掛からずムーイを生かせるようにポイントを割り振った。
メガパラサイトの時だとムーイの体が俺よりも格上過ぎて弄れる上限があった。
けれど今はもう少し上げる事が出来そうだ。
そんな訳で効率化と出力を上げるための改造を行う。
体力 生命力改造??? 装甲強化4
力 腕力改造3 脚力改造3
頭脳 洗脳0
繁殖力 ???
特殊能力 エネルギー効率化6 出力効率化4 負荷軽減5
とりあえずより効率的にムーイの体を動かせるように弄った。
これで……うん。エネルギー関連の燃費は非常に良くなった様に感じる。
俺も進化した影響で色々と出力上昇に合わせた消費をするようになってしまったからな。
これからの戦いを考えると、ここから更にムーイが戦いやすいように力の向上を図るのが好ましいだろう。
全盛期……いや、ムーイの力の源を奪ったカーラルジュを相手にする事を考えると全盛期以上の力が出せる事が望ましい。
……さすがに代替えで命を繋いでいる状況ではそれは厳しいか……変則的に俺の力を合わせて単純な力だけではなく作戦で奴を仕留めなければいけない。
「さてと……」
明日、ムーイに食べて貰うお菓子作りをしないとな。
やっぱり無難にダンジョンサボテンで作ったケーキが良いか。
酸味が非常に強いからシロップ漬けにして甘くして置くのが良いだろう。
と、下準備をしてと……。
ふと、俺は自分の伸びた影を見る。
……思えば遠くに来たものだ。高校生だったのが異世界に来て兵士となって同級生達を惨たらしい目に遭わせた奴を命を賭して倒したら魔物として生まれ変わるなんてな。
とてもじゃないがこんな姿をして居る俺が……道徳の面で正しいなんて誰も思ってはくれないだろう。
それでも俺はやり遂げたい。
あのカーラルジュからムーイの大事な物を取り返したい。
その過程で死ぬ可能性だってゼロじゃ無い。決して安全では無い明日も分からないこのサバイバルの状況下を乗り越えて行かないと。
……ムーイを助けた後は俺はどんな進化をしたら良いだろうなぁ。
やっぱり人間に近い姿になりたいけど、今のところそれっぽい進化は見つけられずに居る。
……まあ、クヨクヨしてもしょうが無いか。
外見だけが全てじゃ無いのを俺はブルから教えられた。
オークという人々から忌避される種族だというのに善行をやめないあの親友のように例え人の姿に戻れなくたって生きていけば良いんだ。
と、俺は明日の下準備をしていたのだった。
翌朝。
「んむ……」
「ああ、起きたか?」
ムーイが起きたので声を掛けつつ、伸ばしていた体をムーイの中に戻して収まる。
「おはようユキカズ」
「おう。おはよう朝飯を作っておいたから食べて良いからな」
「うん! あー! 今日はケーキだ!」
完成して冷やしておいたケーキをムーイは早速切り分けて食べ始める。
「わー酸味と甘みが合わさって凄く美味しい! ユキカズは何でもお菓子に出来る天才なんだな!」
「天才って呼ぶほどじゃない。ムーイの戦闘センスの方が上だな」
「えー」
ムシャムシャとムーイは今日も美味しそうにケーキを完食していく。
朝からホールケーキを何個も食べるって人間基準だったら凄くハードな献立だよな。
それがムーイの食事なんだからなんとも思わないけど。
とりあえず今日のエネルギー関連はコレで十分補充出来たな。
「うーん……言っちゃ悪いとは思うのだけど、似たようなお菓子ばかり最近作ってしまってムーイに申し訳ない気持ちになってしまうな」
「んむ? そうなのかー? ユキカズ何時も違うお菓子作ってくれて凄いなーと思ってるぞ」
「俺の菓子なんとなくで作ってるだけで本業の連中からしたらまだまだだって話さ。せめてチョコレートとかあればもっとムーイを楽しませられるんだけどな」
「ユキカズ前にも言ってた奴だなーオレもいつか食べたいぞ。あのヤシの実でここまでいろんなお菓子作ってくれたユキカズだからきっと凄いのを作ってくれると信じてるぞ」
チョコレートはなー……こんな状況下じゃ見つけられるもんじゃないんだよな。
ムーイのミダスの手って構造をしっかりと知っていないと物を変化させられないし。
「どんなお菓子なんだー?」
「具体的にはこんな感じのお菓子だな」
魔眼で壁に板チョコレートを見せる。
「焦げ茶色の粘土ー」
……見せた俺が悪かったのかも知れない。それを刻んで湯煎して液体にしてからガトーショコラにして見せる。
「炭?」
……うん。チョコレートの甘さを知らないムーイじゃパッとどんな味なのかを分かって貰えない。
「俺が食べた感覚をムーイに教える事が出来たように記憶のチョコレートの味とかをムーイに教えられるようになれば良いんだけどな」
「凄く良いな! ユキカズの知ってるお菓子の味をオレも知りたい! そしたら手に持った物を変えれてユキカズにもっと凄いお菓子作って貰える!」
「ふむ……」
ムーイの体を改造する際の洗脳に好物の幻覚を見せるって出来そうだけど、これってムーイの知っている味じゃないと出せないんだよな。
もっと変則的に俺の記憶の中の味を再現か……。
「ちょっと試して見るか」
「うん!」
俺はムーイに俺が感じる味を伝える接続を行いながら記憶の中でのチョコレートの味を映像を見せながら流してみる。
地味に難しいな……これ、上手く伝わっているのか?
「んー……甘い? ような?」
ムーイがモグモグと舌を動かして居るけど、小首を傾げている。
「うー……ん?」
「悪いな。がんばっているんだけど上手く伝えられないみたいだ」
映像よりも難易度が高いな。





