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百六十四話

 カーラルジュを追いかけて一週間が経過した。


「ウガウウウウ!」


 現在、俺達が戦っているのはブラッドウォームという赤い巨大ミミズ。地面を潜って俺達目掛けて飛びかかって来る。


「来い!」


 ムーイが神経を研ぎ澄まし、両手を広げて地面を突き破って突撃し、噛みつかんとしてくるブラッドウォームの口を掴んだ。


「ぐぬぬぬぬ……たあああ!」

「ウガウウウ!?」


 意識的に掴んだ手をムーイはジャイアントクラブのはさみに変え、口を思い切り掴んで切り裂く。


「ユキカズ! 行ける?」


 そのまま悶絶するブラッドウォームの口を掴んだまま言い放つ。


「ああ……待たせたな」


 俺はムーイの腹で目を強く閉じて居て力を溜めていた。

 パラサイトの必殺って事なのか分からないけど力を溜めて熱線を放つとかなりの威力向上が見込める。

 もしかしたらムーイの力の一部が俺を通じて放てるようになっただけなのかのかも知れない。

「食らえ!」

 カッとムーイの腹……俺の瞳が見開かれブラッドウォームの口の中に極太の熱線をぶちかましてやる。


「ウガ――」


 赤い閃光がブラッドウォームの体内を通過して行き、ジュッと肉を焼き切る音を共に貫通する。

 やがて死後痙攣とばかりにブラッドウォームは力なく痙攣して動かなくなった。

 経験値が俺に入ってくるのを感じる。


「勝ったー!」


 ブラッドウォームから手を離したムーイが勝利とばかりに片腕を上げて宣言する。


「そうだな」

「んじゃ早速魔石を見つけないとなーユキカズ分かる?」

「コイツの魔石は頭だな。その辺りに魔力が集中していた」

「そうなのか?」


 と、ムーイは仕留めたブラッドウォームの頭部を切り裂くと魔石が出てくる。


「はい。ユキカズ」


 魔石に付いた血を拭ったムーイが俺の口元に魔石を差し出す。


「ありがとうな、ムーイ」


 ありがたく受け取り、魔石をかみ砕く。

 もうあれから一週間以上過ぎているのか……魔石を食べる日々にもなんだか馴れてきてしまった。


「大丈夫だぞーそれでユキカズ、コイツの解析ってのはやったのか?」

「戦闘の合間にな」


 ムーイの体に寄生した影響なのか、解析の完了まで大幅に早く済むようになって居る。

 単純にムーイの体の本来の性能を引き出せては居ないのだけど、目の部分だけは相性の関係で乗っかる形で上がってしまっているのかも知れない。

 ただ、ターミナルポイントに関して最寄りの所から見つからずに既に三日ほど経過してしまっていて、詳しい所はよく分からない。

 ここ一週間、カーラルジュを追いかけて進んでいる俺達の旅の成果はというと……道中で遭遇した魔物達に関しては、それなりの数処理したので数えるのも面倒になってきた。

 デスシックルという鎌を持つリスみたいな魔物やデッドリーワプスという大型のハチ……ブレイザーホーンという攻撃的なサイみたいな魔物とか数限りない魔物を見かけた。

 やはりというか何というか……俺達がいた拠点周辺ってのはごく一部の限られた地域だったって事のようで、僅か一週間の間に見知らぬ魔物を沢山見る羽目になった。

 もちろん……時に隠れたりして勝てる相手と勝てない相手の区別をつけて道中を進んでいる。

 幾らムーイの体が強力だとしても俺が動力として動かして居るので性能が大幅に低下してしまっている。

 旅を始めて三日ほどでムーイは体を動かすのに馴れたらしいのだけど、それでもな……。


「そっかーよかったな」

「問題は役に立つか分からない魔物だって事だけどな」


 ブラッドウォームってミミズの魔物だろ? コイツを解析してパーツ変化って何になるんだ?

 って感じだ。もちろん土の中を潜るとかになら使えるかも知れないけどさ……どうも小さな足みたいな器官で土の中を掘って進んで行く形状をしているみたいだ。

 臓器類は頭部に集中しているみたいなんだけど……っと解析を終えた所為か分かるようになってきた。


「まあもしかしたら今後の進化条件にあるかも知れないから集めて損は無いか」

「そうだな!」

「んじゃ、さっさと移動するぞ」

「おー」


 って感じで俺達は迷宮種・カーラルジュを追いかける旅を続けている。

 その道中で時々宝箱とかを見つけたりするのだけど、現状だと持てる数に限りがあるので……劇的な変化は無い。

 何より、ムーイの体が俺の解析した魔物の再現に対して順応してくれるお陰で武器もそこまで困っていないのが問題か。


「おーし、行くぞユキカズー」


 とはいえ、武器が見つかって居ないわけじゃない。

 その中でムーイが今使っている武器はというと……竜騎兵用のショートソード+7だ。切れ味の劣化を防ぐ加工が施されていて火属性を宿す一品だ。

 大型の宝箱の中に当然のように入っていて、見た目は……人間が担ぐにはやや厳しい2メートル半の大剣。

 単純な武器としての攻撃力は悪くないが重たいのが最大の短所の武器……まあ、本来は竜騎兵が扱う武器なんだから人間に近い身長のムーイではサイズ差ってのがある。

 これをムーイは担いで戦えそうな相手に振るう事にしたようだ。

 ちょっと厳しいけれど俺の出力が上がったお陰で多少は使うことが出来る。物理的な切り札って形で魔物を切り裂く時などに使っている。

 これに有事の際は全身を甲殻に変化させて魔物と戦う訳で……一見すると屈強な戦士に見えるかも知れない。

 で、切り札として俺がしばらく目を瞑ってチャージした熱線や魔眼で仕留める感じで戦っている。

 そんな感じで……俺達の旅は続いていた。

 ぐー……っとムーイの胃袋が空腹を訴え始める。


「まだご飯は後だなユキカズ」


 ムーイはケロッとした様子で俺に声を掛けてきた。


「そうだな……何か菓子でも作るか……ムーイの今の魔力残量から考えて……」

「まだ大丈夫だぞユキカズ、後でで良い」


 食いしん坊の癖にムーイは最近、妙に遠慮をするようになってしまった。

 もちろん菓子を作って食べてくれと言えば喜んで食べるんだけどな。


「それよりユキカズ、もっと魔物を倒して魔石を得る方が良いよな?」

「まあ……魔石を持ってて倒せる魔物ならな」


 なんだかんだ活動に必要なエネルギーは俺が生産してムーイの体を潤滑に動かしている訳で、消耗が少ない範囲で稼げるなら魔石があると助かる。

 こう……俺のエネルギーが尽きるのは同時にムーイの生命を維持できない事に繋がる。


「ユキカズ……解析済みの魔物ならオレ頑張るから休んでて良いからなー」

「ああ……じゃあちょっと集中させて貰うかな」


 そんな訳でムーイに移動を任せて俺は瞳を閉じて、ムーイのエネルギー循環に意識を向ける。

 外からの情報はムーイの感覚を通して入る範囲に狭める事で効率化を図っている段階だ。

 もちろんこの状態でムーイが魔物を倒せばしっかりと俺の経験値として入る。

 どうもここ一週間で分かった事なのだが……ムーイの体には経験値は染みこむけど成長に反映されない。その為寄生する俺の体にそのまま流れ込むようなのだ。

 ムーイの体は別の要素で成長するのが寄生している内に分かった形だな。


「……よし行くぞー」


 ムーイがお腹を軽く撫でてから大剣と収納しきれなかった荷物を入れた袋を持って歩みを進める。

 現在、俺達がいるのは密林みたいな所から荒野みたいな所へと景色が変わって居た。

 最後に確認した地名は……神の庭園 荒野地域 外郭。だったな。

 殺風景で木が疎らな場所で……砂漠って程じゃ無いけど荒れた土地って印象だ。

 ここで時々魔物が闊歩していて、高低差もあるから岩の影とかに魔物が潜んでいたりする。


 カーラルジュを追跡する旅は続いている。


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