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百五十七話


「まずはダンジョンパームミルクのクリームを用意して」


 ムーイに用意させたクリームを鍋に掛けながらアエローで作った蜜を入れて温める。

 沸騰しないように調整しつつ蜜とクリームが良い感じに溶けて混ざった所でクリムイエローワームの卵を濾した液を投入して再度加熱、ダンジョンパームミルクだから生クリームとは感覚が違うような気がするので勘で調整する。

 ……勘で調整できる俺自身の技能が恐ろしい。

 なんで俺、こんな息するみたいにアイスが作れるようになってしまたんだろうか。

 何となくこんな感じだよなと思っているだけでレシピが浮かんでくる……異世界の技能は本気で恐ろしい。

 ターミナルポイントから何かしら俺の意識に書き込みでもされているんだろう。

 投擲修練もそんな感じだったし間違いない。


「で、別の所で泡立てていたクリームを混ぜて……風味付けにアエローの汁でも数滴入れるか」


 リトルオクトクラーケンに変化して複数の手で一度に調理を行っているぞ。

 手が増えるってこういう時に便利だ。

 バニラとは全然違うけど変な匂いが微かに混じっているのでアエローの匂いで誤魔化す。

 やや弱めなミントっぽい風味になるけど気にしない。


「後は混ぜ合わせたものを冷凍光線を照射し続けて適度に冷やし続ける」

「おー……」


 ムーイが俺の作業を楽し気に見つめ続けている。涎がめちゃくちゃ口から垂れてるぞー。

 なんて感じでアイスを作りながら併用してクリムイエローワームの卵とダンジョンパームミルクのクリームと蜜を混ぜ合わせて鍋に入れたままかまどに適温で加熱。

 ファイアマスタリーのおかげで火がどれくらい通っているのか一目でわかる。

 そうして併用作業でアイスとプリンがそれぞれ出来上がったのでプリンを冷やして蜜を熱して作ったカラメルを掛け、切り分けて少しだけムーイに試食させる。


「これがアイスとプリンな?」

「アイスとプリン!」


 ドスドスとテーブルに手を載せてムーイが興奮気味に軽くジャンプして出されたアイスとプリンを頬張る。


「あまーい! おいしーい! ひんやりー! ぷるぷる! どっちも口の中で溶けてくぞー!」

「しっかり覚えてくれよ。色々と応用レシピがあるんだから」

「うん! もっとたべたーい! あ、でもアイスはムーイ難しい……わかる」

「そうなのか?」

「うん。冷え冷えに変えるの難しい。出来るようにしたい!」


 温度の再現はムーイは出来ないと……練習したら出来たりするかもしれないが、なんかやる気を見せてる。

 練習とかするのかもしれない。

 ムーイの技術向上に期待だ。

 俺もアイスとプリンを少しだけ試食……リトルオクトクラーケンの口ってタコやイカと同じ感じであるから微妙に食べ辛い。

 こう……デリケートな所にあると言うか……いや、違うのはわかるんだけどな。腹が上の方にある微妙な体だし。

 んー……アイスが硬めなシャーベットっぽい感じでやはり代用品って色合いが拭えないなぁ。

 少なくとも牛乳で作られたアイスとは色々と違いが大きいのは否めないか。

 不味くはないのだけが唯一の救いだ。

 プリンの方は、まあ及第点。卵が虫の卵なんだからしょうがない。

 カラメルで誤魔化している。


「で、後はプリンアラモードに加工だ!」

「何するんだ?」

「プリンを皿にのせて果物を添える」


 ムーイが変えた果物を切りそろえてプリンを載せた皿に添える。さらに泡立てたクリームを絞り器で載せて仕上げにアイスを載せて……作り置きしていたクッキーをクリームとアイスに突き刺して。


「完成! アレンジダンジョンプリンアラモード!」

「おおおおおおぉおおおお!」


 出来上がった大きなプリンアラモードを前にムーイが大きく声を上げる。


「ユキカズー! これ食べて良いのかー?」

「お前の為に作ったんだから当たり前だろ」

「わーい! ユキカズありがとー! んー! アイスとプリンが別々だったのが一つになって複雑な味になっておいしー! ムーイもユキカズと一緒で複雑になってくー」


 プリンアラモードを頬張ってムーイが興奮気味に美味しいと言っている。が、後半は訳が分からん。

 さて……俺も適当に飯を作って食べよう。

 さすがに甘い物ばかりの食生活は問題があるし。

 ……問題は菓子以外の俺の調理能力は並みって所なんだけどさ。

 岩塩と卵で作ったオムレツとパンでサンドイッチにして適当に食べて置く。

 塩味が適度に効いていておいしいなぁ。

 そういえば昔、日本に居た頃に塩キャラメルってのがあったっけ……キャラメルだったら今なら再現できそうだな。

 ……菓子は作ってるんだから今日は良いだろ。


「ごちそーさまでした!」

「おそまつさまでした。明日も何か朝飯作ってやるから大人しくしててくれよ」

「わかったー! 早く明日にならないかなー!」


 本当、反応が子供のそれだ。ムーイは。しっかりと導いて……やれば良いのか?

 色々と助けてもらっているんだからお礼はしっかりとしないと。

 ……ああ、早くブルやフィリンに異世界の戦士としての問題に巻き込んでしまった挙句、色々と力になってくれたお礼をしたいな……。

 なんて思いながらその日も過ぎて行った。



 翌日。

 朝食はフレンチトーストをムーイに満足するまで食べさせてから俺は周辺の偵察飛行を行った。

 もちろん目当てはソードファルコンなどの空を早く飛ぶ魔物の分析だ。

 高高度を飛んでいるヴァイワイバーンもこっちが見つからずに目撃できる機会があったらしっかりと観察しよう。


 と言う訳でソードファルコンをよく見かける範囲をリトルフローデスアイに変身して低空飛行で飛び回りソードファルコンを探す。

 お……いた!

 俺が拠点にしている岩場とは離れたところにある高い川が見える岩場を巣にしているようだ。

 なるほど……あっちも視力が十分で狙いやすく飛んでいるフライアイボールとかを狙って狩猟するスタンスだったのか。

 空を飛んでいるソードファルコンを分析するのは骨が折れるからどこかで止まっているのを観察すのが好ましい。


 って事で巣を発見したので木々の合間からサーベラインスアイに変身して目を望遠モードにして岩をも見通すとばかりに睨みつける。

 木々が俺の姿を隠してくれていて、ソードファルコンの方は俺なんて気づきもしないだろう。

 動く獲物の方が見つけやすいんだし、木にぴったり引っ付いている俺は逆に動かないので気付き辛いって寸法だ。


 さて……どれだけ観察すれば分析が終わるかは何となくでしか判断できないけれど、ムーイのおかげで色々と進化した俺からしたらそこまで時間はかからないだろう。

 とにかく偵察をするうえで飛行速度が欲しいのは言うまでもない。

 そういった意味で素早く飛べるソードファルコンの分析は必須だ。

 分析が終わって手をソードファルコンに変えれればそれだけ早く飛んで移動できるわけだしその分、移動範囲が拡張できる。

 できればヴァイワイバーンも分析を終えたいが、俺自身の強さとして再現できるかが問題か。


 ……まあ、気にせずムーイに頼んでいろんな所へ遠征していくのも良いんだけどさ。

 お菓子さえあげていれば俺の代わりに強力な魔物を相手に戦ってくれるし。

 助かるけどムーイに頼りすぎるのはなんか嫌だ。俺の良い人センサーが警報を鳴らす。


 っと考えが脱線した。

 しっかりとソードファルコンを分析だ。

 体感だと戦闘をして相手の動きをしっかりと見た方が分析が進むから戦った方が良いのだが余計な戦闘をする羽目になる。

 しかもソードファルコンは見晴らしの良い所で高速で動き回る相手なんで苦戦は必須、下手に長期戦をしているとヴァイワイバーンまで出てきかねないので戦闘は避けたほうが危険は少ない。


 まあ……分析能力が上がっているんだ。

 今は戦わずにソードファルコンの分析を終わらせよう。

 って感じで俺は凝視を続け、何となく分析が終わるまでソードファルコンの観察をしたのだった。


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