百五十五話
「それに……なんか不思議な気分になるな。一緒に寝てるときみたいな感じー」
ってなんかムーイが照れるように手を合わせている。
それは何のマネなんだ? ムーイ自身もわかってない照れなのか? 何に照れてるのか理解できない。
なんていうか……ムーイって薄々思ってたけどやっぱり人間とは異なる思考をした異質な存在なんだな……。
相談したのは間違いだったと思うことにしよう。
カテゴリーが近いセントリー・サーベイランスアイとパラサイトは選択肢から外そう。
目新しいタイプへの進化の方が出来ることが増えるかもしれない。
となると自然とアイ・リトルオクトクラーケンかフロートツリーの二択。
んー……水棲系って事でアイ・リトルオクトクラーケンにしておくか。
元々サーベイランスアイに進化した理由が手が複数ある魔物って事だったわけだし。
何度も思うけど戻ることは出来るんだしな。
一度登録する感じで気軽に選べばいい。
ムーイが善意で探索交じりに俺のLv上げをしてくれていうんだから。
「よし決めた。アイ・リトルオクトクラーケンに進化するぞー」
「えーパラサイトが良いのにー」
「ムーイはもう少し自分を大事にすることを覚えるように」
って感じで俺は進化先をアイ・リトルオクトクラーケンに決定する。
するとググっともう慣れた感じで体の造形が変わり……手が太いタコを連想するものへと変わった。
アイ・リトルオクトクラーケン・ソルジャー(兎束雪一) Lv1 EVO・P 4369
所持スキル 属性熱線 魔眼 飛行 LGB 分析 分析力向上+ 変身 熱線威力アップ 飛行速度向上 配下視界共有 変化項目拡張
固有能力 吸盤 鑑定精度向上 水中呼吸 擬態 墨吐き 潜水 念動力(弱)
Lv5になった時……変化項目拡張・手
進化条件 Lv23
人間 ×不可 ▽所持スキル
分析▽
変身▽
肉体
体 アイ・リトルオクトクラーケン
手 アイ・リトルオクトクラーケン
手 アイ・リトルオクトクラーケン
手 アイ・リトルオクトクラーケン
手 アイ・リトルオクトクラーケン
手 アイ・リトルオクトクラーケン
手 アイ・リトルオクトクラーケン
手 アイ・リトルオクトクラーケン
手 アイ・リトルオクトクラーケン
お? 思ったよりも体躯が変わらないか?
八本の足先を地面につけて立っていられるぞ。
二本を手のように前に出して動かしたりもできる。
「おーユキカズの姿がまた変わったー」
感心するムーイの声を聴きながら手を使って歩く。
八本もあるけど二本で足を使う感じで歩くことは出来るな。
手の二本を計算に入れると四本余計な感じでひらひらさせれる。
試しにムーイの背中に引っ付いての一斉熱線を足にしている二本を残してやってみる。
カッと複数の足から一か所に熱線が放たれて着弾点は燃え上がった。
集めればなかなか高威力を出せるようになってきたぞ。
サーベイランスアイの時より手が肉厚になったのでその分威力が向上してる。
少なくともサーベイランスアイよりも強くなれたのは間違いない。
移動も無理な体勢や羽を生やしての動きじゃなく動ける。
ウォークアイ系よりは早く動けそうにないけど手数が増やせるのは良いな。
スラッシュウォークアイの手に変えれば近接も出来そう。
骨は無いけど体はしっかりと支えられるっぽいし。
って所で念動力(弱)って項目に視線が向かう。
魔法があるのに念動力? あ、なんか使い方がわかる。
意識して……近くの小石を魔法の要領で手じゃない手で持ち上げるとふわりと浮かんだ。
どうやら物を浮かせる固有能力も完備しているようだ。
なんていうか……どこかの神話系の生き物っぽいなー相変わらず大きな目玉がメインだし。
機動力は地上じゃちょっと心もとないけど中々悪くない感じがする。
「ユキカズ、オレの背中に乗るー? その体だとしっかり掴めそうだなー」
ムーイが乗れとばかりに背を向けて屈んでいる。
実は背中に引っ付いているの気に入ってたのか?
「ん」
しょうがないので両脇と両足脇にそれぞれの手を絡ませて乗ってやる。
「おお、がっしり引っ付いて良いなー」
ドタタタタ! って感じでムーイが走り、めちゃくちゃ揺れる。
それでも俺の手は離れずムーイをがっしりとつなぎとめていた。
しかしこの体勢……何となく卑猥な感じがしないか?
……気にしてはいけないのかもしれない。
「これだけしっかりとくっ付けるなら……」
残った四本の手に目を生やして熱線を撃ってみたり、くねくねと素振りをする。
ムーイに当てない範囲で縦横無尽に動かしてっと……うん。なかなか悪くないんじゃないか?
「おー! ユキカズすごーい!」
吸盤もあるのでそのまま壁なんかもムーイの手足を使わずに持ち上げたり……出来そうではある。
ただ……ムーイって重いからゆっくりと引き上げる感じなので壁に俺が引っ付いて支えるのが精いっぱいか……。
それとパラシュートとかも出来るかな?
高い所から降りる時とか俺自身が広がってパラシュートの傘状態に出来そう。
そのまま破けたりしたら怖いので多少実験するけどさ。
「よし。こんな所だな」
「おわったのかー? じゃあ帰るかー?」
「いや、ついでに他の変身とか分析が終わったので使えそうなのが無いか調べる」
「そっかーユキカズってコロコロ姿が変わって面白いなー」
「面白いと言われてもな……ムーイ。お前も姿変えれそうな体してるじゃねえか」
餅というかマシュマロみたいな雪だるまっぽい肥満体な生き物で、案外伸縮が利く体をしている。
狭い所とかすんなり入るし、触診する限り骨っぽいのが無い。硬い所は筋肉というかなんか意識的に硬くしている部分ってだけな感じだぞ。
……確かにパラサイトで寄生はしやすそうな体付きしてるよな。お前。
魔物とか殴る時に腕が少し伸びたりするんだこいつ。
「えへへー……そうか?」
何を照れてるんだよ……まあムーイが色々と出来ると俺の価値が菓子職人ってだけになってしまうから自主性に任せてこっちはこっちで自己強化に励むか。
って事で調べたところスラッシュウォークアイの進化条件が明らかになっていた。
進化条件 Lv18 進化可能!
一応Lvが足りないからなのかもと思って19まではムーイに引き上げて貰っていたんだ。
なので項目を確認。
不明なのばかりだけど一つ満たしたみたいだ。
◆シザークラブ・アイ
甲殻変異種。巨大な蟹の情報を模倣して自身の特徴として取り込んだ。
強固な外殻を纏う事で外敵の攻撃に耐え、ハサミで相手を掴んで切断する。
進化条件……Lv18 甲殻を持つ魔物・水棲系の情報を一定数集める。
えーっとつまりこれはジャイアントクラブ辺りの分析が終わったことで出た進化って事で良いのか?
さっき見た時には無かったはずだから……水棲系の情報……アイ・リトルオクトクラーケンに進化することで条件を満たしたのかもしれない。
うわ……なんか色々と絡み合った進化が混ざってきているなー。
まあ……こっちも一応進化しておくか。
「もう一個新しい進化が出たから進化するぞ」
「おー」
ムーイに確認を取ってからシザークラブ・アイへの進化を決定する。
グググ……っと体が膨れて、進化が終わる。
カパッとなんか瞼が硬い感じに開いたぞ……つーか関節がぎこちないような。
タコだったのとは逆にすごく硬い感じだ。
「ユキカズーカニー」
言われて手とかを確認すると見事にカニのハサミとなっていた。
足も、のしのしと動かす感じで……横移動の方が楽に動けるなぁ。
ただ、体躯はそこそこ大きくなった気がする。
ムーイより小柄だったけど今はムーイと同じくらいの大きさになっている。
しかし……ウォークアイとは異なり進化先がどれも多肢な魔物ばっかりだなぁ。
「カニパン」
「……俺をカニパンにするなよ?」
ムーイがカニパンを思い出しているのか俺を見て涎を垂らしながらつぶやいた。
ジャイアントクラブに遭遇するとトドメにカニパンにすることが何度かあったからな。
脊髄反射で俺をカニパンにしないか不安でしょうがない。





