百十二話
結果で言えば生存者は見つけられず俺達は迷宮から脱出する事になった。
帰路の懐中時計を使用して迷宮から出て地上の基地へと帰還する。
「おうおう? 想像よりもお早いお帰りの様で」
出迎えたのは迷宮前の入り口の建物の屋根でアザラシ姿で寝ころんでいたアサモルトだ。
「ふむ……そちらの調子はどうだ? 何か問題はあったか?」
「くふふ」
いや、なんで笑ってるんだよ。
「基地中が大騒ぎとなってますぜ。上級騎士様。こりゃあ世界規模の大戦争になるかもしれないねぇ……」
「え!?」
「ブ!?」
アサモルトの返事にフィリンとブルが驚きの声を上げる。
と言うか何余裕かましているんだコイツ……何処でも平常心って事なのか?
大物なのかそれとも突き抜けた怠け者なのか本気で分からん。
「何!? 一体どういう事だ!」
ライラ教官は魔導兵から降りて基地へと駆けだして行く。
「一体どういう事なんだ?」
「いやぁ……なんつーか世の中何が起こるかわかんねーって事だ。ペンケミストル国とかいろんな国の連中にまで息が掛ってるとはすげぇもんだよ」
「そ、それは一体!?」
フィリンがアサモルトに尋ねる。
「お前等に敵対している奴等が恐ろしく強い武器を携えた奴等を連れていろんな所に宣戦布告してるんだとさ」
なんと……いや、幾らなんでも過程が色々とおかしいだろ。
「それがなんで俺達と敵対している連中だって分かるんだ?」
「そりゃあ我らがレラリア国で研究されていただろう異世界の戦士関連の情報で判明した武器を奴等が使って一騎当千の活躍をしてたら嫌でも分かるし、こっちもそう情報発信してるからねぇ。元々風聞が広まっていた所で大騒ぎさ」
くくく……と、アサモルトは説明をしてくれるが……。
俺は魔獣兵からフィリンに通信を開いて顔を確認する。
フィリンの表情は青ざめていて若干震えも見せている。
これ以上話を聞かせるべきでは無いかもしれないが……。
「フィリン」
「大丈夫です……それくらい、私だって覚悟はありますから」
俺が声を掛けるとフィリンは深呼吸をしてからしっかりとした声で答える。
ダンジョンに取り残された頃よりもフィリンはLvではなく精神的に大分強くなっていると感じた。
「驚異的な武器を持った奴が現れた時にその庇護を得られない連中がする事なんて何処の世界も似たようなものだろう? 異世界の戦士様」
「……」
取り入るか相手を根絶させるか……か。
あの声の主が言っていた面白くないと言うのは……あの武器で世界支配を実行に移した……と言う事か。
「ペンケミストル国を中心に各国へ喧嘩を売って売られて件の武器で力を見せつけたってな、へたすりゃ軍隊が壊滅、僅か数日で占領までされちまった所もあるそうだぜ。四方八方よく暴れるもんだぜ。完全に勝ち馬だろうさ、面白くてしょうがねえだろう」
「相手の息が掛っている範囲は判明したのか?」
「そりゃあ大分分かってきたみたいだぜ。何処もかしこもバケツをひっくり返すように騒ぎが伝播中さ」
くくく……と笑ってるアサモルト、お前は平気だとでも言う気か?
それともふざけてるけど実はって事なのか?
「で、上級騎士様と異世界の戦士様一行は何か収穫があったのですかい?」
「そこはライラ教官が話すだろうさ。ついでに敵の一派に所属していた元貴族の犯罪者トーラビッヒを生け捕りにもしたしな」
あの武器の処遇に関してはライラ教官が自ら話すだろう。
俺が話す事では無い。
「異世界の戦士様はどう動くつもりかい? くく……」
ふざけた様子でアザラシ姿だけど、その目には何か真面目な色が宿っている。
俺を試している?
「どうも何も……」
俺は言ってはなんだが身勝手で打算で動く人間だ。
結果的に今があるがレラリア国が世界の為に戦ってほしいと頼んだのを断って好き勝手に行動できる冒険者になる為、兵役に就いた。
今、俺の中で冒険者への魅力は……あまり感じられなくなっている。
それだけ兵士としての生活……短い期間であるが濃い日々に染まってしまっているのかもしれない。
本音で言えばもう少しゆっくりとした平和な日々を過ごしたい。
それは冒険者では無く、国民って区切りでも良いかもしれない。
けど……ブルを見て思う……もしもブルが異世界の戦士だったとしたらどうここで決断するかを。
俺が憧れたのは息をするように人々を助ける親友の姿であり、そんな人が正しい事に対して正しい評価をされる状況。
ブルが受ける被害の矢面になりたいと願った。
「決まってるだろ? 異世界の戦士を発端とした問題であるなら、異世界の戦士が尻拭いをしないとな。逃げた俺の責任だ。そもそも……絶望的ではあるが異世界の戦士がいるって場所の情報は掴んだ」
「ほう……ま、やるだけやってみるしかないってことかい」
なんて感じでアサモルトとの話を終えて俺達は地上の基地へと帰還したのだった。
行方知れずのクラスメイト達が無事であることを……絶望的だが祈るしかない。
情報を纏めると大体はアサモルトが俺達に言った事で纏まっていた。
トーラビッヒを拷問して吐かせようとしたがやはりというか大した情報は持たされていなかったらしい。
基地で休憩してから数時間後……。
ラスティの用意した機材でライラ教官に持って貰っていた異世界の戦士の武器の解析を行う。
カプセルに入れて色々と反応等を調べている。
出てくる情報にラスティが目を通して行く。
表示されるデータを俺も見たが何が書かれているのかすらよくわからない。
「こりゃあ凄いわね。所持者に恐ろしい程の力を授けてくれるってのが分かるし込められたエネルギーがとんでもないわ」
「そうなんですか?」
「この武器一本で国のエネルギーを数年は賄える位のエネルギーが出せるのは間違いないわ」
もはやどれだけオーバーテクノロジーなのよ、とラスティは舌打ちしている。
自力で見つけたかったって顔だな。
「国の研究機関にあった資料と照らし合わせるとどうなんだ?」
ライラ教官がラスティに尋ねる。
「設計図と実物は随分と違うわね。さも平然と作りだされたみたいな話だったけど、少なくとも城の技術者程度で作れる代物じゃない事は断言するわ」
情報が流れる端末を見ながらラスティは俺を……じゃなくてバルトを見る。
「バルトに搭載されている機能を大幅に発展改修させる……とも少し異なるわね。異世界の戦士の力を利用するってコンセプトが同じの別の代物よ」
「ギャウ」
「そういやバルトはこの武器を見た時威嚇してたよな? もしかして知っていたのか?」
「ギャウギャウ」
バルトは否定とばかりに首を横に振る。
「竜騎兵のコアってのは制作者の意志の様な物を感じたりする時があるのよ。だからこれが悪意で作られているってのを感じとったって所じゃないの?」
「そんな物ですか……」
「似た武器はバルトが開発された時代にもあったんでしょうよ。ただ、仕組みが違い過ぎるってさっき言ったでしょ?」
「うーん……」
どうにも俺には違いが分からない。
アレか? 言葉と言う意味は同じだけど言語の発祥が異なるみたいな?
「城で作りだされた物じゃないって……じゃあ何処でこれは作られた代物なのだ?」
「さあね……しかしよく考えたもんよね。異世界の戦士から力を吸い取り、誰でも使用できるようにするなんてね。バルトの方は本人しか使えないってのに」
「……もしもこれが当然の様に出回ったら異世界の戦士がどのように使われるか考えるだけでもおぞましい話だ」
「異世界の戦士を召喚する儀式は必要な素材とかあるのでしたよね?」
「ああ……安易に呼び出す事は難しいと思うがそれも迷宮等で見つかる事もある……」
声の主は力を授けるのを控えると話を俺にしていた。
同じ現象が起こる事は無いだろうけど……それでも俺達異世界の戦士が騙されて力を吸われていたのに間違いは無いんだ。





