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百十一話

 そうして破壊された基地を漁っていると……。


〈……古き神の願いと言ったか、知った風に語るものだな……〉


 俺の……内側から声が聞こえた様な気がした。

 お前は……何者なんだ? 古き神とはお前達の事なのか?


〈残念だが我の事では無い。が、此度の騒動の原因が我等にあるのもまた事実だろう……人間共への手向けと過去の英雄たちへの礼、何より兄弟達の慰めに授けていた加護だったが、次からはやめるべきかもしれんな〉


 異世界の戦士としての力の根源の主……って事なのは今までの出来事で分かる。

 なんで力を授けていたんだ?


〈この世界に我等の加護無しで入ったら貴様たちは世界の空気に馴染めず即座に死ぬぞ? 大丈夫な世界の者が迷い込んだ時に我等は干渉などせん〉


 それって……大気の空気とか違って地球人は息が出来ないってこと?


〈汝の認識がどの程度で判断出来ているのか分からんが、概ね間違いないだろう。古き時代の異世界の者たちは魔素汚染なんて語る者が居たと我等の誰かが言っていたか〉


 魔素汚染……なんかこう、非常に体に悪そうな単語だ。

 その汚染から守る為に加護を授けた。


〈この世界に招かれたにしても迷い込んだにしても、少しでも長く生きて貰わねば我等も楽しみが減る……それを利用されるとは嘆かわしいものだ。どちらにしてもここが踏―張り時だ。貴様―我の声―より聞こ―る―まで来てしまって――〉


 徐々に声が小さくなっている。

 また声が聞こえなくなるのは時間の問題か。

 この状況で何を聞けば良い? 力の使い方? 声の正体? いや……それより優先しなきゃいけないのは一つだ。

 教えてくれ、俺と同じ異世界の戦士たちは何処にいる? さっきの装飾品に込められた声の奴の場所か? それともこの迷宮の深い所か?


〈既―浸食―終え―者を見る―は出来ない。が、この場に求め―者はいな――……〉


 声はそう言って聞こえなくなってしまった。

 ……本当かどうかはわからない。

 けど……ここに留まって良い様には思えなかった。


「ライラ教官」

「どうしたトツカ?」

「迷宮から出ましょう。なんとなくあのメッセージ通り、この迷宮に異世界の戦士達はもういないように感じます」

「……貴様の進言ならこちらもそう判断する。本当に良いんだな?」

「はい。手掛かりがあるならそっちを優先して向かいましょう。それこそ地上に出たら通信して現地を先に調査してもらえば良いです」


 俺の進言にライラ教官は頷く。


「……国も事を重く見ている。即座にこのポイントへの調査を行ってくれるだろう」

「後は……この武器に関してだ」


 ライラ教官がトーラビッヒから奪った棒を握りしめる。


「形状は魔導竜剣によく似ている。そして」


 ブウン! とライラ教官は棒から刀身を出した。


「トーラビッヒが扱った様に私でさえも使える品の様だ……恐ろしい程の力の流れを感じる」

「あの……」


 俺は挙手して更なる進言を行うと決めた。


「なんだ?」

「その武器はライラ教官が持っていて下さい」

「ん? もちろん私が責任を持って持ち帰るつもりだったが……それは私が使えと貴様は言っているのか?」

「はい。ブル、フィリンもそう思わないか?」

「え?」

「ブ?」


 俺の言葉にフィリンとブルがキョトンとした表情で見てくる。


「まず異世界の戦士として……寿命を縮めるけど力が使える俺にはバルトと魔獣兵がある」


 ナンバースキルを使えば浸蝕率が増加してしまうが異世界の戦士……いや、異世界の戦士から力を奪ったらしい武器を持つ者に対抗する術が俺には備わっている。

 元からその武器を使う意味は……鬼に金棒としてはあるだろうが他に回せる余裕がある。

 何より異世界の戦士の武器を持つ者を魔獣兵で戦って抑え込めた実績は大きい。

 これで数で来られると巨体故に容易くやられてしまう可能性はゼロじゃないけど、その時は俺も白兵戦で戦えば良いだけだ。


「ギャウ!」


 バルトを指差すと任せろとばかりに鳴いて応じてくれる。

 本当、魔獣兵にはいろんな所で助けて貰っているな。


「ブルも異世界の戦士に多少速度は劣るけど白兵戦では並々ならぬ力を秘めています」


 これは揺るぎようがない。むしろ異世界の戦士でもないのになんでそんな力を持っているのか、ブルの方が謎でしかない。

 秘密はブルの父親が握っていると思って良いんだろうけどさ。

 白兵戦で戦えるのだから異世界の戦士が使っていた武器を持つ意味は……俺と同じく優先度を下げる事が可能だ。


「そしてフィリンは魔導兵の操縦が出来、異世界の戦士を想定した訓練を既に経験しトーラビッヒを捕縛する際に貢献しました」


 フィリンに関して言えば魔導兵の操縦で俺を大きくサポートしてくれたのは揺るぎようがない。

 遠くからの援護射撃を行って戦いやすい状況を構築してくれた。


「この場で最も強力な武器を扱うのはライラ教官が適任だと思う次第です」


 俺の分析による武器の有効活用方法をライラ教官に説明した。


「無駄に口のまわる理屈をほざきおって……貴様は勝手な行動が多い自覚はあるか?」

「はい! 出過ぎた真似をしている自覚はあります。罰は受ける所存です」


 この中で戦いに参加する機会を失ってしまっているのはライラ教官だ。

 剣術の腕前は俺なんかよりもはるかに高くて、ブルのごり押しを技術で捌ける。

 戦いに参加出来ないのは異世界の戦士の力に追い付けていないからに過ぎない。

 ここで異世界の戦士の力が使える武器が手元にあるのならもっとも使いこなせるのはライラ教官だろう。

 それだけ手札が増える。

 使える手段を選んでは守れる物も守れない。

 迷宮に取り残され、命からがら脱出し、いろんな仕事や任務をしてきた俺達が学んだ兵士としての常識だ。


「貴様の言い分、確かに筋があるのは認めよう。だが、良いのか? この武器は貴様の仲間の力が宿っているのだぞ?」

「……」


 そう、この武器は本来、一緒に召喚されたクラスメイトの誰かが持っていた力が込められている。

 藤平なのかはたまた別の誰かなのかは分からないけれど、彼らの生きた証……生命力とも言える代物だ。

 ……安易に使って良い代物なのかとか力の残量とかどうなっているのかとか色々とある。

 だけど……それでも俺は進まなきゃいけない。


「はい。ここで出し惜しみをする意味は無いです。敵はこちらを舐め切って切り札を流したのですから……問題は何か罠等が仕掛けられていないかだけですが、あの様子では相当追い詰めない限り罠が顔を出す事は無いでしょう」

「そうか……」


 ライラ教官は俺の返答に非常に申し訳なさそうな顔をした。

 もちろん無意味に振るったりする人じゃないからこそ、俺はライラ教官にこの武器を預けたいんだ。


「どうしても必要な時に使う。私が安易に振るうと思わん事だぞ」

「はい!」

「わかった。とはいえ……まずは持ち帰って信用できる者に調べさせるのが重要だ。それは分かっているな?」

「もちろんです。何かあった際にライラ教官が所持してほしいとの提案です」

「うむ」


 俺の読みだとこれから先の状況でライラ教官が俺達と同行する際に使う事になるはずだ。

 例え国に預けたとしても……だ。

 ここでその武器を没収して俺達に行けと命じるお偉いさんが居たら俺はそいつを信用せずにセレナ様に意見を伺うぞ?

 絶対に必要となるだろう。

 そんな訳で異世界の戦士の力が宿った武器はライラ教官に持ってもらった。


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[一言] >大気の空気とか違って地球人は息が出来ないってこと? 大気=空気
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