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百九話


「おのれ! 複数で囲って攻撃してくるとは戦士の風上にもおけん!」

「どの口で言うか、貴様!」


 俺もライラ教官も合わせてトーラビッヒに指摘する。

 お前の様な卑劣漢な奴に正々堂々の精神があるとは到底思えない。

 文字通り強靭な力があるのに対処されて腹が立って身勝手な言い分を振りかざしているとしか言いようが無い。


「黙れ! 遊びはこれまでだ! 無様に貴様らを嬲ってやろうと思ったが大きな間違いだった様だ! 早々に跡形も無く消し飛ぶが良い!」


 トーラビッヒが武器を振り上げて……その構え、覚えがある!

 パワーウォールクラッシュを放ってくる!


「バウ!」


 と言う所でブルがトーラビッヒの死角から飛びかかり武器を持つ手を掴む。


「なに!? く……離れろ! 汚れた存在め! 私に触れて良いと思っているのか!極刑物だぞ!」

「バウウウウ!」


 うそだろ……ブルの怪力で腕をねじ切られる事無くトーラビッヒが武器を振り降ろそうとしているぞ。

 それを抑え込んでいるブルはやはり凄い。

 なのだが……ブルとトーラビッヒの攻防は続く。

 一番の難点はブルが居るので魔導兵での援護射撃が出来ない。

 精々武装のチャージを行うのが限度だ。

 俺はこの隙を使ってブルの背後、トーラビッヒの視界の範囲で大きく……魔獣兵の翼を展開。

 魔導竜剣に込めていたエネルギーを全力で回す。


「バルト……行けるか?」

『ギャウ!<肯定>』


 よし! 元よりコレが今なら出来る。

 ライラ教官に武装発動申請を通信で送る。


「なるほど、私の命令した捕縛しろと言う指示を貴様等はしっかりと聞いていた訳だな」


 魔導兵の操縦権利をフィリンへと委託されて無視されていた若干不機嫌なライラ教官が頷く。


「部下の管理に関して後悔し始めていた所だったが、とんでも無く優秀な者たちで感心したぞ。許可する。行け!」


 OK! 許可が下りたのなら遠慮なくするぞ!


「く……いい加減離れろ!」

「バウウウウ!」


 ブルの背中、トーラビッヒの目目掛けて俺が操縦する魔導兵の翼に開かれた目が……魔眼を発動させる。

 カッと赤い閃光がカメラのフラッシュの如く、トーラビッヒの視界に映し出される。


「あ、ああああ……」


 目を見開き驚きの表情を浮かべていたトーラビッヒの力が抜け脱力した様に微笑み始める。


「ふ、ふはははは……やった! やったぞ! 貴様等みんな皆殺しにしてやった! ハハ……どうだ、ローレシア。貴様等この私の前では無力なのだ……さあ、私の靴を舐めろ!」

「バウ!」


 バッとブルがトーラビッヒの手から落ちた武器を踏みつけて取れない様にした。

 そしてトーラビッヒの手を締め上げた。


「よく効いたものだな」


 非殺傷効果のある魔眼も使える魔獣兵の翼……フライアイズボールビーストは便利だな。

 今、トーラビッヒは自身の思い描いた幻想の世界で俺達と戦い勝利してライラ教官を蹂躙しているのだろう。

 問題はこの武装を放つのに多少、視線を合わせないといけないのは元よりトドメの魔眼を発動させなきゃいけなかった。

 なので出来る限り魔獣兵の翼の目をトーラビッヒの視線に合わせながら戦い続けていた訳だ。

 エネルギーの消耗も大きかったし……余り効果的な方法じゃないのは間違いない。


「耐性もあって掛けるのに時間が掛りましたけどね」


 魔導兵の主砲を耐える障壁に阻まれていたのが厄介だったけど、破壊した時からずっとタイミングを狙っていた。

 耐性が高くなっているのは魔眼発動で既に分かっていた。元より相手の状態を観察するのは俺の特技であるし、フライアイズボールビーストのパーツ部分の性能だ。

 バルトの分析した成功率はお世辞にも高くは無かった。けど、良い感じに発動出来て良かった。


「異世界の戦士に匹敵する力を持つ相手に私達……少ない被害で勝てましたね!」

「そうだな……後に何か居たらその限りじゃないから油断しない様にな! ブルも分かってるよな?」

「バウ!」


 トーラビッヒを抑え込んでブルは応える。

 そうだ……異世界の戦士一人ならサイズ差の問題で劣るかもしれない問題も、しっかりと連携すれば勝てる事が証明できたのは大きな前進だろう。

 魔獣兵の翼で周囲の索敵を行う。

 ……脅威となる敵の反応は無い……か。


「教官、敵影はありません。どこかから遠距離狙撃も想定して広範囲索敵をしてますけど……見つかりません。どうしましょうか?」

「本当にトーラビッヒ一人だけなのか?」


 確かに……ここまでやらかす敵連中がこれだけで終わるとは考え難い。

 何か裏があるとみて良いだろう。


「こんな事までしておきながら相手の手が生温くないですか?」

「私もそう思う……が……それよりもだ。一つ大事な事を確認するぞ」

「はい」

「あの武器は異世界の戦士以外も使えるのだな……」


 あのローブの奴が何者かは除外するとして、トーラビッヒが平気で振りまわしていたのだから間違いない。


「でしょうね……」

「となると……面倒な。あの武器がどれだけの数あるのかを考えると頭が痛いぞ」


 そう……これがどれだけ脅威となる問題であるのかを俺達は痛いほど感じている。

 あのローブを羽織った者が何者なのかは別にしたってだ。一般の兵士であるトーラビッヒが使えるようになっているのは持ち手を選ばない兵器であるのを認めた様なモノだ。

 トーラビッヒに魔眼を当て続ける状態のまま、魔導兵は近づきトーラビッヒを縛りあげる。


「それと異世界の戦士に関してどうなっているか……」

「問題はそこだ。中継基地を破壊したと言う事はこの先に異世界の戦士達は取り残されているのか……それとも奴らの基地が……あると思うか?」


 推測……ライラ上級騎士の問いに対しての返答。

 ……14%

 バルトの推測が表示されてる。低いだろうってのがバルトの意見なわけね。


「どちらにしてもトーラビッヒを詰問するほかあるまい」


 そんな訳で武器を没収し、縛りあげた状態で魅了状態のトーラビッヒを座らせる。

 ああ、魔獣兵の修理も行って行くぞ。

 エネルギー消耗が大きくて魔導兵も補充しないといけない領域まで来ている。

 損耗は軽度だったけどやっぱり異世界の戦士に匹敵する相手に長期戦闘を継続するのは……難しいな。


「もう良いぞ」

「バルト」

「ギャウ!」


 乗り物から降りた俺達はトーラビッヒの前に立ってからバルトに魔眼の解除を命じる。

 赤い光が消え去った。


「フヒ……フヒヒヒ」


 まだ幻想の世界にトーラビッヒは浸っている。

 よほど居心地が良いのだろう。

 魔眼は心の弱い人間には効果が高いがまさにトーラビッヒは特に効果が高いだろうさ。

 コイツは強い意志なんて微塵も無い奴なのは俺が痛いほど知っている。

 とりあえず……落ちている武器を手にとって確認をする事を優先しよう。

 ブルが拾い上げてライラ教官に手渡す。


「これがトーラビッヒの使っていた武器だな……魔導竜剣の様な承認制の機動シークエンスは……」


 ライラ教官が武器を握りしめるとブン……と刀身が出現した。

 え? そのまま使えるのか?


「……無いみたいだな」

「そのまま奪って流用できるって不用心な」

「――ッツ!? ここは! 貴様等! このトーラビッヒ=セナイールに破れて屈辱を味わっていたはず!? 何故平然と立っている!?」


 トーラビッヒに施した魔眼がやっと抜けたらしく我に返ったトーラビッヒが叫ぶ。


「縛りあげたからと調子に乗るなよ! 私は過去の私ではない! 両手が使えずとも――」

「ギャウ」


 カッとバルトが魔獣兵の翼を広げて灰色の魔眼の光をトーラビッヒに浴びせる。


「あ――!? ま、魔法が使えない! 何を――」


 マジックシードも与えられていた訳か……トーラビッヒの背後にいる奴は何が目的なんだ?

 ちなみにバルトが現在展開しているのは魔法阻害、沈黙を誘発する魔眼だ。割とアイズウイングのバリエーションは豊富である。

 使えば使うほどパーツが馴染んできている様に感じるくらいだ。


「さて……尋問の時間だぞ、トーラビッヒ。貴様……洗いざらい吐いてもらうとするか」


 と、ライラ教官が武器を色々と調べながらトーラビッヒに向かって言い放つ。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] なんか、催眠(?)の影響下にあるトーラビッヒ、「いひひひひ」とか言いながらズボン降ろしてそうでイヤだなあ。
[一言] 協力者の幻覚でも見せたほうがまだ確度高い証言得られそう、と言うかそうしないとグダる気しかしない
[気になる点] 魔眼の効果で沈黙させてたら尋問できないのでは? 翻訳さんの限界で、沈黙がゲーム的な魔法使用不可状態の名前として訳されていて、普通に喋ることができなくなるモノではないとかそういう話なのか…
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