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望まれぬ英雄 ~虫も殺せない僕が魔王になった理由(わけ)~  作者: 牧田紗矢乃
〈Episode2〉

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11/53

-2 Wデート? ……ではありません。

 悪夢の後、うつらうつらすることはあったが、そのたびにあの光景が瞼の裏に蘇った。

 ユラはそのたびに飛び上がりそうなほど驚いて、暴れる心臓が落ち着くまで深呼吸を繰り返した。


 それとは対称的に、アルフォンソは隣でいびきをかいて眠っている。

 腹が立って何度か小突いてみたりもしたが、アルフォンソは寝返りを打つくらいしか反応しなかった。


 そうこうするうちに夜空は白んでいき、ユラは寝不足のまま朝を迎えた。

 アルフォンソは夜が明けるとすぐに起き出して念入りな身支度を始め、ユラは大きなあくびをしながらそれを眺める。


「なんだ、寝れなかったのか?」

「あぁ。まあ、なんとかなるさ」


 顎が外れそうなほど大きな欠伸をして、ユラは家を出た。

 向かうのはこの町、レーベルクで一番大きな施設だ。


 入口の門には「レーベルク戦闘技能訓練所」と刻まれている。

 ここは魔族討伐部隊に入ることを希望する者たちが集まる場所で、通称「訓練所」と呼ばれている。

 ユラとアルフォンソは訓練所の敷地に入ると、迷うことなく宿舎のある方向を目指して歩いた。


 彼らの向かう先には、二人の少女が待っていた。

 一人は赤茶の髪を三つ編みにしたマリアンヌだ。いつもより小綺麗な服を着ている。


「お待たせ、マリー。と……――?」

「……あ、わたし、イーラです。はじめまして」


 金のミディアムヘアの少女がぺこりと頭を下げる。


「買い物に行くって話したら一緒に行きたいって言うから」

「そうかそうか。マリーにこんな可愛い友達がいたなんてな」


 ユラに茶化されたマリアンヌは唇を尖らせる。

 イーラは困ったように笑い、そんなマリアンヌをなだめた。


「ほら、ユラもあんまりマリーのことからかうなって」


 アルフォンソはぽんぽんとユラの背中を叩き、さりげなく女子二人の手荷物を預かった。


「……さ、今日は楽しむんだろ?」


 アルフォンソの言葉につられ、マリアンヌにも笑顔が戻る。

 そして、四人は連れ立って街へ向かって歩き出した。




 ルーベルクは訓練所の町ということもあってか、街中にいる人もユラたちと同年代の男性が多い。

 魔族との戦いに備えるための訓練所なので、そこにいる訓練生のほとんどが男なのだ。


 そんな中、訓練所の紅一点ともいえるマリアンヌと連れだって歩いているユラとアルフォンソは、視線を向けられることも少なくなかった。

 ユラはなんとなく居心地悪く感じていたが、アルフォンソはさして気にならないらしい。


 両手に二人の荷物を持ってすっかり荷物持ちの様相になったアルフォンソだが、嫌な顔一つせずその役を務めている。


「ところで、イーラちゃんはどうして訓練所に来たの?」


 二軒目の店での買い物を終えて店を出ると、アルフォンソが事もなげに問いかけた。

 昔は、魔王を倒すことで名を上げたいと思っている腕に自信のある男が志願することが多かった。


 魔族による襲撃が増えた最近では仇討ちなど暗い理由の者も多く、志願理由を尋ねること自体がタブー視されることもある。

 ユラが内心はらはらしていると、イーラははにかんで答えた。


「わたし、訓練生じゃないんです。医師の見習いで、ここの医務室に配属されて」

「なるほど……。マリーは怪我が多そうだもんな」


 ニヤリとしたユラを、マリアンヌが小突いた。


「違うわよっ! イーラとは寮の部屋が一緒なの!」


 ムキになって反論するマリアンヌをイーラがなだめる。


「あそこは女の子が少ないからな。大事にするんだぞ?」

「わかってるわよ……」

「おっ、あんな所にクレープ屋がある!」


 一人呑気なアルフォンソが、移動屋台のような店舗を指さした。


「マリー、イーラちゃん、何か食べるかい?」

「私、ストロベリーショコラ!」


 即答したマリアンヌに対し、イーラはきょとんとしている。


「クレープ……? それは、あの……、どんなものなんでしょう?」

「イーラ、クレープ食べたことないの!?」


 目を丸くしてマリアンヌが声をあげる。アルフォンソもしばし思案顔になり、おすすめのクレープを聞いて頼んでみようかと提案した。


「もし苦手だったらオレがもらうから」

「……いいんですか?」


 心配そうなイーラの頭をポンポンと撫で、アルフォンソはクレープ屋に向かう。

 その後ろをユラが追いかけた。


「アル、僕のぶんは?」

「あぁ……欲しかったのか? ほら、財布出せ」


 思わぬ要求をされて、ユラの表情が険しくなった。


「ユラはオレの収入知ってるだろ。自分のぶんくらい自分で出してくれよ」


 アルフォンソに耳打ちされて、ユラも仕方なく頷く。


「女の前でばっかりいい格好したってロクなことにならないぞ」

「……馬鹿。そんなんじゃねーよ」


 呆れたようにアルフォンソが呟いた時だった。

 クレープ屋の前に並んでいた一人の女性が悲鳴をあげた。

 一羽のカラスが女性に襲い掛かったのだ。


 突然のことにパニックになったと思われる女性は、持っていたハンドバッグを振り回して抵抗しようとしている。

 けれど、カラスはそんな女性をあざ笑うかのように上昇と下降を繰り返して女性を襲い続けた。


「ユラ、これ頼む」


 アルフォンソは持っていたマリアンヌたちの荷物をユラに手渡した。

 そして女性を救うため、駆け出す。

 異変に気付いたのか、マリアンヌたちもこちらへ駆け寄ってきた。


「あの……、わたしは戦えないので、荷物番をしてます」


 申し訳なさそうにイーラが頭を下げた。

 マリアンヌは自分の鞄から短剣を取り出すとアルフォンソを追ってクレープ屋に向かう。


「……っ、僕たちは丸腰なんだぞ? どうするつもりだよ、アル」

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