本業:サラリーマン!?~ダンジョン潜って一獲千金@日本~
『キーンコーンカーンコーン♪キーンコーンカーンコーン♪』
8時になりチャイムが集会スペースに鳴り響く。
続いて『ラジオ体操第いちぃ~!』と言う男性の声。
声と音楽に合わせて、居合わせる同僚たちと共に伸ばすべき所を意識して体をしっかりと解していく。
ラジオ体操が終わると整列をし直して朝礼が始まるのだ。
「お早うございます!」「「「「「お早うございます!」」」」」
朝礼担当の声に合わせて皆で発声・返礼する。
声を出して現在の自分の体調を識るのも大事な仕事である。
発声はバカにできない、必要な際に声掛けできなければ同僚の命に関わるからだ。
コミュ障だから大きな声を出せません!とか言っていたら同僚を殺してしまうかもしれないし、まず自分が死ぬ可能性が高くなってしまう。
本気で生き残りたい奴はこういった所で手を抜くことはない。
勿論、俺も生きていたいので手は抜かない。
朝礼担当が通り一遍の注意事項を述べていき、通行不可領域、直近の事故情報を共有する。
最近起きた東京001番での落盤事故に関しての事故詳細だ。
どうやらレアメタルが露頭していたがトラップだった様で、掘り出した所で天井が崩れてきて掘っていた山川が巻き込まれて死亡した様だ。
近年、宝箱だけでなく先述の様な希少価値の高い拾得物ですらトラップと化してきている為、気が抜けない現状だ。
山川、良い奴だったんだが……この前子供が産まれたと言っていたので、拾得物に目が眩んでしまったのだろう。
確かにミスリルの塊でも発掘できれば新築住宅のローンを一気に払いきり数年は暮らせるだけの一時手当が入るし、オリハルコンだ未知のレアメタルであれば家族が一生遊んで暮らせるだけの夢が手に入る。
山川が飛びついてしまったのも無理もない、きっと俺でも飛びついたと思う。
さらば山川、フォーエバー。
俺はいつも呑み会になれば裸になって暴れまくった君の事を忘れないと思う。
と、心の中で合掌する。
遺された家族にも持ち帰られたレアメタルの一部と見舞金が出るので、残額ローンを払わなくてすむ様になった持ち家と合わせれば10年位は働かなくても暮らしていけるはずだ。
トラップと言えば、サブカルに出てくる伝説の剣宜しく台座に刺さっている物まであり、ご丁寧に「選ばれしものが手に入れられるだろう」とか台座にダンジョン語で掘られている物だから、一時期抜こうとしてパーティごと下の階へ転落する事故が尽きなかった。
あれはエグい。
事故事例を知らなかったら嬉々として俺も抜く。
ただ最近では下の階への直通ルートとしても確立しており、急ぐ際は転落防止器具を用いて下の階へと降りたりもしているので、人間は逞しい物だなと思ったり。
と、拾得物とトラップに思いを馳せていたら全体朝礼は終了した様だ。
続いて各部に分かれての個別朝礼へと移る。
え?朝礼長くね?とか言わない。
現場が動くときは元請の責任で色々と面倒なことをしないといけないんですよ?
もっと簡素にならないもんですかねえ?と愚痴りつつ弊社弊部株式会社栄光商事ダンジョン進行部へと戻りスーツ以外の装備を着用する。
4人一組の班ごとに分かれて、対面した相手と相互に装備チェックを行う。
今日の相手は小野Dか。
ダ芽田班長じゃなくて良かった。
アイツホントどうでも良い所ばかり五月蠅いからな、一言言わなければ死んでしまうんだろうか。
「各班各自相対し装備点検を始めよ!」
「安全靴は良いか!」「「「「安全靴 ヨシ!」」」
「スーツの下は良いか!」「「「「下 ヨシ!」」」」
「Yシャツは良いか!」「「「「Yシャツ ヨシ!」」」」
「スーツの上は良いか!」「「「「上 ヨシ!」」」」
「C.A.R.U.S.のチェックを始める」
「充電は良いか」「「「「充電 ヨシ!」」」」
「C.A.R.U.S.起動、結果良好か!」「「「「オールグリーン ヨシ!」」」」
「各班ごとに分かれて各自で個別装備点検を始めよ」「「「「はい!!!!」」」」
個別朝礼担当の掛け声に合わせて一つずつ前の人の装備を互いに確認していく。
以降は各担当担当で装備が違う為、号令を掛けずに確認していく。
「来佐田さん、宜しくお願いします!」「あいよー」
と、小野Dが元気に声を掛けてくる。
小野大輔23歳、入社2年目の新人君で通称小野D中肉中背。
年下から年上まで万遍なく好かれるタイプ、勢いが眩しい。
これが若さか、眩しいな。ピッカピカだなー。
遥か遠き過去。
「来佐田さん、また何かバカなこと考えてますね……。芽田班長にドヤされるっすよ?」
「む……?なぜ解った?」
小野Dにそう突っ込まれて思わずそう返すが
「めっちゃ顔に出てますしいつもの事ですし……。それに30とかそんなに歳変わらないじゃないっすか」
「馬鹿野郎!20代と30代にはそう違いがなく見えて確実に老いさんが手ぐすねひいてやってきてるんだよ。来佐田敬太(30)、老いの曲がり角をクイックターンした自覚のある絶賛彼女募集中をなめんなよ……?」
「はいはい、おっさんおっさん。と言うか彼女募集とか関係なくないっすか」
「黙れこのリア充。結婚秒読みとか一人寂しく枕を濡らす独身男性に喧嘩を売りやがって。そのフラグいつかきっちり回収してやるからな」
「はいはい、ぼっちお疲れ様です。 と言うか、特殊弾頭弾こんなに持ってくんすか?良く経理課の稟議下りましたね」
「ああ、この前硬いのがモンスターハウス化した事があったからな。 何とか上に掛け合ってねじ込んどいた。 後は装備課とのコネで、な」
「うっわ、なんてゲスい顔。 っと、来佐田さんのサブマシンガン・小剣・ハンドガン・ナイフオッケーっす」
「こっちも小野Dの大剣・小盾・ハンドガン・ナイフオッケーだ。 しっかし、いつ見ても違和感が仕事し過ぎるな……良くそんな身長の半分以上ある大剣ぶん回せるもんだ」
「その辺はスキル様々っすね。 自分も剣術部で上級剣スキルが開花しなかったら使ってないと思うっす」
「その辺り運次第とは言え、ラッキーだったなこのリア充。 フラグ様仕事しろ」
「はいはい、建築士は廃業しましたよ……っと?」
いつもの様に来佐田と小野Dがバカをやっていた所で個別朝礼担当より再び声が掛かる。
「傾注! これより部長より周知があります!」
個別朝礼担当に代わって前に出たのは弊ダンジョン進行部の部長だ、今日も朝日が眩しい。
「お早う諸君。 我が社が上手くやっていけているのは諸君らのおかげである。 山川の事は残念だったが、現場には危険が満ちている。より一層現場では注意していただき、不安に感じたら無理な作業をせず安全を確保した上での作業を願いたい」
「採集・採掘・調査・討伐・保守等々種々の仕事はあるが、安全第一なのは変わらない。 安全には十分に留意した上で今日も一日営業が取ってきた仕事をこなして貰いより大きな利益を目指そう!」
「では構えて!!」「「「「ヨシ!」」」」
「ゼロ災でいこう、ヨシ!!!」「「「「ゼロ災でいこう! ヨシ!」」」」
「ご安全に!」
部長の御来光を拝みつつ個別朝礼も終了し、長かった朝礼がやっと終わる……と思いきや、今度は班ごとのミーティングである。
もういいd
「どうした来佐田、いつも死んだ魚の様な目をしているが今日はより一層酷いな」
「いえいえ芽田班長、今日の仕事の面倒さに頭痛が痛かっただけです」
「ついにくたばるのか? 死ぬなら労災にならんところで死んでくれ。 俺には迷惑を掛けるんじゃないぞ」
「重々承知しておりますよ、憎まれっ子世に憚ると言いますし芽田班長よりは長生き出来そうです」
「ふんっ、まぁいい。 それで今日だがいつものC.A.R.U.S.NWの保守と通りすがりの討伐、及び時間があれば依頼物の採取・採掘となる。 山川の件もあるので、トラップの確認は厳に行う事!」
「芽田班長、今日の現場は【みなみとらい】B20で良かったでしょうか」
そうダ芽田の後にインサートしてきたのはもう一人の班員、三月君だ。
年は確か27だったか?バックアップを得意とする期待のホープであるが、くーるがいの為私生活が不明である。
高身長のイケメンだからきっととっかえひっかえなんだろうな、羨ましい。
いつかフレンドリーファイアしてやる。
この若い二人に俺と、クソ(32)を加えたのがうちの班である
主な作業は前述のとおり。
と、考えているときに聞こえてきたクソの声に意識が向く。
「ああ、横浜002番通称【みなとみらい】の地下20階だ。一部で通信障害が発生している為、保守依頼が来ている」
「準備は出来ているな? では地下の転送室より、現場の転送室へ飛びB20へと行くぞ」
こうして、俺たちの長い一日が始まった。




