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幼馴染も三十三歳

声をかけられ女子生徒を見上げるとテツは思う。



――神はなんて残酷なんだろう。



胸は大きく下から見上げると女子生徒の顔を少し隠すほど、腰も引き締まり、足もよく筋肉がつき男なら一度見たらその体にしゃぶりつきたくなるよなスタイル。グラビアアイドルと言われても不思議ではない体を持つ女。



「鉄君。委員長として言わせてもらいます!! ただでさえ貴方は目立つんですから謹んで行動してください」



髪は黒髪を後ろで結ってあり黒縁メガネ。絵に描いたような委員長キャラだが……現実はあまりにも残酷な形を作ってしまう。少し離れた所で男子が笑っている、それはテツが怒られる風景ではなく委員長に向けられた笑い。



「あ……あぁ悪い、気をつけるわ」



反論しようなどとテツは考えなかった。委員長は大きな胸を揺らし指を向けてくるが性的な興奮は起きない。その理由は単純だった。



「相変わらず凄い顔だな委員長ハハ」



彼女は圧倒的顔面負け組み。腫れぼったい目に潰れた鼻、唇は大きく垂れてるように見えてしまう。テツが若い頃ならば遠くで笑っている男子のようになっていたかもしれない。しかし歳を重ね生きる辛さを経験していると悲しみが湧き上がってきた。



「あんな顔初めてみたぜ俺」



男以上に外見を見られる女と生まれてきてブスという烙印を押されるのは想像すら出来ない絶望だろう。突き抜けたブスなら諦めはつくが無駄にスタイルがいいからタチが悪い。初対面だがテツは委員長を悲しみの目で見てしまう自分も嫌になる。



「うるさいわね男子!! 静かにしなさい」



野次が聞こえたのか委員長は震える拳を握り締め言うと男子の笑いが大きくなる。



「……ふぅ」



一度目を閉じてテツは考える。別に正義の味方になるつもりはない。ただの自己満足なのはわかっている……女心なんて彼女が出来た事がないのでわからない。でも陰口を男子に叩かれ苦しんでいる委員長の苦しみはわかっているつもりだ。



「怒った顔も凄い迫力だな!! すげぇ」



男子が指を向け腹を抱えだしたのが姿を見てテツは席を立つと真っ直ぐ男子に向かう。髪は茶髪に染め上げ胸元にはアクセサリーが光る、腕を延ばし胸元を掴むとテツより小さいが腕力で体ごと持ち上げ言う。



「お前今なんて言った」



「ガッ!! んだよおっさん!!」



謝る気配もないと感じると持ち上げた男子を力任せに教室の扉に叩き付け外してしまう。廊下まで飛ばされた男子は痛みより怒りに火がつき拳を上げる。



「ハハなんだそりゃ」



素人が真似事のようにする構えに笑う。拳が飛んでくるが遅い。防御の必要もなく避けカウンターの一撃を狙う。なんの迷いもない、委員長を外見的に中傷し謝る気もない男子生徒に拳を突き刺すのに迷いなど生まれない。



「何してるんですか!!」



テツの拳を止めたのは一人の女教師の声。どこか聞き覚えのある声だと反応し振り返ると幼き頃の女の子が蘇る。



「――洋子」

「てっちゃん!!」



約三十年を飛び越えて二人は出会う。

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