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幕間5.鎧の騎士

※ジルシエーラ王太子殿下視点

 気持ちが定まったからか、残っていた焦燥感はどこかに消えていた。目の前にいる騎士は命令がないからか、静かに空中に佇んでいる。剣を構えもせず、まるで銅像のようなその様子に、やはり違和感を覚える。


(さっきから感じる既視感は何だ?)


 迷いのない、隙のない、感情の見えない動きの違和感はわかる。まるで人間に思えないからだ。それでも、戦いに癖はある。王宮騎士とは違う、少し荒々しい剣術は、この人間がこれまで実践等で培って身に着けた証拠だろう。となれば、彼もやはり人間で、意志を持っているはず。だけど、それを微塵も感じられない。忠実に命令を遂行する……そう、まるで魔道具のような。


(そういえば……)


 視線を男の首元に動かす。体を覆う鎧の首元には大きな黒い宝石が嵌め込まれていた。けれど、他に装飾のない無骨な鎧に宝石は不釣り合いだ。彫刻もなれば外套もない。となれば、この鎧はイシトエ国の儀礼的な甲冑ではないはずだ。つまりは、戦闘用の鎧なのだろうけど、そんなものに一つだけ装飾を付ける意味がない。


(ならば、残るは宝石ではなく、魔石か)


 しかし、魔石で黒い色は見たことがない。基本的に、魔石の色は込められた魔力の色が透けて出るものだ。テオなら緑色、ティーナなら空色、僕なら青緑のように。様々な魔石を見てきたけど、黒い魔石なんて存在しなかった。だからこそ、あれを宝石だと思っていた。

 けれど、あれが魔道具なら、中身はただの魔力ではないということだろう。


(胸糞悪い何かな気がする。黒いものってなんだ?)


 考えながらも剣を構えた。思案するのはいいが、この場を長引かせてもいいことはない。いや、長引かせた方が後々有利になるのは僕達の方だが、僕としてはこの鎧の騎士とは自分の力だけで決着をつけたかった。


「なんだぁ? 逃げねーのかよ。どーせ敵いもしねーのに」


「……ジル、シエーラ様」


 心配そうに僕を見つめるリリーにどうにか微笑んだ。僕の決断に、彼女は心配するだけで悲しんではいない。それどころか、複雑そうに瞳を揺らしながらも、喜びを滲ませているように思えた。それだけで、僕のこの決断が間違いじゃないことがわかる。

 そうだ、僕は勇者で、誰が敵になろうとも、唯一リリーの味方をしなければいけなかったんだ。それなのに、一度悩んでしまった。だけど、もう迷わない。


「迎え討て!」


 イシトエ国王の命令を受け、僕の突撃に剣を合わせる鎧の騎士。何合か討ち合えば、やはりふとした動きが何かと重なって見えるように思えた。


(そういえば、動きだけじゃないな、さっき他のことでも既視感を覚えた気が……)


 何だったか、と思考を巡らせながらまた剣を合わせる。力に差があるからあまり押し合いにならないようにするが、そもそも今は空中戦。踏ん張るのではなく、風魔法で背中を押すような形になるから、少しくらいは無茶が通る。だから、引っかかっている異物を少しでも取り除こうと思考を巡らせる時間を稼ぐため、何度か剣を合わせたまま視線を巡らせた。そうして思い出したのは、相手の目だった。

 そうだ、目だ。この深い青の瞳を僕はよく知っている。


「……まさか!」


 そんなはずはない、と一度は否定する。けれど、有り得ないことでもないと、それも否定した。もし、本当にそうならば、相手の剣筋に覚えがあるのも理解できる。ずっと昔、自分が幼い頃にその剣筋を目にしていたし、何よりもその動きは自分の親友(・・)にも似通ったものがあるからだ。となれば、唯一理解できないのは、どうして彼が敵として目の前にいるのか、だ。


(理由があるのなら、魔石、か)


 あれが本当に魔石なら、魔道具的な作用があると考える。それが鎧の方なのか、魔石自身なのかはわからないが。だけど、どちらにしてもやることは決まった。魔道具の心臓は魔石だ。それならば、魔石を壊せばいい。


(たとえ勝てない相手でも、魔石を壊すだけならやりようはある!)


 未だ一撃も与えられていないけれど、隙を作ることはできるのだと、先程の戦闘で理解できている。それなら、まだ活路はあるはずだ。

 細かく剣を振りながらまた考える。希望は見えてきたけれど、受けた傷が動く度に痛むのは問題だ。血も地味に流れているのか、汗が滲んでくる。あまり時間はない。


(剣の技量では、勝てない。魔法での隙も一度試したことで望み薄……か)


 それなら、一か八か。

 もう一度相手に鍔迫り合いを仕掛ける。迎え討て、という言葉通りなのか、それとも相手の気質なのかはわからないが、鎧の騎士は積極的に僕を討ちに出ようとはしない。基本的に受け身だ。そのお蔭でどうにか戦闘が続いている。この動きが変わる前にどうにか揺さぶりをかける必要がある。


「――――」


 近づいた相手に、小声で囁きかける。もし本当に僕の予想通りならば、反応があるかもしれないと一縷の望みをかけて。


「――――ッ、」


 そうして、ほんの僅かに瞳を揺らした相手は、声にならない言葉を漏らした。同時に、胸元にある魔石も僅かに色が揺らいだ気がした。どんな効果があるのか。予想するならば精神汚染の系統が考えられる。彼がイシトエ国につく理由がないのがその証拠だ。つまり、この戦闘自体、彼の意志ではない。


「どうした、さっさとケリをつけろ!」


 イシトエ国王の声に魔石の色合いが強くなる。一瞬苦しそうに呻いた相手は、また剣を構えた。更に隙が無くなったように思えて、僅かに苛立ちが募るがまだ手はある。

 自分の名前だけであの反応を示したのなら、それ以外ではもっと揺らぐはずだ。


「剣を引け! 貴方がこんなことをしていると知ったら、貴方の妻や息子はどう思う! 正気に戻れ! 疾風のセドリック!」


「……ッ、つま? むす、こ?」


「そうだ! 貴方がいなくなってどれほど哀しみ、苦しんだか! 生きているなら、さっさと戻るべきだ! テオドールもロッテも、ずっとお前を待っている!」


 声を張り上げて叱責すれば、彼は苦しむように声を上げる。動揺で剣を川に落とし、頭が痛いのか両手で兜越しに押さえた。その隙を見逃したりはしない。一気に距離を詰めて、剣先を黒く明滅している魔石に突き立てた。


「おい! 何をしている! さっさとそいつを――っ! お前、今、何を!」


 ようやく異変に気付いたのか、イシトエ国王は震える声で僕達を凝視していた。けれど、何もできないはずだ。既に魔石は壊した。壊れた魔石からは黒い靄のようなものが吹き出て、周囲に霧散した。結果、鎧の騎士は絶叫し魔法制御も失った。川に真っ逆さまに落ちる、というところでどうにか受け止め、ゆっくりとリリーがいる方の川淵に降り立った。


「き、きさま、よくも、オレ様の駒を!」


「駒……か。本当にイシトエ国っていうのは技術だけは素晴らしいのに碌な物を作らないな。こんな人を操るような魔道具なんか作って。これは禁忌とされる物だ」


「ハッ、何が禁忌だ! そんなもの、愚かで馬鹿な人間が勝手に神の意志だと嘯いて広めただけのものだろうが! 優秀な駒に余計な感情などいらんのだ! そんなものがあるから、戦争で負ける。傷ついても仲間が殺されても揺るがぬ心で剣だけ振っていれば、この国はどの国にも負けるはずがない! そんなこともわからないお前が王太子なんて笑わせっぶふぉ――!」


 耳障りな声で不快な台詞を躊躇いなく吐き出す男に我慢ができなかった。もう自分を護る騎士が近くにいないことも忘れているなんて、なんて愚かな。こんな男の罠に嵌まった自分が情けなくなる。


「これほど、今の立場が王子でないことが嬉しいことはないな」


 リリーを自分の手で助けられるし、不快な相手の立場なんぞ考えずに殴れるのだから。だけど、王太子としても、罰を与えることもできる。まあ、それは、この場が収まってからだが。


「き、きさま、調子に、のりやがって!」


「それはこちらの台詞だ。粋がっている割にお前の切り札がこちらの騎士なんだからな。つまり、お前のところの国ではこれほどの戦力がないという証拠だろう? どれほどお前の国が弱く、そしてお前自身が愚かで、敬われていないか、自分で曝け出したようなものだ。無様だな、イシトエ国王」


 たった一発殴っただけで吹き飛んで木にぶつかったイシトエ国王はその場で尻をついたまま動かない。いいや、動けない。僕の怒りに足が竦んだのか、痛みで痺れているのか。どちらにしても情けないことには変わりない。騎士がいなければ戦えない最弱の王が、騎士を敬うこともなくただ愚弄し、心を不要と言うなんて愚の骨頂だ。


「今、我がセントラケルディナ国と、お前のイシトエ国の国力の差はかなり開いている。だからこそ、お前は聖女を奪い、僕を害することでその差を縮めようとしたんだろう。だけど、そんな安易な考えだから、差が開く一方なんだ」


「なん、だとぉ!」


 殴られた頬を押さえながら血走った眼で睨みつけてくるイシトエ国王から視線を外して、僕はリリーのところへと歩み寄る。首に繋がっているその忌まわしき魔道具に触れて外した。そして、その魔道具を地面に落とし、剣で跡形もなく刻む。


「ジルシエーラ様……」


「遅くなって、ごめん」


 ボロボロになった彼女の頭を撫でれば、彼女は堰を切ったように涙を零した。堪らず抱き寄せて、彼女の顔を自分の胸に押し付ける。


「クソガキがぁあああ! ふざけんな、ふざけんな、ふざけんなああ!」


「うるさい、喚くことしかできないのか。イシトエ国の王族は」


「何だと!」


「普段からそんな姿をおそらく臣下にも見せているのだろう? だから、お前達は国民から支持されないんだ。騎士からの忠誠も得られず、臣下から見放され、民からは恐れられる。そんな王がいる国が、このまま存続できるわけない。伯父上も言っていたぞ。あの国の命は、おそらくそう長くはない、とな」


 以前だったら、戦力にそれほど差はなかった。以前、イシトエ国と争っていた時期、このセントラケルディナ国の王位についていたのは、僕の祖父だったからだ。祖父はイシトエと同じ、戦争によっての利益しか見ていなかった。ただひたすらに戦力をかき集め、貧困していく民を顧みずに戦争に明け暮れていた。だから、周辺国とは比べ物にならないほど国土が広い我が国が、こんな国と肩を並べていたのだ。それほどに酷い有様だった。

 けれど、もうあれから三十年以上の時間が過ぎた。まだまだ、立て直すべき場所は多くあれど、伯父上が土台を作り直し、父上が発展させたこの国が、自国の状況を見定められないような奴が頂点にいるイシトエ国に負けるはずがない。


「き、きさ、きさまあ!」


「喚くだけの元気があるなら、今ここで終わりにしようか? お前の国は、トップが殺されたらどうするのだろうな?」


 わざと剣の音を立てて歩み寄る。リリーの傍にいたかったが、先にこの男の始末をしなければ決着はつかない。鈍く光る僕の剣に、見るからに顔色を悪くさせたイシトエ国王は情けなくとも後退り始める。けれど、そもそも木にぶつかってその場に座り込んでいたのだから、それ以上後ろに行くことは叶わない。逃げ道がないことにようやく気付いたようだ。

 こんな後先も考えない男が王についているなんて、イシトエ国は憐れとしか言いようがない。


「く、来るな、来るんじゃねー!」


「無駄だ」


「やめろ、オレ様は、こ、国王だぞ、お前より、地位が高い、お、おおお王だ!」


「僕には関係ない。そもそも、敵国だからお前はここに来て、仕向けてきたんだ。正式な戦争ですならない。となれば、この戦はもはや戦争というマナーの則りもない。相手がこちらを襲ってきた以上、僕達は返り討ちする権利がある。その相手がたとえ一国の王であってもな」


 そう言って剣を構え、躊躇いなくイシトエ国王に向けて突き刺した。情けない悲鳴を上げたイシトエ国王は、そのままフッと意識を失い倒れ込んだ。剣は、後ろの木の幹に刺しただけなのに、だ。何とも情けない。これほど弱いのによくこんな場所まで足を運んだな。それほど、今回の策は自信があったんだろう。


「まあ、疾風のセドリックがいたんだ。自信があるのもおかしくないな」


「殿下! ご無事ですか!?」


 一息つけば、背後からかかる声に振り返る。いつの間にか合流したのか、森の外で待機していたデートリア家の騎士がイシトエ国の騎士を捕縛し終わっていた。どうやらそれなりに数は潜んでいたようで、彼等も応戦しながらここまでたどり着いたようだ。国境沿いに潜んでいたとしても、的確に僕達が来る場所を読むのは不可能だったのだろう。だから、待機している騎士が点々と存在し、襲撃を受けたタイミングで徐々に集まってきていたようだ。エルダ達がこの場にいた騎士を全て倒してはいたが、更に増えていたことには気づかなかった。


「ああ、無事だ。リリーも、僕も」


 それにしても、百近い騎士を導入していたにも関わらず、イシトエ国王の傍に鎧の騎士しか配置しなかったのは何故なのか。愚か者の考えは到底理解できないなと息をつく。


「ジルシエーラ様!」


「リリー、無理をするな。まだふらついてるじゃないか」


 魔道具の影響か、それともイシトエ国王に足蹴にされていたせいか、まだ体に力が入らない様子のリリーは、覚束ない足取りで僕に近寄ってくる。抱き留めるようにして彼女を支えるが、僕の言葉に返事をすることなく、そっと小さな手を僕の左腕に近づけた。


「治療魔法を掛けます」


「……いや、もし大丈夫そうならここの浄化を済ませよう。そうすれば、僕の怪我も必然的に治る。浄化以外に魔力を消費するのはなるべく避けよう」


「そう、ですね。結果治せるなら魔法でも浄化でもいいですし。わかりました! でも、その……このまま、支えてもらってもいいですか?」


「ああ、もちろん」


 少し恥ずかしそうに顔を伏せながら懇願され、僕は笑みを零す。控えめに、けれど彼女がはっきりと甘えてくれたことが嬉しかった。それに、僕自身の力で彼女を護れた、その事実に胸が躍る。

 はにかんで頷いてくれた彼女は、静かに祈るように手を組む。そしてもう一度、澄み切ったあの歌声を聖地に響かせる。その力は、先程よりも強く、そして圧倒的な速さで浸透した。そうして、すっかり綺麗になった聖地に、お互いに顔を見合わせて笑い、安堵したのだった。






「ところで、この鎧の騎士は一体誰だったんですか?」


「疾風のセドリック、と叫んでいたな?」


「セドリックって、どっかで聞いたわね?」


 エリクやアルバート達と合流を果たし、未だに意識が戻らない鎧の騎士を見て、皆が首を捻らせた。このメンバーでセドリックのことを知っているのはそれほどいない。けれど、騎士だからか、その名前に心当たりがある双子の二人は首を傾げた。


「セドリックさんって、もしかして!」


「疾風? それは十年以上前、王宮に勤めていた騎士ではありませんでしたか? 殿下」


 ハッとした様子で顔を上げたリリーと、同じように聞き覚えがあったアルバートは目を丸くした。二人の驚き方は違うだろう。片や知人の親戚故の、片や本人の知名度故の驚きだ。


「ああ。まさかこんな場所で、死んだと思われていた人物と会うとは思わなかったな。疾風のセドリックは、十年以上前に第五騎士団に所属していた騎士だ。彼は近くの森を巡回中に魔物に襲われ殉職したという報告を受けている。しかし、この様子では違うんだろうな。そして、彼はテオドールの父親だ」


「「え!」」


「つまり、僕とは従兄にあたる人物になるな」


 死んだはずの騎士が実は生きていて、しかも敵国の手に渡り、操り人形として使われていた。こんなこと誰にだって想像できない。それに、彼を操るために使用されていた魔道具がどのような作用があるものなのかもちゃんとわかっていない。魔石を壊したことで彼は意識を失ったが、目覚めた時にどうなっているのか……。彼自身に影響がないことを祈るしかないが。


「は、はははははは! お前らは、勝った気でいるんだろう! だけどな、オレ様が聖女を得られればいいなんて、甘っちょろい考えをしていると思ってるのか! おめでたい奴だな!」


 他の騎士と同じように捕縛されて身動き取れないイシトエ国王は、いつの間にか意識を取り戻していたのか唐突に笑い始める。聞いてもいないのに地面に転がったまま喚き出すその姿に呆れを通り越して感心してしまった。


「いいか! オレ様はちゃーんとこの国を手に入れるために布石をばら撒いてたんだ! そこにいる騎士だってその一つだ! あのにっくきゼオンを絶望させるために、オレ様の駒にしたんだからな!」


「……どういうことだ? セドリックがお前の騎士になったのは、偶然じゃないのか?」


「ばーかが! そんな偶然あるわけねーだろ! 本当に甘ちゃんで凡庸だな! ゼオンもあれほど近くにいたのに自分の息子に気付かねーんだ、本当に笑っちまうぜ! そして、ゼオンの孫であるテオドールってヤツも、甥であるお前も、こうして狩り獲るために動いたんだ。あの男自身を葬るためにオレ様が何もしてないと思ってんのか?」


 狂ったように笑いながら饒舌に語り始める男の姿は異様だった。もともとおかしい奴ではあったが、自分が捕まったことで完全に狂ってしまったのかもしれない。


「伯父上に……いいや、王都に何かしたんだな?」


「お前、オレ様たちが瘴気に満ちたここにどうして潜伏できたのか、わかるか?」


「……」


「オレ様はなあ、瘴気についてずーーーーっと調べてたんだ。調べて調べて、そうして見つけたんだ、瘴気を利用する方法をな。そうしてできた一つが、その男を操る魔道具だ。つまりわかるか? オレ様は、瘴気を取り込み、そして好きな場所に放つことが可能にした、ってわけだ」


 一瞬、何を言っているのか理解できなかった。けれど、徐々にその意味を飲み込んだ。

 瘴気を自在に取り込み、そして取り出すことができる。つまり、自分の周囲にある瘴気だけ魔石に取り込むことが可能で、この聖地に潜むことができた。そして、瘴気を取り込んだ魔石を、王都周辺に設置し、瘴気を放った、そう言いたいのだと。

 瘴気自身、僅かに体調に影響を及ぼすが、それほど脅威ではない。けれど、瘴気があるということは、そこから魔物が発生するということだ。しかも、今は魔王の影響で瘴気が活発化している。多少の瘴気であろうと、魔物が生まれやすい環境になっているはずだ。


 つまり、王都は魔物の襲撃を受けている可能性がある。


「まさか……」


 その考えに至った瞬間、通信魔道具を取り出した。そこには一度通信が入ったと知らせてくれる黄色の点滅信号が出ていた。焦る思いで僕は向こうの魔道具に通信を繋げた。

 どうか何事もないように、その願いを込めて繋がらない魔道具を見つめた。



 

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