幕間6.道標も楽じゃない
※テオドール視点
それからのオレの生活は思ったよりも騒々しい日々だった。なるべく勉強が遅れないように授業は真剣に取り組み、技術の授業ではロイドと思い切り剣を合わせた。貴族の嗜みとして幼い頃から剣を振るっていたらしいロイドの剣は、ディーノ先輩とは比べものにならないくらい重く、鋭かった。正直、これで武術大会で勝ち上がってこなかったのが疑問なくらいだ。
「俺は魔法が苦手なんだ」
「え、でも、魔力はかなりあるよな?」
言葉数が少ない彼の性格は一言で言うなら不器用、といったところだろうか。一撃はとてつもなく重いし、振りも遅くはないはずなのに、攻撃の仕方がどうもパターン化されているように思えた。聞けば習った時の型に偏った攻撃になりがちらしい。だから、相手にすぐに攻撃パターンを読まれて追い込まれてしまう。
それなら魔法で乱せばいいのでは? そう問えばさっきの言葉だ。ディーノ先輩もそういうタイプだから変とは思わない。けど、ロイドが魔法を使う姿を見たことがあるから、単純に魔力が少ないわけじゃないってオレは知ってる。
つまり、ロイドは自分で考えて戦うこと自体が苦手なのだ。
「ふぅん、なるほど。じゃあ、ちょっと友達に相談してみるよ」
「……いいのか?」
「オレはそれなりに扱えるようになったけど、それでも苦手意識はあるんだ。だから、魔法については友達に聞くのが一番だからさ。近々手紙が届く予定だから聞いてみる。そしたら一緒に特訓しようぜ」
ロイドの魔法属性は土だ。ディーノ先輩と同じだけど、使おうと思えば教室一面をトゲだらけの地面にできるほどの魔力量を持っている。それなら、戦い方さえわかればやりようだってあるはずだ。
手紙は苦手だけど、ティナと話す方法は今これしかないからそれなりの頻度で送っている。あいつも元気にやっているようで新しい街や村に着く度にそこに売ってる絵葉書とかで連絡をくれる。
返事は苦手だけど、あいつの言葉を見るのは好きだからズボラなオレでもきちんと手紙やハガキをしまっている。こんなこと、気恥ずかしいから言わねーけど。
そうして早速あいつに手紙を送ってたったの一日。もう返事がきてた。どうやらちょうど街にいたみたいで手紙が書ける環境だったらしい。
「自分でパターン化?」
「そう。まあ、最初は想像しなきゃなんねーけど、こういう動きをする魔法っていうのをいくつか考えて、その動きに自分で名前をつけて覚えておくんだって。剣の型と一緒だな。名前をつけることで、体で覚えておけるし、イメージして魔力操作するまでのタイムロスを縮められるんじゃないかって」
「なるほど……」
「それに、味方にそれを伝えておくことで、味方から指示を受けられるようにもなって効率もいいんじゃないかってさ。対人戦においてパターン化は読まれやすくて欠点にもなりがちだけど、魔物を想定するなら悪い方法じゃないとオレも思うぜ。それに、味方にも把握させるなら、オレも一緒にどんなパターンが作れるか考えられるし」
ロイドは自分で考えるのが苦手なタイプだ。だから想像力に寄って動きや威力が変わる魔法が苦手で、だから剣であっても臨機応変ができない。型にハマった窮屈な剣技になってしまうのも仕方ない。
それなら、自分で型を作るしかない。と、ティナの手紙にあってなるほどなと納得した。
会ってもいないロイドの性格を考慮した戦闘スタイルをあっさりと発案してしまうティナに、やっぱり頭が上がりそうにないな。
「パターンか……手伝って、くれるのか?」
「もちろん。そのためのバディだろ?」
笑って頷けば、ロイドは僅かに目を細めた。ほとんど表情が変わらないヤツだけど、きっと今のは笑ったんだなと、些細な変化に気づけてちょっと嬉しくなった。
迫りくる風の刃に身を捩ってスレスレでかわす。それで安心はできない。追加で放たれた魔法を順にかわすことに精一杯で、全然距離を縮められない。風で押し返すことも考えたけど、同種の魔法は魔力差があっても互いに消耗が激しいし、なかなか決着もつかないから避けるべきだ。となればどうするかと悩んだその時だった。
「……テオ! 壁!」
「おう! よろしく!」
後ろから駆けてきたロイドにこの場を託せば、小さく頷いてオレの隣で手をついた。同時に地面から迫り上がるように身長の三倍はある壁が形成される。どれだけ身軽でもこれだけの高さをひとっ飛びできる人間はそうはいないだろう。
だけど、オレには風魔法がある。しかも、この飛行魔法だけは他のどんなヤツにも負けない自信があった。瞬きする時間で飛行魔法を展開させて壁を越える。途端、観客席から歓声があがった気がするけど、今は戦闘に集中だ。
「たまには魔法で決着つけるのもいいな」
さっきまで防戦一方だったからやれなかったけど、今ならオレが先に仕掛けられる。飛んだ状態のまま、オレは風と炎を同時に使った。簡単にはかき消せないように、消されてもダメージを残せるように。風の刃に炎を乗せて、一気に相手に向かって撃ち放った。
熱風が観客席を襲っているようで、かなりの人が顔を庇うようにして両手を突き出す。オレは飛行魔法が体全体を守ってくれているから何ともないけど、それなりに威力のある火力になっていたみたいだ。
(そういえば、普通に炎を出すよりも、風に乗せた方がいつもの倍以上の威力になってた気がするな)
単純に火魔法の魔力を倍にするよりも、風と炎を同時に使った方が倍にも満たない魔力で同じ威力の炎ができる。どうしてだか、そんなこと今まで考えたことはなかった。どんな風にしても、魔力が足りなくなるってことにはならなかったから、考えることもなく、ただただ利便性を考えて複合魔法を使っていたしな。それに、授業でそんな話は聞いたこともないし。
(今度ティナにでも聞いてみるかな)
そんなことをのんびりと考えている間に、今年の武術大会第一戦でのオレ達の勝利の審判が下った。
自分達の出番じゃない時は観客に回る。普通なら同じブロックのトーナメントを見て、自分の対戦相手を探るべき時間だけど、今回一戦目が最初だったこともありすぐに相手バディの戦いも終わってしまった。だから、この際気になるバディの戦いを見ようということになり、もう一つのブロックにいる王子と魔道具が指定した双子のバディの戦いを見ることになった。
「ちょっと! 思った以上に近くを通ったんだけど!」
「僕がヘマするとでも?」
「うっさいわね! 三属性持ちだからっていい気になってんじゃないわよ! あたしに宿るはずだった属性一個取ったクセに!」
「まだそんなこと言ってるのか。ほら、来てるぞ。構えろ」
「フン! こんななよなよ攻撃、あたしが受けると思ってるの? バカにして!」
魔道具が選んだバディは双子。双子だからこそ相性もよく、バディとして選ばれたんだろう。そう思っていたけど、予想以上に仲の悪い姿に唖然とした。
まるで燃えてるように短い赤い髪を振り乱した女生徒は細い体には似合わない剣をしっかりと握り、踊るように振り回す。彼女の動きに合わせて演奏するかのように風魔法を打ち込む男生徒は同じ赤い髪を頸部分で結えて腰まで伸ばしている。
剣を握る女性と、離れたところから魔法を繰り出す男性。髪が短い女性と、長い男性。
差別する気はないが、イメージとしては反対だなと思った。そんなこと考えている間に勝敗は決し、試合が終わってしまった。
口喧嘩してても戦闘は安定している。かなりの強敵なのは確かだが、息が合ってるかは疑問だ。仲が悪いのも欠点だし。それでも確かあの双子は辺境伯の子供。土地柄的に戦闘経験が他の生徒よりもあるのかもしれない。
「次は殿下だな」
「ああ。そういえば殿下って魔法属性何だ?」
「噂が本当なら――テオと同じだ」
てことは、火と風ってことか。オレはその中でも風が強い適性持ってるけど、殿下はどっちも同等なのかな?
適性が弱い人にとっては、オレの風と火の威力の違いなんてほとんどないように思うらしいけど、多少でも適性に高低差があると、扱う者にとっては結構変わる。
もしも、火と風の適性の高さが逆だったら、飛行魔法を使えるのはもう半年ほど遅かったかもしれない。それくらい魔法を操作するのに勝手が違う。同じ威力の魔法を繰り出しても消耗する魔力量も変わってくる。疲労感にも差が出る。
当然、苦手意識が芽生えて、よくないって思いつつも結局は利便性もあって風ばかり使ってしまう。
「始まるぞ」
気づけば次の試合が始まっていた。殿下はこの学校内で殿下の次に地位の高い侯爵家の息子とバディを組んでいる。おそらく最初から決めてあったに違いない。こういうのを見ると、権力者は自由にできなくて大変だなって思う。
まあ、でも、かなりの実力者ではあるようで、魔法も剣技も息を吸うように繰り出していた。最高学年だけはあるな。
確か、ディーノ先輩も前にすごいって言ってた人だった気がする。前回の時、オレ達とは別ブロックだったから当たることはなかったけど。
先輩と殿下の連携も上手く取れていた。もしかしたら以前から一緒に訓練をしていたのかもしれない。殿下には同年代の、今後も忠臣となり得る高位貴族が必要なわけだし、おかしい話ではないもんな。
そんなことを考えてる間に、先輩の攻撃の合間に殿下は魔法を繰り出していた。火も風も一見すると同じ回数使っているように見えるけど、威力も操作も火の方が若干上回ってるように思えた。
それに、いざという時に頼るのも使い勝手の良い風ではなく火だ。となれば、殿下の適性は火が強いのだろう。
オレと似ているようで、少し違う。
「火と風の打ち合いなら、どっちが強いんだろうか……」
火が来ても風で打ち消す。なんて、単純な差し引きで済めばいいけど、そうとは限らない。風の流れに逆らわず、火の渦ができて、熱が襲ってくる可能性もある。魔法勝負に持ち込むなら慎重にいかなきゃならないな。
そうして、オレ達も殿下達も互いに順当に勝ち進んでいった。ちなみに、あの双子バディは、二回戦目に殿下達と当たって負けていた。やっぱり仲が悪いのは戦力も半減になるんだな。
オレの方はと言えば、ゲイルとの対戦があったけど、今回も楽々オレが勝たせてもらった。
あ、いや、見栄張ったな。楽ではなかったや。当分やりたくないほど疲れる打ち合いした。めっちゃくそ疲れた。もうやだ、あいつ。魔法も使えと言ったのはオレだけど、何で剣合わせてる時に自分もろとも水浸しにしてるんだよ。もうちょい考えて使えよ魔法。結果、お互いびちょびちょの状態で剣打ち合わせてただけじゃねーか。
なんて、色々あったけど、なんと今回は決勝戦までやってきた。相手はもちろん、殿下のペアだ。
「相手ロイドより高位の貴族だけど大丈夫か?」
ロイドはタッサ伯爵の嫡男だ。いくら学校の行事とは言え、人によってはやりにくさを感じるだろう。そう思って念のために問いかけたけど、ロイドは何でもないとばかりにさらっとしてた。
「……大丈夫だ、俺は考えるのが苦手だ」
「それは、大丈夫か?」
ロイドは、頭は悪くないはずなのに、たまによくわからねーな。
「殿下はオレが相手していいのか?」
「……好きにすればいい」
よっしゃ! じゃあ、やってやるぜ!
開始の合図と共に走り出す。ロイドは侯爵の先輩に向かって、オレは殿下に向かって遠慮なく剣を振る。魔法ばかり使っていたイメージだけど、剣もかなりの使い手で、正直オレより強い気がした。普通にやり合ってたら多分勝てない。
「――っ、この!」
何度も打ち合いながら、少しずつ魔法攻撃も繰り出す。やはり火属性が得意なのだろう、剣に纏わせるように火を放ちオレに向けて振ってくる時はどうしようかと思った。
だけど、その考えを真似してオレは剣に風を纏わせて受け止める。
大きく弾いて距離をあけたその瞬間、身を屈めて足を払う。だけど、それでも倒れたりなんてしない。手をついて体勢を整えようとする殿下は、けれども利き手を地面についたことで剣が封じられていることに気づいていない。
オレはその隙を逃さず、剣を振りかぶって、突き刺した。殿下の首スレスレに。
ロイドも侯爵の先輩を丁度豪快に打ち負かせていた。こうして、オレとロイドは、武術大会優勝を飾った。
試合終了の挨拶を顔を見合わせてする。その時、殿下は悔しさを微塵も感じさせない表情でオレを見つめていた。むしろ何か戸惑っているような気がする。まさかオレに負けたことが理解できないとかじゃねーよな?
「……君の剣、〝疾風のセドリック〟によく似ているな」
「――!」
思いがけない言葉に咄嗟に身を固くする。何故殿下がその名を知っているのか。何故、名前だけでなく剣の型を知っているのか。殿下と父さんの関係が気になりながらも、オレはその言葉に答えを返した。
「セドリックは、オレの父さんだ」
その時、彼がとても驚いたように目を丸くして、そして視線を一度逸らした。
小さく動いた彼の唇は、何の音も紡いではいなかった。けれども、それが〝すまない〟と呟いているように見えたのは、オレの気のせいだろうか。
ティナの道標になるために目標にしていた技術大会優勝を果たしたオレは、ようやく肩の力が抜けると安心していた。だけど、それが逆に慌ただしい日々の始まりになるなんて思いもよらなかった。
「な、な、な、何じゃこりゃ!」
週末に自宅に戻れば、まだ開店前のはずなのに店の前に行列ができていた。今までにない大繁盛ぶりに戸惑いが隠せない。何か新しい商品でも出したか? なんて思ってみるものの、そういうことをする時はいくら母さんでもオレに相談するはずだ。
それに、そうだとしてもこれは異常だ。しかも、並んでいる人ほとんどが顔も知らない人ばかりだし。
「あ! あの人がテオドール様では?」
「なるほど、確かにいい体格をしているな」
並んでいる人達から視線を向けられて、何やら妙にキラキラした目をされる。今まで向けられたこともない目だ。嬉しいなんて感情は一切湧かず、むしろ得体の知れない視線に恐怖すら感じた。
その時、店のドアが開いて中から母さんが顔を出した。
「テオ! ちょ、ちょっと来なさい!」
慌てた様子で声をかけられて嫌な予感しかしない。だけど、ここまで来て帰らないなんて選択はもちろんないから、仕方なくめちゃくちゃ視線を感じる中、店の中へと入った。
「あんた、もしかして武術大会で優勝でもしたんじゃないでしょうね?!」
「何でまるで犯罪でも犯したかのような問いかけなのか疑問だけど、してきたよ」
「嘘でしょ? 嘘って言ってよ本当にもう!」
ええー、いや、本当何でこんなオレ責められてんの? 違反したとか罪犯したとかじゃなくて、武術大会で優勝したっていう名誉を取ったんだぜ? むしろ一緒に喜んでくれる場面じゃねーの?
あんまりな言葉にしかめっ面を作れば、母さんはようやく落ち着いたのか、深い深い溜め息をついて店のテーブルに突っ伏した。
「なあ、そんなにいけないことだったのか?」
「……いいえ、そうじゃないわ。ごめん、ちょっと取り乱しただけで、貴方が悪いわけじゃないのよ。せめて、この可能性を考えて教えておけばよかったわね」
開店前から疲労感を漂わせた母さんは、椅子に座る。前の椅子をオレに勧めてきたので素直に座った。けど、店の準備しなくていいのか?
「テオはセドリックがどういう経緯で王宮騎士に入隊したか知ってる?」
「いや、あんまり。魔法学校でそれなりに実技の成績がよくてスカウトされたことくらいしか」
「あのね、セドリックも貴方と同じ、武術大会で優勝したことをきっかけにスカウトされたのよ」
なるほど。確か先輩が上位に入れば準貴族扱いされるほど注目されるって言ってたな。そう考えるなら、あの大会の成績で、王宮もスカウトする人材を見つけるのも頷ける。
だけどそれとこれはどう関係あるんだ?
「国が求める実力者なら、領地を守る騎士としても欲しいと思うのが普通よ。王宮騎士は大会の成績が出ただけではスカウトはしないの。その後、簡単にでも素行調査をして、それで問題ないと思われた人にようやく声をかけるの。でも、それをただ待っていたら全部国にいい人材が奪われてしまうでしょう? だから国が手を出す前に、自分のところに取り込もうと他の貴族が押し寄せてくるのよ」
店に来るのは貴族なりの素行調査と同じことだろうと母さんは漏らす。だからこの騒ぎなのだと。
店が繁盛するのはいいが、まさかこんなことになるとは思っていなかったから母さんもオレも大混乱だ。事情は理解できたけど、理解したからと言って対応できるかどうかは別だ。
この騒ぎはどれくらい続くかわからないし、国からのスカウトもいつ動くかもわからない。というか、オレはまだ二年だからあと一年以上も猶予がある。貴族からも国からも話が来てもすぐに返事なんてできないし、するつもりもない。その辺はティナがどうするかにもよるし。
まあ、だから今一番問題なのは、この状況をどうやり過ごすかだ。
「休みはあんたが手伝ってくれるからどうにかなるとは思うけど、問題は平日よね」
「いつまで続くかわからないから、短期で融通ききそうなヤツをバイトに頼むしかなくね?」
「そうなんだけど、雇うのは慎重になるのよね……」
一人でも回せるようにと思って母さんはこの店の大きさにした。なるべく誰かに頼ることをしたくないのも理由だが、お金を扱うのとお客に接する仕事だ。ある程度信用できる人でないとお願いできない。だから、手伝いといえども、母さんが幼いティナに店の仕事をさせたのはかなりすごいことだと思う。オレは手伝いをしても接客ではなく裏方だったし。
「なあ、オレが信頼してるヤツなら多少融通してくれたりする?」
「それって、給金のこと?」
「違う違う。年齢」
お金はきちんと働きに見合った金額渡してこそだろ。
オレが何が言いたいのか勘付いたのか、母さんは苦笑を零して言うだけ言ってみなさいと口にした。だから、オレなりの考えを提案する。
「オレとティナがよく遊びに行ってた教会あるだろ? そこの子供達に当番制で働いてもらうのはどうかなって。もちろん、最低年齢は指定するし、その中でもオレが信用できるメンバーにするからさ」
「孤児の子ね。そうねぇ、その教会のシスターか神父様がちゃんと保証人になってくれるなら、話を通してもいいわよ。でも、計算がある程度できる子ね」
「そこは安心しろよ。ティナが結構率先して勉強教えてたから、十二歳くらいから上のヤツは単純な足し引きは暗算でやってみせるぜ? オレは男連中に剣教えたりしてたけど」
「あら、本当に? あんた達そんなことしてたのね。知らなかったわ」
感心したように目を丸くした後、ようやく母さんは柔らかく笑った。それから、中断していた開店準備に二人で取り掛かり、今までにない客数にどうにか対応して、朝から晩までほとんど休憩なしで働いた。幼い頃から剣の特訓していたお陰で体力あってよかったと、今日ほど思ったことはない。こんな内容で安堵するのも悲しいけども。
まあ、でも、くたびれた顔をしながらも、閉店作業していた母さんが、オレのことをしみじみ見ながら頼もしくなったわねと言ってくれたから、いっかな。
次回で幕間終わります!




