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ショートショート7月~

恥知らず

作者: たかさば
掲載日:2020/07/22

昔々の、記憶があった。

ずいぶん昔の、恥ずかしい記憶。


その記憶は、断崖絶壁に立っていた。

誇らしい記憶が、堂々としている中。


…孤独に。


断崖絶壁に、立っていた。


記憶を振り返るときがきた。

本人が、たくさんの記憶を、抱きしめていった。


…大切な、大切な、記憶たち。


本人は、恥ずかしい記憶の前に、やってきた。

恥ずかしい記憶は、断崖絶壁で、ただ、本人を見つめていた。

他の記憶と同じように、抱きしめてもらえると信じていた。


「おまえなど!!」


本人は、断崖絶壁に立つ、恥ずかしい記憶の背中を。

勢いよく、押したが、…押せなかった。


記憶は、体を、持たない。


本人は、恥ずかしい記憶をすり抜けて、断崖絶壁から新しい人生へと旅立っていった。



恥ずかしい記憶は。


お前は恥だと指摘するものがいなくなったがけの上で。

私は恥なのでしょうかと、自問しながら。


誇らしい記憶も、本人すらも、いなくなった崖の上で。

たった一人で、断崖絶壁に、立っていた。


本人は、恥を抱きしめなければならなかった。

けれど、恥を、排除しようとしてしまった。


恥を置いてきてしまった本人は、恥知らずに、なってしまった。


ずいぶん、恥を、かいているようだ。

しかし、それが恥だとは、微塵も気が付いていないようだ。


…あんなに、嫌悪した、恥だというのに。


崖の、上に、恥が、どんどん集まってきている。

崖の、上が、恥だらけになっている。


恥は、皆、自分を恥だと思っていない。

恥は、恥じることなく、崖の上にどんどん集まっていく。


いよいよ、崖の上に、恥がのりきらなくなった時。

他の、記憶が、崖の上に乗ることができなくなってしまった。


やることなすこと、すべてが、記憶に残らなくなってしまって。

頭の、中は、恥ずかしい記憶で、いっぱい。


恥とすべきことがいっぱいだというのに、恥と思っていない。


恥ずかしげもなく、恥を語る。

恥ずかしげもなく、恥を振りかざす。


自分の恥を抱きしめることもせず、なかったことにしようとした人間のなれの果て。


今日も恥知らずは、自分の恥を周りに振り撒き続ける。


恥知らずは、他人の言葉を受け入れない。

受け入れても、記憶に残らない。

崖の上は、恥でいっぱいで、ほかの記憶が入り込む隙間がない。


そろそろ恥知らずが記憶を振り返る時がやってくる。


恥しか残っていない記憶を見て、恥知らず本人は何を思うのか。


恥を恥じてただ一人崖から旅立つのか。

すべての恥を抱きしめて崖から旅立つのか。


断崖絶壁に立つ、恥ずかしい記憶が、この崖の中では一番素晴らしい記憶になっている。

断崖絶壁に立つ、恥ずかしい記憶を、誇らなければならないくらいひどい記憶があふれている。


断崖絶壁に立つ、恥ずかしい記憶は、今度こそ抱きしめてもらいたいと願っている。


誰も知らない、恥知らずの物語。

誰も知りたくない、恥知らずの物語。


早く崖に戻ったらどうなんだい。

早く恥を抱きしめてきたらどうなんだい。


恥が、お前を待ってるよ?


恥が、お前を、待ってるよ?

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― 新着の感想 ―
[一言] なるほど、そうやって恥知らずが生まれるわけですね。 私も、崖におき忘れてきたのでしょうかねぇ(笑)。 いや、でも、恥ずかしさにも色々あってですね。黒歴史も恥ずかしいですけど、厚顔無恥の恥ずか…
[良い点] グサグサグサ これは、黒歴史!! [気になる点] おう、うお、ううううう、うおうおうおうお!?!?!?!? [一言] じわじわきます
2020/07/22 20:17 退会済み
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