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ショートショート7月~

ひとりじめ

作者: たかさば
掲載日:2020/07/21

ずいぶん昔、私が長い髪をしていたころ。


「君の色素のない髪に、とてもよく、似合うよ。」


ウルトラマリンブルーの、髪飾りをもらった。

派手な装飾はないけれど、シンプルで、揺れるラピスラズリのビーズがとてもお気に入りだった。


出かけるときはいつもつけていた、お気に入りの髪飾り。


あの人は、ウルトラマリンブルーに輝くクオーツ時計を付けていた。

さりげなく、同じ色を身につけて。

ウルトラマリンを見るたびに、お互いを想ったあの頃。


今、クオーツ時計はあの頃と同じ色のまま、時を止めている。

今、髪飾りのラピスラズリの色は、ずいぶん色あせている。


…時を止めたあの人の時計と、長い時を過ごした私の髪飾り。


二つ並んで、引き出しの奥にそっとしまい込まれていた、ウルトラマリン。


ずいぶん、長い時が過ぎた。


時計が時を刻むことをやめてからずいぶん時間がたち、ラピスラズリは色を変えてしまった。

同じ色だねと笑いあっていた色が、こんなにも違う色になってしまった。


長い、長い時が過ぎた。


あの頃色素の薄かった私の髪も。

今、さらに色が抜け落ちて、ずいぶん色を失ってしまって。


色の抜け落ちたラピスラズリが似合うように、なった、気がした。


気が、したから。


久しぶりに、髪飾りをつけて、みた。

銀髪に映える、髪飾り。

色の抜けたラピスラズリのビーズが、あの頃と変わらずかわいらしく揺れる。


引き出しの奥にしまいこんでいた長い時間、このかわいらしさは一度だって。

…誰の目にもとまらずに。


久しぶりに、クオーツ時計を、手に取った。

あの頃と同じ色の盤面が、きらりと光った。


ふふ。


もう一度、時を刻んで、もらおうか。


少しいい時計屋さんに、クオーツ時計を見てもらう。

電池を入れたら、動くらしい。


時を刻み始めたクオーツ時計は、私の左手に。

色あせた髪飾りは、私の右耳の上に。


あの頃二人で付けていたクオーツ時計と髪飾りは、今、私が、独りで。


二つの宝物を独り占めできる自分が、ここにいる。

…独り占めになど、したくなかったけれど。


遺された者は、いつだって独り占めする側。

思い出も、悲しみも、独り占め。


いつか、分けあうことができる日まで、独り占めの日々が続く。


いつか、分け合うことができた時に、あの人はなんというだろうか。


そんないつかの日を思う私の左手で、クオーツ時計は正確な時を刻み続けている。

そんないつかの日を思う私の右耳の上で、髪飾りは、揺れている。


変わらない色と、変わらない思い。

変わった色と、変わった思い。


すべてを抱きしめて、私は、生きている。



すべてを抱きしめて、私は、生きていく。

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― 新着の感想 ―
[良い点] おばあちゃん(?)がアクセをつじぇる場面。しみじみ感じました。 [気になる点] ギャグでもシリアスでもたかさば調を感じますね。今更でしが [一言] >私が長い髪をしていたころ。 ↑ よく…
2020/07/22 06:09 退会済み
管理
[一言] 独り占めってそういう意味だったのですか。悲しみがひしひしと伝わってきます。残される側に立つのは辛いですね。
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