出来上がっていくモーテル
注文した木材が届き、早速一週間だけ雇った親方の下、リフォームを始めていく。親方は解体屋の手伝いの時に知り合ったフリーの作業員で、「廃校のリフォームをする時は呼んでくれ」と言ってくれた人だった。他にも廃校のリフォームをするとローカルSNSで言ったら、楽しそうだと来てくれた人たちもいる。意外と皆、興味を持ってくれているのかもしれない。
山でパトリシアを助けた後、ラジオにパトリシア本人も出て聞き始めた人たちも増えた。
まずはカビ臭い床を引き剥がすところから始めた。意外にも木材のカビはそれほどでもなかったが、断熱材はボロボロだった。
皆、防護マスクをして作業に当たる。古い建物だと有害物質や鉛ペイントなどがあるかもしれないからだ。
バールを片手に、床材を剥がし、中にある合板を剥がしていく。合板も床材も、削ってベンチや棚に使えるかもしれないので、外に専用の置き場を作っておいた。
さらにその下が垂木と断熱材があるが、ここが湿気にやられていた。すべてゴミとして回収してもらう。全て回収して焼却するのに500ドルほどかかった。
「結構掛かるな」
その日は、床をコンクリートの土台まで引き剥がし、壁紙を少し剥がすくらいで終わった。
二日目も皆、ちゃんと来てくれたが、筋肉痛で身体はバッキバキだ。前の日に頑張ったおかげで、コンクリートをきれいに掃除するだけで良かった。ひび割れも少ないが、多少傾きはあるらしい。
「これくらいなら、水平取る時に調節できるさ」
助っ人に来てくれた人たちはDIYの経験者が多いので、ありがたい。もちろん、日当は渡している。総計で、プロの見積もりの半額以下なので、やはり助けてもらってよかった。
掃除した部屋から床を作っていく。初めに湿気対策のために防湿シートを貼る。この時点で、不器用な俺は「重ねてもいいから、ちゃんと端っこまでやるようにね」と注意された。湿気の上昇を防ぐのでかなり重要らしい。
その後、XPSという断熱材を入れて、格子状の木枠をはめ込み、その間にも断熱材を入れていく。その上にOSBという合板より安い下地を貼ってから、LVPというフローリング材を貼っていく。
「一部屋だけでも大変だ」
「そうだよ。結構、金もかかっているだろ?」
「はい」
実際、一部屋2000ドル近くかかっている。床だけでも客が来てもらわないと困るレベルだ。教室は大きいので半分に区切る壁も設置。キャスに完全に任せているキッチンを合わせると、26000ドルほど。ドアやカーテンなどを買うと、30000ドルが飛んでいく。
廊下に関してはカビなければいいと、安く済ませた。何度か意識が飛んでいきそうになったが、パトリシアのマフィンやクッキーでどうにか元気を出して現世に留まった。
10日間の強行軍で俺は3キロ痩せ、各部屋すべて違う壁紙になった。キャスのこだわりなので、応えてやるのが会社の役目だ。キャスに総経費を見せてやると、目ん玉ひん剥いていたが、「かかるもんなの!」と押し切っていたので、よしとしよう。
その間に、プールや地下のコンクリートの基礎工事は終わっていた。
マイクロ水力発電機は日系企業らしく、予定日の朝9時に着工。山からポンプで引いてくるので、冬に凍結の恐れがあるらしい。小型でも火力発電所があれば温風を送り込めるが、一年目は軌道に乗るまで作らないと思っている。
「古い焼却炉があるので、どうにか温める方法を考えます」
「わかりました。このまま地下に設置するってことでいいですね?」
「お願いします」
はっきり言うと、工事費含めてこれが最も高価な買い物だった。これで、ほとんど俺の貯金は吹っ飛んだ。叔父と叔母が貯めていた株も売り払い、ここから先は本当に稼がないといけない。
毎時22kw、一日528kwはかなり優秀だ。太陽光パネル8枚を並べても一日15kwであることを考えると、とんでもない数字であることがわかるかと思う。
「かなりいい土地だから、経過もブログとネットラジオで報告してくれるかい?」
「もちろんです」
水力発電機の社員は、すでにこちらの情報をちゃんと調べてきてくれていた。日本だと結構数年実験しているのに、なかなか広まらず、アメリカでも拡大したいらしい。
「もし、ブログで使いたい文言があったら、宣伝に使っていいですからね」
「本当? 助かるよ」
家でも水力発電などのメンテナンス等は叔父の知り合いに頼んでいるので、モーテルの方もお願いしてみた。
「お金さえくれればやるぞ。大丈夫、俺がいれば売電もできるから」
多少、お金を払って、うちの役員になってもらい、売電もできるようになった。
エコな発電界隈は皆、優しいのかもしれない。
俺は電気工事士の資格を取り、電気を取り付け、コンセントの工事もやった。
「だいぶ、予定よりも早いよ!」
キャスは興奮しながら、ベッドを作っていた。牧場の娘は、本当によく働く。
「洗濯機とリネンを買うか。寝具と消耗品はどうしても買わないといけない。プールはまだ温水にできないから、ちょっと先だけどね」
「でも、電気は売れるでしょ?」
「売れるけど、それほど利益はないよ。ここから先はできるだけ団体向けに宣伝していこう」
「ちょっとずつこっちに物を運ばないとね」
パトリシアは、きっちり勉強して食品取扱者証明書を取れたらしい。これで、クッキーもパイも売れる。
「フロントに売店を置いて、ジャムも売りましょうね」
「おおっ、ちゃんと田舎のモーテルっぽくなってきた」
「田舎のモーテルなんだよ」
「朝食のサービス付ける? トーストとスクランブルエッグぐらいなら出せるわ」
「そんなに朝早く来て大丈夫ですか?」
「年取ると、朝は早いのよ」
「とりあえず、ベッドを組み立てて、全部の部屋で寝てからにしましょう」
「確かに……」
「うちの息子達も呼んでいい?」
「いいですよ。使い心地が重要なんで」
果たしてどれくらい上手くいくのか。今のところシャワーは冷水のままだ。
薪で温めるタンクを取り付けるか考えていたら、キャスが普通にガスの契約をしていた。その代わり、余った電気は売れるようにレトロがしてくれた。
「ひとりじゃ、何にも出来ないな」




