♡23 君との朝
野川秋(16) 高一 女子高に通うイケメン女子、文武両道の秀才だが超絶マイペースにして隠れオタ
宮姫純恋 スミ(16) 高一 秋のクラスメイトで親友、妥協なきツッコみマシーン、すばらしEお山の持ち主
佐竹葵(16) 高一 秋たちとは別のクラスの子、先日秋にラブレターを渡した。純恋曰く、すげーかわいい
浅羽陽菜(17) 高二 純恋のバイト先の先輩、学校は別、髪型が変? 朝一でもOK!
※本作品は不定期更新です。また登場する組織はフィクションです。
ライトブルーのカーテンの僅かな隙間から光を感じる。
どうやら騒がしかった夜は終わりを告げ、世界は新しい朝を迎えたようだ。
純恋は目を覚ますと目の前に秋の顔があり、覗き込むように純恋の顔を見ている。
「おはようスミ」
「ん……秋? わっ」
「しっ……大きな声出さない」
同じ布団のふたりの間にはもう一人挟まっている。
純恋にぴったりくっついて眠る葵
長い睫毛が小さな呼吸に合わせわずかに動く
(……佐竹さんってホントかわいいな)
同い年ながら幼さを残す少女を思わず見とれてしまう。
「スミにべったりだね……なんかスミが葵ちゃんのママみたい」
「アタシがママならお前はどうなんだよ」
「ん……私はパパかな、おはようママ」
「おはようパパ……ってなんだよ、これ」
「もう……大きな声出さないで、葵ちゃん起きちゃう」
「あ、ごめん」
「ママ……今日も愛してるよ」
「(ごくり)……わたしもだよパパ」
「今日も君に会えてボクは幸せだよ」
「パパ……今日も素敵」
「ママより愛おしい女の子をボクは知らない」
「わたしはあなたのお嫁さんになるために生まれてきたの」
「スミ……」
「秋……」
なぜか始まったヘンテコ夫婦ごっこ
そしてベタベタな愛の語らいの後、熱を帯びたまなざしとなり交差する
ふたりの距離は10センチもない
全てを直に感じる距離
潤む瞳は寝起きのせいじゃないかもしれない
「あ、葵ちゃんのお熱下がったか確認して」
「お、おう……」
アホらしくなったのか、恥ずかしくなったのか秋が突然素に戻る。
純恋は右手で自分の前髪をたくしあげると、おでこを葵のおでこにそのまま当てた。
「もう大丈……ん?」
純恋が言い終える前にその唇は瞳を閉じたままの葵の唇でふさがれる。
純恋は目を大きく見開いたまま動けない。
横になったままふたりの様子を見ていた秋も笑顔のまま凍っている。
しばらくすると葵が目を開き、純恋から顔をゆっくり遠ざけた。
「ん……おはようございます、その……宮姫さん寝込みを狙うのはさすがに反則だと思います」
「あ、あ、アタシじゃない、佐竹さんがその……してきたんだよ!」
「そんなわけが……違いますよね? 秋ちゃん」
「え? あの……スミの云う通りで、おでこで体温を計ってたら葵ちゃんがチュッとしたというか」
純恋の顔がみるみるうちに真っ赤になり無言になる。
一方、葵は瞼が重そうでわずかに開く目も虚ろのまま慌てる様子もない。
「……なるほど、あの……すみません宮姫さん。寝ぼけてたんでよくわかりませんが起きる寸前、バカップルがイチャイチャするのを見せつけられる不快な夢をみたのでイライラしながら目を開けたら、その……宮姫さんをおいしく頂いちゃってました」
「お粗末様です……じゃない~! おいしくないしそれ以前に食べものじゃないわ~! ていうか本当は起きてたんじゃないの!?」
「いえ……さっきまで寝てました。
宮姫さん、深く考えたら負けです。女子同士だしペットボトルの回し飲みと同じ、ここはノーカンにしましょう」
「そんな簡単にノーカンにできるかぁあああ!」
「スミと葵ちゃんが…… スミと葵ちゃんが…… スミと葵ちゃんが…… あはははぁ スミと葵ちゃんが……」
純恋は興奮が冷めやらない
葵は深いためいきをつく
秋は現実を直視できず半笑いのままブツブツ呟く無限ループ
・・・
「ノーカンにしてもらわないと、ワタシは初めてだったので責任を取ってもらうことに」
・・・・
「アタシもだよ」
「じゃあ、ノーカンと恋人の間をとってキスフレになります?」
「キスフレってなに?」
「その名の通りキスまでOKな友達です。キスフレになれば宮姫さんは放課後でも、体育館裏でも好きな時にワタシにキスができます。
しかもキスフレはあくまで友達なので浮気にならず、ワタシも宮姫さんも秋さんに対し面目が立ちます」
「面目は立つかもしれないけど、モラルが大崩壊してるわ~~ しかも今後も継続的に佐竹さんとキスする流れになってるわ~~! 佐竹さん顔が赤いよ。ほんとはキスフレなんて無理でしょ?」
「……まぁそうですけど」
真面目な純恋のためにわざと何でもないように振舞ってみたが、葵としても重大事案であり、落ち着ける状況ではない。さっきからずっと指で口をなぞっている。
できることなら10分前に戻って全てをやり直したいところだが、普通の女子高生である葵にタイムリープはできない。
結局純恋も葵も恥ずかしさとドキドキで何も言えなくなってしまった。
「あ~私目にゴミが入ったよ、いたたた~、あとさっき脳内にクールなヒップホップが駆け巡ったから何も見てなかったし~聞いてなかったZE~ Oh! Yeah~~~~!
で……スミ、葵ちゃんのお熱どう?」
ようやく氷の解けた秋が無理な物言いで強引に話を戻した。
「お、おう、大丈夫そうだ、佐竹さん良かったな、はは」
「は、はい、おかげさまでだいぶ良くなりました」
「IT’S COOL これで話はおしまい~体温を下がった、世界をうがった ラブアンドピース♡ オレもCOOL~Yeah~」
「……お前ヒップホップのことよく知らないだろ」
しかしポンコツDJの提案に反論する理由もない。こうして少女たちは都合の悪い事実をもみ消すことにした。
ただし……
(佐竹さんの唇めちゃくちゃ柔らかかった……)
(ん……どうしたことでしょう……宮姫さんの唇が頭から離れません)
両者の記憶からすぐに消すことはできない。
「私トイレ行ってくる。お腹いたたたぁ」
イマイチ収拾がつかないまま、部屋には純恋と葵だけ残された。
「ねぇ佐竹さん……」
「なんですか……」
「当方に暮れるアタシたちを置いてくか普通?」
「確かに……ただ逃げ出したい気持ちはわかりますね。
それにトイレに私達を連れて行くのも無理ですし」
葵がそう言って僅かに笑うと、純恋もつられて笑う。
「そうだね……よしもう忘れるよ、考えた見たら昨晩一緒に寝た中だし、些細なもんだよね」
「そうですね……」
「どうかした?」
「……いえ、何でもありません」
「それより宮姫さんは……」
「ただいま~さむーい。お布団に入れてふたりとも暖かい~」
キスの事はどうでも良くないがひとまず置いておくとして、秋への気持ちを確認するため葵は純恋に声をかけようとしたが、秋が部屋に戻ってきて二人の間に割って入り布団に潜ったため、それ以上聞けなかった。
「……秋ちゃんは自由ですね」
「うん?」
「なんでもありません。さてワタシもトイレに行ってきます。宮姫さんはまだ大丈夫ですか?」
「大丈夫だけど……サッと戻ってきてくれると嬉しいかな」
「りょーかいです。それでは」
今度は秋と純恋だけ残される。
「スミと葵ちゃんが仲良くなった気がする」
「元々知り合いだったし、ケンカしてたわけでもない……でも前より話やすくなった気はするな」
以前も今も葵に対して思うところは何もない。
むしろ身近に感じている。
(この家を見てると昔のことを思い出すな……)
それは純恋にとって幸せな記憶ではない。
もし自分が考えてる通りなら、佐竹葵という少女を一人にすることはできない。
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これがゲームなら……
攻略可能ルート
・秋‐葵ルート (しだれ桜の誓い)
・秋‐純恋ルート (ふたりだけの永遠)
新しい攻略可能ルートが追加されました(*'▽')
・純恋‐葵ルート (口づけから始まる物語)
BADエンド
・陽菜先輩のオラオラ千本ノック





