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069 個人レッスン

 


 納品も無事終わり、例の書面もしっかりともらった。

 まったりライフに向けての準備なので、そのための労力は厭わない。

 フィーリアはお爺様に鍛えられ剣士としての腕をメキメキと上げている。

 お爺様もフィーリアとの稽古が楽しいようで、毎日のようにフィーリアを訓練に誘いにくる。

 大叔父のフェデラシオ叔父上も最近はお爺様がフィーリアに付きっ切りなので世話をやく必要がなくありがたいとフィーリアに感謝していた。




 10月に入り学校も始まった。

 更に母上が臨月を迎え、神聖暦513年10月9日に俺の弟が生まれた。

 父上なんか舞い上がってしまい、弟にアーネストJrと名付けようとしたほどで母上とお爺様に止められていた。


 母上曰く父親と同名なんて嫡男のようで不要な混乱を招く。

 正論である。


 お爺様曰くアーネストが2人もいると区別が面倒だ。

 お爺様らしい言である。


 お爺様はともかく、母上の言うことは正論であり父上も考え直し弟はイグナーツと名付けられ名付け騒動は決着した。

 しかし、俺はいいが嫡男であるジムニス兄上は良い気はしない話だろう。

 イグナーツがジムニス兄上に疎まれないようにフォローしてあげよう。





 そして10月は単位修了試験の月なので、クラン『MIツクール』の面々は上級単位を取るために血走った目をしながら頑張っています。

 俺が教えているのだから、必須科目は全て上級単位を取ってもらわないとね。

 もし落としたなんて言うのならそれなりの対応をさせていただきます。


 そんな中、俺はアイテム講座の上級単位を取得した。

 素材の知識もアイテム作成の知識や技能も十分あるということで上級単位の課題が出されたので、校内にある鍛冶工房で鉄鉱石を精錬するところからマジックアイテムを作り上げるところまで全ての工程を審査された結果、合格となったのだ。


 アイテム講座の担当教師の1人はドワーフのグレガス先生だが、グレガス先生曰く「俺が教えることはねぇ」だそうです。


「ぐぁ~っ、疲れたぁ~」


 これが子爵家のご息女の口から出た言葉です。


「そんな色気のない声をだしているとペロンに嫌われるよ」


「だって~、疲れたんだもん~。クリストフは良いわよね。既に卒業に必要な単位を全部取っているんだから、余裕よね」


「まぁね。でも私の個人レッスンを受けているんだから、筆記科目はキッチリ上級まで合格してもらわないとね。もし不合格だったらダンジョン踏破より座学を優先して地獄の特訓ですね」


「ぐはっ、おにぃぃぃっ!」


 カルラの悲鳴のような叫びを聞いてメチャクチャ焦った顔をしたペロンが駆け寄ってきた。


「ど、どうしたの?」


「ペロン聞いてよ~、クリストフが上級単位を落としたら地獄の特訓って言うんだよ!」


「え? そ、そうなの?」


 イチャ、イチャ、イチャ、イチャ、イチャ、イチャ


 あ~、何だ、・・・シングルの前でイチャイチャするのは止めてほしいのですがねっ!

 くそっ、リア充は爆ぜろぉぉぉぉっ!


 はぁ、はぁ、いかん、つい心の叫びが。


 結局、ペロンとカルラは上級単位を落とすことなく全て合格した。

 プリッツも全て合格したのだが、クララが魔物学を落としたので、クララだけ地獄の特訓が決定した。


「え~、何で私だけ~」


「問答無用! 1月の単位修了試験に向けてクララだけの個人レッスンだからね。感謝してくれて良いのだよ?」


「ぶ~ぶ~、クリストフの意地悪~。悪魔~。#%!&#」


 神様に向かって悪魔ってなんだよ!

 しかも最後は何を言ったか分からないし!

 そんな涙目になってもダメだぞ。


「随分と楽しそうですわね、どうしたのですか?」


 うぉっ!

 ドロシー様か、ビックリした。

 俺に気付かれずに後ろに立つとはドロシー様のステルス能力は神並みか!


『おはようございます、ドロシー様』


 俺とクララのハモリはバッチリだ!


「聞いてくださいよ、ドロシー様。クリストフってば上級単位を1個落としただけで地獄の特訓だ!って言うんですよ!」


 クララはドロシー様に助けを求めるつもりだな。

 だが、逃がさんぞ!


「カルラもペロンも、そしてプリッツも私を裏切って完全制覇しているんです。私だけクリストフの個人レッスンなんて受けたら死んじゃいますよっ!」


「こ、こ・じ・・ん・・・レッスン・・・」


「はい、個人レッスンです。マンツーマンで特訓なんて受けたら私壊れてしまいますよ~、およよよ」


 およよよ、ってお前、そんな泣きまねでドロシー様が騙されるわけないだろ。

 ほら見ろ、ドロシー様が真っ赤な顔をして「個人レッスン」とか「マンツーマン」とかブツブツ言っているぞ。

 これはお前がわざとらしい泣きまねなんかするからきっと怒っているんだぞ。


「こ、壊れるって・・・クララさん、安心してください。私もその特訓とやらに付き合います!」


『え?』


 はい、またハモリました俺とクララです。


 クララの「え?」は止めてくれないの?の「え?」ですね。

 俺の「え?」は何でドロシー様がクララに付き合うの?の「え?」です。


「ドロシー様、クララに付き合う必要はありませんよ。ドロシー様もお忙しいでしょうからクララのことは放っておいてください」


 まったく、クララのせいで話がややこしくなってしまった。


「ダメです! ふた・・ゴホンッ、クララさんが心配ですので私もお付き合いします。それに舞踏会の時に私に勉強を教えて下さるとお約束してくださいましたのはどなたでしょうか?」


 あ~、そんなことも約束したね。

 しっかり覚えているんですね。

 てか、ドロシー様の後ろの取り巻きが俺を睨んでいるのですが、どうすれば良いのかな?

 どうにもなりませんでしたね。

 そんなわけで、本日から皆の予定を調整し、ダンジョンに潜る日以外はクララの特訓とドロシー様の勉強を見ることになりました。



 

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