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061 魔技神の加護

 


 魔技神マギシンとなったことで俺は魔具、所謂マジックアイテムのことだが、このマジックアイテムの作成を一から全て行えるようになった。

 これまでであれば腕輪なり指輪なりを購入してそこに魔法陣を書き込んでいたのだが、魔技神である俺はマジックアイテムの作成にアドバンテージがある。


 マジックアイテムにも階級があり、大別して一般級、クラフター級、神器、となるのだが、それぞれの階級でも細かく分かれている。


 <一般級>

 ランク1・2(低品質)

 ランク3・4(普通品質)

 ランク5・6(高品質)


 <クラフター級>

 ランク7・8


 <神器>

 ランク9・10


 市場でよく流通しているアイテムはランク1からランク4の物が多く、ランク5以上の物は少ないし、ランク7になると殆どお目にかかれない。

 俺は一般級程度であれば材料がなくてもマジックアイテムをつくることができる。

 簡単に言えば魔力を物質に変換してアイテムを創造するって感じです。

 逆に神器と言われるようなマジックアイテムを造るにはさすがに材料が必要で、材料の質も求められる。


 それから心理の眼が神眼に進化したので使い勝手を確認してみたが、ステータス確認に関しては大して変わりがない。

 しかし寿命まで確認ができるようになってしまったよ。

 人の寿命などあまり見たくないので、通常はOFFにしている。

 更に千里眼は範囲が10倍になっており、もう大概のものは見えますね。

 これまではピントをあわせるだけでも結構な労力を要したが、今はそれさえ容易になった。

 つまり、これまではピントを空間にあわすのは簡単だったのだけど、細かい調整にはとても苦労をしていたのですよ。

 それが今ではオートフォーカス機能が付いたって感じなので、今まで見るのに苦労していたあの娘のスカートのな・・ゲフンゲフンッ・・・色々と便利になった。


 神威は今直ぐどうこうできるものではないので、保留だね。

 そんなわけで、千里眼に慣れるために馬車の中で訓練をしている。


「クリストフ君・・・なんか変わった?」


 ペロン君、君はよく見ているね。


「何が変わったのさぁ、服?」


 カルラ君、君は喋るでない!


「そうですね、何か雰囲気と言うか・・・確かに変わったような気もしないでは・・・」


「そんなこと、どうでも良いじゃない。それよりもう直ぐで王都よ。久し振りよねぇ~」


 プリッツ君にクララ君も相変わらずですね。


「4人共、少しいいかな?」


「「「「なに(よ)」」」」


「これから話すことは誰にも言わないと、約束してほしい」


 俺が神妙な顔をしているので4人がお互いに顔を見合わせ、頷く。

 これから俺はこの4人に俺が魔技神になったことを話そうと思う。

 この4人であれば大丈夫だと思うのだが、心配なのはカルラとクララで、自分たちでは気を付けてたつもりでもつい喋ってしまうってことも考えられる。

 うっかりってやつだね。


「何の話か分からないけど、私たちはクリストフを裏切るようなことはしないわよ!」


「「「(コクコク)」」」


「ありがとう」


 俺は神になったことを話し始めた。

 創造神様や善神、悪神の話、それに細かい能力についてはあえてしないが、神となってしまったあらましを話した。


「「「「・・・」」」」


「今直ぐ信じろって言っても難しいかも知れないけど、本当のことなんだ」


 俺はステータスプレートを4人に差し出す。

 信じてもらうためにステータスプレートの情報を開示したのだ。


「「「「っ!」」」」


 種族や身分・職業、それに称号に神と表記されている以上、4人はそれを信じるしかないだろう。


「本物の神様・・・」


 皆、目が点になっているが最初に復活したのは意外にもクララだった。


「もし皆が良ければ私の加護を与えたいと思うんだけど、どうかな?」


「「「「っ!!」」」」


「クリストフ君、いや、クリストフ様って言うべきかな」


「今まで通りで頼むよ。様付けされても首筋がムズ痒くなるよ」


「で、では、クリストフ君、本当に加護をもらえるの?」


「4人さえ良ければだけど、そのつもりだよ」


「嫌って言うわけないっ! どんどん加護って!」


「「「(コクコク)」」」」


 どうやら4人は俺の加護を受け入れてくれるようだ。

 てか、クララ君や、『加護って!』って、軽いね。

 別に加護を与えるのに被加護者の承諾は必要ないけど、最初だし俺の気持ちを整理させるって意味もある。


 さて、皆の了承を得たので加護を与えようと思う。

 先ずはカルラに意識を集中して手を翳す。

 もやっとした感覚がし手が僅かに光る。

 これで終了らしい。


 念のためにカルラのステータスを確認してみるとギフトのところにしっかりと『魔技神の加護』とある。

 成功だ。



 魔技神の加護

 ・魔法陣作成補正(大)

 ・魔具作成補正(中)

 ・器用、知力、精神に補正(小)

 ・魔力補正(小)

 ・魔法攻撃耐性(小)

 ・豊胸補正(小)



 へ~こんな感じの加護なんだ。

 自分で加護を与えておいてなんだが、知らなかった。


 ・・・っ?!

 最後の『豊胸補正(小)』って何だっ!

 まさか・・・

 俺の願望が・・・

 これは・・・


 続けてペロン、クララ、プリッツに加護を与えていく。

 気になる『豊胸補正(小)』は男性にはついていなかった・・・良かったよ、プリッツが豊胸になったら女顔と合わせて洒落にならんからな。


 特に疲れもなく無事4人に加護を与えることができた。

 加護については問題なかったので眷属はじっくりと考えよう、眷属となるとデメリットもあるからな。

 他に神威については少し落ち着いてから試そうと思う。


 俺があれこれ考えを巡らせていたらカルラとクララがなにか落ち着きがない。

 2人してコソコソ話しているがどうしたのだろ?

 そんな俺やペロンとプリッツの視線を感じたのかカルラとクララは口を開いた。


「なんか胸の辺りが苦しいのだけど・・・」


「だ、大丈夫なのかい? 病気だったら大変だよ!」


「(コクコク)」


 ペロン君や落ち着きなさい。

 プリッツ君は相変わらず無口ですね。


「大丈夫だと思う・・・よ?」


「どうしてそんなことが言えるのさっ!」


「ペロン、落ち着いて。・・・ゴホンッ。その胸の苦しみは加護のおかげだ・・・きっとね」


 4人は俺の顔をジーッと見つめて頭の上に「???」を浮かべている。


「私の加護には女性限定だけど、『豊胸補正(小)』がついているんだ」


「「っ!!」」


 カルラとクララが物凄い勢いで立ち上がり馬車の天井に頭をぶつけて声にならない痛みに悶え苦しんでいます。

 暫くして、痛みが引いたのか2人は俺に詰め寄ってきて「本当なのね?」って何度も確認を取ってきたので、「屋敷に帰って測れば分かる」と答えておいた。

 それから2人はとても機嫌が良く、終始笑顔であったとさ。


 そんな感じで王都に入り、久し振りにブリュトゼルス辺境伯家の屋敷に戻ってきた。

 屋敷に戻る前に4人の家をそれぞれ回っていたので少し時間が掛かったが、それでも夕方前には屋敷に戻ることができた。


 玄関では使用人が迎え入れてくれたので、父上の執務室に向かい帰宅の挨拶を行う。

 執務室には父上だけではなく、母上も一緒にお茶をしていた。


「お帰りなさい、クリストフ。ゲールもご苦労でした」


「父上、母上、只今戻りました」


 ゲールは母上の労いの言葉に黙礼で答える。


「クリストフ、それにゲールも疲れているだろうが今から話を聞きたい」


 セジャーカ鉱山での出来事は既に報告が行っているようで、父上は挨拶もそこそこに俺とゲールに詳細を確認してきた。

 母上は父上に後にしたらと言うのだが、重要な案件なのでと父上が母上を下がらせる。

 父上は母上に惚れているが、公私の区別はつける人だ。

 側室が2人も居るのだけど、2人には失礼な言い方になるけどこれは大貴族として断ることができなかったからである。

 ただ、父上は側室の2人も大事にしており蔑ろにはしてはいない。


 俺とゲールは父上に詳細な報告をした。

 本来であればレビスやプリメラも同席させるべきなのかも知れないが、そこはゲールが責任者としてしっかり対応をしている。


「この廃坑はまだ鉄鉱石の鉱床があるのか?」


 ゲールからの報告を粗方聞き終わった父上が鉱床のことを確認してきた。


「鉄鉱石が殆どですがミスリルの鉱床も僅かにありました。鉄鉱石の埋蔵量としてはまだまだ十分にありますね」


「そうか・・・で、ダンジョンは封印したのだな? ダンジョンの傍で採掘を始めても問題ないということだな?」


「はい、誰も入れないようにしました。また、魔物が出てこられないようにしっかりと封印しましたので、その封印を壊さない限り問題ありません。封印は私の持っている力の限り行っておりますので勇者様や魔王でもない限りは破られることはないでしょう。ただ、できれば誰も坑道に入れないことをお勧めします。何がきっかけで封印が破られるか分かりませんので」


 父上は頷き、顎に手をあてる。


「分かった。・・・では次にルイジ湖の北東の場所を採掘すれば温泉がでるということだが、これは保留だ。温泉は観光地となりえないと言う声が多い」


 この世界では風呂の習慣がない。

 王侯貴族や富裕層の一部の屋敷に風呂はあるのだがステータスシンボルみたいなものなので毎日風呂に入ることはない。

 皆がそう思うのは仕方がない。


「そうですか、分かりました。・・・父上、2人だけでお話をしたいのですが?」


 俺の真剣な目を見た父上がゲールを下がらせる。

 俺は父上と母上には神になったことを正直に話そうと思っている。

 だからステータスプレートを父上に差し出す。


「これは?・・・むっ!」


「そのステータスプレートは壊れているわけではありません。水神である八岐大蛇を倒したことで神格を得たようです」


「・・・俄かには信じられん・・・が、これを見せられては信じるしかないのか・・・」


 自分の息子が神になったという事実を脳ミソをフル回転させて整理しているのだろう、さすがに何度も瞬きや細かく動き落ち着きがない。


「母上には出産後に良い日を選んで話をします」


「そうしてくれ・・・いや、してほしい・・・神に対してどのような対応すれば良いのか・・・」


「今まで通りお願いします。神になろうと私は父上と母上の息子ですから・・・ただ、私はあまり浮世のことに関わることはできないのです。他の神に対しては不干渉が基本なので、浮世のことに関わってしまうと知らずに干渉していたと言われかねませんので」


「そうなのか・・・それはまつりごとに関われないということなのか?」


「国政は無理です。今の王都には既に大神殿が存在しますので私の神域に指定することもできませんし」


「・・・神域というのは?」


「そうですね・・・簡単に言いますとその地域での流行病はやりやまいなどの病気の発生を抑制したり農作物が不作になりづらかったり、その他にも私への信仰心が強ければもっと多くのことができます」


「素晴らしいものだな」


「神聖バンダム王国全体は無理ですが、一部の地域であれば可能でしょう」


「そうなのか・・・ブリュトゼルス辺境領やブリュンヒルを神域に指定はできるのか?」


「領都ブリュンヒルであれば神域にできますが、私はそれをする気はありません。・・・理由としては、神域を指定するには神力を消費するのですが、指定する地域を広くしたり人口が多かったりしますと消費する神力が多くなってしまうのです。ですが、その神域の住人が私を信仰しないと神力が回復しないのです。領都ブリュンヒルの住民に私を信仰するように仕向けるには人口が多すぎます」


 消費する神力を回収することができないと俺は弱体化してしまうので、残念ながら神域内に大都市を含めるのは今の時点では控える必要があるだろう。


「そうか・・・分かった・・・このことは他に誰か知っているのか?」


「カルラ、ペロン、クララ、プリッツの4人だけです。彼らには私の加護を与えております」


「加護・・・か・・・」


「主にマジックアイテム作成の補正ですね。ただ、魔法攻撃耐性が僅かですが上がりますので、できれば父上や母上を初めとした家族に加護を与えたいと思います」


「そうか・・・うむ、そうしてくれ」


 父上はしばらく1人で考えたいと言うので、俺は執務室を後にした。

 無理もない、自分の息子が神になったと聞けばうろたえもするところなのに父上は平常心を保っているだけ素晴らしい精神力だと思う。


 

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