058 帰還
『はははは、アイツ俺に向かってフザケタことをぬかしやがったな』
『・・・』
『まぁ、良い。アイツから目を放すなよ』
『了解しました。創造神様』
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「・・・ト・・・・・ス・・・マ・・・・・・ク・・」
・・・
「・リ・・フ・・・・・・ク・・・・・マ・・・」
・・・ウ・・ル・サ・・・イ・・
「%$’&!」
・・もう・・少し・・・
・・・頼むからもう少し寝かせてくれ。
「クリストフ様!」
「ウルサイよ・・・プリメラ」
朦朧とした意識をむりやり起こし・・・重たい瞼を開ける。
「もう少し寝ていたいんだ」
プリメラの顔は涙と鼻水で酷いことになっている。
そうか、俺は奴と戦って・・・
レビスが食われて・・・
「心配したんですよ、心臓も止まって・・・もうダメかと・・・」
そうか、俺の心臓は止まっていたのか・・・
そういえば、変な夢を見たな。
正夢なんて言わないだろうな?
「そんなに揺らすなよ。・・・っ!レビスはどうなった?」
「無事です。今はまだ意識がありませんが生きています」
「そうか、よかった・・・少し寝る」
そうして俺は意識を手放す。
次に目覚めた時にはテントの中だった。
しかし、目覚めていきなりイケメンの顔を見るなんて俺の精神衛生上良くないと思うのだがね。
プリメラが寝かせてくれたのだろうが、何もレビスの横に寝かせなくても良いだろう。
できることなら横に寝ているのは可愛い娘や美人のお姉さんにしてほしかったぞ。
暫くぼんやりとテントの中であの夢のことを考えている。
やけにリアルな夢だったので気になってしまう。
そこへテントの入り口から顔だけをあらわしたプリメラと目が合う。
「クリストフ様!」
「やぁ、プリメラ。迷惑をかけたね」
ここで騒ぐとレビスが起きてしまうので俺は起き出しテントの外に出ていく。
プリメラは俺が普通に動けることにホッとしたようだが、俺の体調はすこぶる良い。
良いどころか以前に比べ明らかに体が軽く感じられる。
激戦を生き残って能力が上がっているのかも知れないから後でステータスを確認してみよう。
プリメラによれば俺は半日ほど寝ていたそうで、その間にレビスが目覚めることはなかったということだ。
とりあえず、レビスの状態は安定しているのでそのうち目が覚めるだろう。
それと奴の死体がそのままなので残っている頭と尾を全てストレージに入れようと思って回収していたら尾の1つが発光し、俺はまたか!と思い後方に飛びのき身構える。
しかし光が数秒で消えた後には尾はなくなっており、更に八岐大蛇が復活していることもなく、ただ一振りの剣が鎮座していただけだった。
これはあれか?
もしかして、もしかしなくても・・・神剣ってやつか?
たしか日本の神話・・・古事記だったか? では八岐大蛇の死体からあの有名な剣がでてきたんだよな?
「クリストフ様、今の光は?!」
「大丈夫・・・だと思う」
プリメラが焦った表情をしながら俺の方に走り寄ってきて剣に目が釘付けになる。
天叢雲剣・・・八岐大蛇を成敗することで得られる神剣。天叢雲剣は八岐大蛇を成敗した者の能力に影響を受けその能力を変化させる。
うん、なんか分かっていたけど、こうして心理の眼で確認するとやっぱ神剣なんだね。
騒ぐプリメラをなだめ、天叢雲剣をストレージにしまう。
そしてしばらくするとレビスが目を覚ました。
俺はレビスの体調がまったく問題ないことを確認して、レビスをぶん殴ってやった。
「二度と無茶をするな!」
イケメンを殴れて少し気分が良いが、それとこれとは話が別で俺のために誰かが死ぬなど俺は許さん! と説教をしてやった。
そして、俺もレビスとプリメラにしっかり絞られた。
2人してみれば自分たちが死んでも俺を生かすのが使命なわけで護衛対象の俺がレビスを生かすために死んだら本末転倒だと俺がレビスに説教した時間のゆうに10倍はガミガミと言われたよ。
くそっ!
そんなことがあり、レビスたちは直ぐに帰ろうと提案してきた。
まぁ、こんな状態では仕方がないので素直に言うことを聞いてやったぜ。
帰りは移動優先でできるだけ早く進む。
帰る予定の時間を大幅に遅れていることもあるのだが、結構いそいでいる。
しかし俺の体力が全然減っていかないというか疲労が溜まらないのだ。
レビスとプリメラは日頃から体を鍛えているので本気を出せばこの程度の坑道はそんなに時間を掛けずに進めるが今までの俺ではそうはいかなかっただろう。
なんだか自分のステータスを確認するのが怖いよ。
「クリストフ様っ!」
やっぱりこうなったか。
坑道を出口に向って進んでいる途中でゲールとゲールに率いられた3人の騎士と遭遇した。
俺たちの姿を見たゲールは大声をあげて走り寄ってきた。
俺たちの帰りが遅いので探索隊を出したのだ。
それと俺たちの格好を見て色々レビスとプリメラが問い詰められていたが、これは隠さず話している。
だって、レビスとプリメラの格好を見れば戦闘があったことは直ぐに分かってしまうからね。
プリメラは鎧が破損している程度ですんでいるけど、レビスは下半身が食い千切られたこともあり下半身は毛布で隠している状態だ。
見る人が見ればメチャクチャ怪しい人だ。
俺?
俺はストレージに着替えがたくさん入っているので完全に着替えていますよ。
でも俺より大柄なレビスは俺の服を着ることができないので毛布で隠しているんだね。
最奥のエリアでのことは隠すべきことを隠し、できるだけ正直に報告させている。
だって、俺の心臓が止まったなんてことを報告したら今後の俺の行動に色々と足かせがつきそうだし、何よりレビスやプリメラの処罰が厳しいものになる。
俺の我が侭で行った先の出来事で2人が厳罰をうけるようなことにはなってほしくない。
だから2人には悪いが少し手を打たせてもらった。
「詳細は坑道を出てゆっくり聞かせてもらいます」
坑道を出ると、カルラたちも駆けつけていた。
それもそうだろう、空をみると既に日が傾きもう直ぐ夜の帳がおりるところなのだから。
「クリストフ、大丈夫なの?!」
カルラたちは俺の姿を見ると駆け寄ってきた。
「ちょっと予定外の出来事があって遅くなってしまったよ。心配掛けてごめんね」
「「クリストフ君が無事で良かったよ」」
ペロンとプリッツは声を揃えてまったく同じ言葉をかけてくれた。
さすがは草食系男子代表の2人だ。
「だからクリストフなら大丈夫だって言ったじゃない」
クララは心配してたのだろうが、俺の能力を信じていたようだ。
・・・そういうことにしておこう。
話もそこそこに馬車に乗り込みルイジ湖の別荘を目指す。
このセジャーカ鉱山からだとセジャーカの街よりルイジ湖の方が近いし、セジャーカの街のホテルは既に引き払っているのでルイジ湖に行くことにしたのだ。
「そんな化け物がいたのに好くよく無事で帰ってこられたわね」
クララ君や、結果的には無事にみえるだろうけど、かなりやばかったです。
そんな感じで周囲が暗くなって別荘に着き、その夜は早めに休むことにした。




