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054 坑道2

熱中症でした・・・

予約投稿するのも辛かったので間が空きましたがすみません。

 


 坑道の中は特に魔物がいることもなく順調に進んでいき、廃坑に入ってから10分ほどして止まるように指示をする。

 別に休憩ではないからね。


「ここで良いかな」


 俺は土属性の魔法であるミネラルサーチを行使する。

 このミネラルサーチは土属性の特級の魔法で行使できる者が少ないために一般的にはあまり知られていないが、鉱山関係者には有名な魔法である。


 通常のミネラルサーチの範囲は半径20mほどなのだが、俺は魔力を多く込め半径100mほどの鉱物の情報を得ていく。

 土や砂、ただの岩などの不要な情報を取り除き資源となる鉱物の情報だけを選別する。

 この作業に1時間ほど掛け、ミネラルサーチの範囲を更に広げる。


 この坑道は廃止になってはいるが、まだ多くの鉄鉱石の反応がある。

 残念ながら坑道の上の方からなので鉱床を見つけることはできなかったのだろう。

 俺は壁に『↑60I』と赤い色で書き残して先に進むようにプリメラに指示をする。

 この『↑60I』は上に60mほど掘れば鉄鉱石の鉱床があるという意味だ。


 時々鉄鉱石の鉱床の反応はあるもののお目当ての神銀を見つけることはできないまま3時間ほどが過ぎたので昼食がてら休憩をとる。


「クリストフ様、先ほどから何か書いていましたがあれはどのような意味なんでしょうか?」


 俺の行動に疑問を持っていたのだろう、プリメラが何をしているのか聞いてきた。


「あれはミネラルサーチで発見した鉄鉱石の反応があった方向と距離を残していたんだ」


「ミネラルサーチ?・・・ですか」


「ミネラルサーチっていうのはね、鉱物を探すための魔法なんだよ。通常は半径20mほどの範囲しか調べることができないんだけど、私は半径200mまで範囲を広げることができたので、今まで見つかっていなかった鉱床も分かるんだ。だから、ああしておけば次に鉄鉱石を採掘するときに便利だと思ってね」


「相変わらずクリストフ様は規格外でいらっしゃる」


 レビスがポツリと呟いたのが聞こえたが、無視して説明を続ける。


「途中、1箇所にはかなり大きな反応があったからまだ枯渇はしないと思うよ」


「凄いですね。クリストフ様がいらっしゃればブリュトゼルス家は安泰ですね」


 安泰かどうかは別として、ブリュトゼルス家の資源は当面問題ないね。


 休憩をゆっくりとったので、更に先に進む。

 ミネラルサーチを展開しながらなので進む速度はゆっくりだ。

 更に3時間ほど進んだので再び休憩を挟むことにする。


「ウォータリングの冷水は冷たくて美味しいですね。クリストフ様のマジックアイテムは有用なものが多いので助かります」


 プリメラは猫尻尾をピンとまっすぐ立てながらコップに注がれた冷水を美味しそうに飲んでいる。


「ここは地図だと坑道の7割ほどの場所ですね」


「最も奥まで行くと広い空間があるのでそこでキャンプし調査を進めることにしよう」


「「了解しました」」


 地図で見ると最奥には元々空洞がありかなり広い空間があるというのが分かる。

 そこまで行きキャンプをはり、ゆっくり調べて戻ることになる。

 帰りは行きより下りが多くなり少し楽になると思うが、それでもほぼ同等の時間はかかるだろう。

 ここまで鉄鉱石の鉱床は幾つかあり、更にミスリル鉱の鉱床も1箇所発見はしたがそれ以外の鉱物の反応はなかった。

 まぁ、そんなに簡単に見つかったら有り難味がないよね。


 更に進み鉄鉱石の鉱床のマーキングを順調?にしていく。

 もう少しでキャンプ予定地である開けた場所に出るはずだ。


 歩いた距離は4Km程度なんだが、ゴツゴツした岩肌にアップダウンがあったり足元がぬかるんでいたりと容赦なく体力を奪っていくのでそろそろ纏まった休憩がしたい。


「その角を曲がると直ぐに最奥の空間に出るはずです」


 助かったよ。

 もう足がくたくただよ。


 角を曲がるとたしかに広大な空間が広がっていた。

 もっとも広いところで幅が500mはあるだろうか、高さも100m以上あると思う。

 更に俺達が目にしたのは高さ40mはある滝に、その滝によってできたエメラルド色の地底湖である。

 この世界には魔物が多く生息しているので人間の生息域がそれほど広くはない。

 そんなこの世界でもここまで神秘的な光景は滅多にお目にかかれないだろう。


 だが、滝が巻き上げる爆風によって湿度は高いし地底のせいで温度は低い。

 つまり寒い。


 しかもこの空間だけ何故か明るい・・・恐らくダンジョンの壁と同じように岩肌が発光しているのだ。

 発光している壁はそれほど多くないが、王立魔法学校で管理しているダンジョンの壁より発光量は多いので空間を全体的に照らしている。

 恐らくこの空間はダンジョン化し始めているのだろう。

 ・・・長い間放置された廃坑がダンジョン化する光景なんて初めて見たよ。


「レビス、プリメラ、この空間は恐らくダンジョン化を始めている。魔物が生まれるかも知れないから警戒を怠らないように」


「了解しました。しかしダンジョン化ですか・・・少し戻ってキャンプをした方が良いのでは?」


「そうしたいが、それだと時間が足りなくなる。このままここでキャンプをしよう」


 俺はこの後に起こる出来事によってこの判断を後悔することになる。


「プリメラは周囲の警戒を、俺はテントをはる」


「はい」


 俺は近くの岩に腰を下ろし疲れた体を休める。

 勿論、魔力感知で警戒をする。

 レビスとプリメラは流石に訓練された騎士だけあって、まだ余裕があるようだ。

 レビスなんかプレートアーマーに近い鎧を着込み、腰に片手剣、背中に盾と荷物を背負っているから俺よりも遥かに体力を消費しているはずなのに・・・

 こいつ涼しい顔しやがって!

 イケメンは爆ぜろ!


 レビスがテントをはり終えると今度は食事の準備を始める。

 索敵に長けたプリメラを周辺警戒にあて、自分が雑用を行うレビスの姿勢を見るにゲールの薫陶が行き届いているのだろうと思える。

 プリメラは周囲の確認をして地底湖から水を汲んで戻ってくるところだ。


 その時だった。


 魔力の流れを感じそちらに目を向けると魔法陣が現れ瞬時に眩い光を放ったのである。

 さすがの俺もいきなりだったので、魔法陣に干渉することができず発動を許してしまった。

 そして俺は直ぐに最悪のミスを犯してしまったと後悔することになる。


 数秒だろうか、光がおさまり目を開けることができるまでになった。

 そして俺たちは最悪なものを目にすることになる。


「なっ!」

「あれは!」

「・・・」


 俺たちはそれを見た瞬間、固まってしまいそれに見入ってしまった。


「はっ!プリメラ、クリストフ様をっ!」


 最初に復活したのはレビスであり、プリメラはその声で我にかえった。


「グルルゥゥゥゥゥ」


 俺は逃げられないということは直ぐに理解ができた。

 恐らくレビスやプリメラもそうだろう。

 何故なら俺たちがここまで通ってきた坑道を塞ぐように扉が現れ、その扉からも魔力を感じるからだ。

 ・・・恐らくは目の前にいる奴を倒さなければあの扉が開くことはないのだろう。


 しかし・・・おかしい、今の今まであの魔法陣の魔力を感知できなかった。

 これだけの大仕掛けの魔法陣なのにまったく感知できなかった・・・俺が見落とした?・・・有り得ないだろ!

 クソッ!

 最悪のミスだ!

 俺が慢心していたのか?

 そんな・・・はずはない・・・と思いたい。


 

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