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052 学生旅行5

 


 俺がこのセジャーカの街にきた目的の1つは鉱山にある。

 このセジャーカの街の南側にはルーン山脈がそびえ立っておりブリュトゼルス辺境領を南北に分断しているのだが、元々ブリュトゼルス家の領地はルーン山脈の北側だけだった。

 5代目の当主がルーン山脈を越え南下して開拓を進め、7代目当主がブリュンヒルを領都に定めたことでそれまで領都だったセジャーカはお役ゴメン・・・とはならなかった。


 先ほども話したがこのセジャーカの街の南側にはルーン山脈があるのだが、このルーン山脈からは地下資源が豊富に採掘できるのでセジャーカの街は今でも少しずつではあるが人口を増やしているのだ。


 そして俺がほしい鉱石が王都ではなかなか入手できない・・・と言うか幻の鉱石なので過去にその鉱石を採掘した実績があるらしい(・・・)セジャーカ鉱山を訪れることにしたのだ。

 最近ではセジャーカ鉱山でもこの鉱石を採掘した記録は無いが、過去にわずかだが採掘しているらしい(・・・)ので可能性は0ではないと思っている。

 この幻の鉱石を採掘したことで5代目が莫大な財をなし南下の資金にしたらしい。


 勿論、その鉱石を採掘できた場合は小量であれば俺のものにして良いと父上の許可はもらっている。

 父上にしてみたら上手くいって俺が鉱床でも発見したらバンバンザイでブリュトゼルス辺境伯家にもプラスになるからね。


 ん?

 どんな鉱石を狙っているのかって?

 仕方がないな、教えて進ぜよう。

 俺が探している鉱石は神銀鉱しんぎんこうと言われる鉱石だ。

 この神銀鉱を精錬すると神銀になるのだが、ミスリルより魔力伝導率が良くオリハルコンより硬いといわれている幻の金属ですね。

 過去に産出した記録はあれど神銀製のアイテムは見たことがないし世間では伝説だとか眉唾物だとか言われている金属だね。


 なんでそんな怪しい金属を探しているかと言うと・・・面白そうだから?

 俺も図書室でこの金属について書かれた本を読まなかったらわざわざ探そうとは思わなかったけど読んじゃったんだもん。

 読んでしまった以上は探してみたくなるよね?

 え、ならないって?

 君はそれでも異世界ヘカートの住人なのかっ!

 君の冒険心は何も感じないのかっ!

 そんなことでは異世界ヘカートを楽しむことはできないぞっ!

 って言うのは大げさですが、そんな感じです。


 でも今日は街中の散策にとどめておきます。

 護衛の騎士たちも疲れているだろうから、今夜はゆっくり休ませてやり明日の朝一で鉱山に行く予定です。

 時間は有限・・・1週間滞在して探そうと思ったけど、カルラたちがついてきたから急遽ルイジ湖でのバカンスを盛り込んでしまった。

 だから明日1日と明後日の午前中しか時間がない。

 あまり気が利く方ではない俺が友達のために気を利かせてバカンスタイムを作ったのですよ!

 俺を褒めてくれてもいいですよ!


 まぁ、ちょっと探しただけで幻の鉱石が発見できるとは思っていないので、今回は下調べって感じでいつか本格的に探そうと思っているわけですよ。


 鉱山都市と言われるだけあって、セジャーカの街には鍛冶屋が多く存在する。

 鍛冶屋は工業区にまとまっているのだが、その工業区が街の半分を占めるのでその規模が分かってもらえるだろうか?


 え、分からないって?

 想像力を膨らまそうよ。


 俺が赴くのは当然のことだが工業区だ。

 あっちこっちからトンカントンカンと小気味良い金属を鍛える音がする。

 このセジャーカの街では王都など他の街から仕入れのために商人が訪れ鍛冶屋と直接取引をするので、道に面した敷地は金属専門店が建ち並んでいる。

 金属専門店に入って陳列してある武器や防具などの武具に、鎌や鍬などの農具、その他の金属製品に金属のインゴットを見ていく。


 セジャーカ鉱山では幾つかの坑道があり最も多く採掘されるのが鉄鉱石だ。

 それ以外はグンと採掘量は減るが銀鉱や金鉱のような貴金属、あとは魔法金属と言われるミスリル鉱やオリハルコン鉱などが採掘されている。

 なので鍛冶屋が扱っている金属製品は鉄や鋼が多いのだが、偶に貴金属の加工に特化した店もある。


 オリハルコンは極めて硬い金属で魔法伝導率が悪い。

 では何故オリハルコンが魔法金属に分類されているかと言えば、オリハルコンを精錬したり加工する時に魔力を込めないと精錬や加工ができないからだ。

 魔力伝導率は悪いが製品化するには魔力が必要という変な金属なんだね。


 金属専門店はどれも大きくはない。

 だから護衛は店の中には連れていかない。

 鍛冶屋の商談スペースって感じの店なので広くないからゾロゾロ入ってこられると邪魔だしね。


 あ~ミスリルの腕輪が安いな。

 お、こっちはオリハルコンの短剣か。

 ・・・さすがにオリハルコンの相場は分からないや、殆ど出回っていないからね。


「ん、坊主オリハルコンの短剣が気に入ったか? しかし、それは高いぞ」


 ドワーフのおっちゃんが気軽に声を掛けてきた。

 このドワーフのおっちゃんは俺が店に入った時に驚いたような顔をしていたので、恐らくだが魔力感知ができるのだろう。


「そうですね、オリハルコンなんて家宝級ですからね・・・やめておきます。ただ、そちらのミスリルの腕輪が有るだけほしいのですが幾つありますか?」


「坊主、このミスリルの腕輪だってそれなりの値段だぞ。数はたしか・・・8個だな。大丈夫か?」


 ミスリルは希少な魔法金属だ。

 そのため、重さが1Kgもない、800gほどのこの腕輪でも1個150万Sもする。

 王都で同等の物を購入しようとすればこの2倍どころか下手をすれば3倍の値段はするだろう。

 まさに卸値価格だな。


「8個で1,200万Sですね?」


「おう、・・・1,000万Sでいいぞ」


「ありがとうございます。では、これで」


 鞄から取り出す振りをして、ストレージから白金貨10枚を取り出してドワーフのおっちゃんに手渡す。


「まいどだ。少し待ってくれ、在庫をもってくる」


 この鍛冶屋の店は他の鍛冶屋に比べると小さいが、腕は他の鍛冶屋より良いと思う。

 この鍛冶屋に来るまでにいくつかの鍛冶屋の店を回ったが、この鍛冶屋が一番品質が良いし、何より採算度外視って感じの価格設定をしている。


 しばらく待つとドワーフのおっちゃんが展示されていたミスリルの腕輪と同じ腕輪を箱に入れてもってきてカウンターに並べる。


「これで全部だ、確認してくれ」


「はい、間違いなく」


 どれも良い品質だ。

 展示されていたミスリルの腕輪が特別高品質だったという落ちはなかった。


「ところで、貴方はこの鍛冶屋の親方ですか?」


「親方ってほどのものじゃないが、そんなもんだな」


「不躾なお願いなのは承知しておりますが、もし宜しければ私の部下の者を鍛冶師として鍛えていただけないでしょうか?」


「・・・本当に不躾だな。ワシは今いる弟子以外は弟子を取る気はない。弟子に時間を費やすより鍛冶をしたいしな」


 弟子にかける時間も惜しいってか、さすがはドワーフ。

 遺伝子まで技術者だ。

 そういえばまだ名乗っていなかったな。


「すみません。申し遅れましたが、私はクリストフ・フォン・ブリュトゼルスと申します。弟子の話はともかく、これからも宜しくお願いしますね」


「ブリュトゼルス・・・ぼう・・じゃなかった、お前さんは御領主様の・・・」


「父上はこの地を治めていますが、私は次男坊ですから気軽に今までのように話してください」


「今までのようにって・・・いいのか?」


「はい」


 ドワーフのおっちゃんは、暫く考え込んだが「分かった」と言って話し方はいままで通りフランクにしてもらった。


「ワシはグジャン・ガジャンと言う、宜しく頼むぞ」


 ジャモンも鍛冶をしたいと言っていたから、今度ジャモンを連れてこよう。

 そんなことを思いながらグジャンさんと話し込み気付いたら夕方になっていたのでホテルに帰る。

 まだカルラたちは帰ってきていないようなので、俺は部屋でミスリルの腕輪にどのような魔法陣を書き込むか考える。

 このミスリルの腕輪には魔結晶を嵌め込む穴も作られているし、ミスリルだけあって強度も高いので高度な魔法陣を書き込んでも壊れることはないだろう。

 こういう良い物を手に入れると高ランクの魔結晶がほしくなる。

 魔結晶の方は冒険者ギルドや商業ギルドで入手できるので今度買いに行くとしよう。


 色々考え込んでいたらカルラ&ペロン組とクララ&プリッツ組が帰ってきた。

 最初は別行動をしていたようだが、偶々ホテルの近くで合流したらしく4人で帰ってきた。

 ペロンとプリッツの控えめ男子コンビは大きな荷物をこれでもかと言う感じで抱えて帰ってきた・・・完全に荷物持ちだな。

 まぁ、ペアで行けばこんなものなんだろう・・・ストレージがあってよかった・・・彼女いないけど・・・グスン。



 

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