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048 学生旅行1

 


 俺たち魔法使いが使うマジックアイテムには、弱点を補う物、長所を伸ばす物、魔力消費を抑える物、魔法の威力を上げる物、などがある。

 俺はクラン『MIツクール』の連中に特別何かを用意することはしない。

 クラン『MIツクール』なんてクランを立ち上げているのだから、自分が使うマジックアイテムは自分で作ってもらう。


 昨日、俺たちのパーティーが入手した魔物の部位で使えるものはアイアンマンティスの翅、シルバービートルの角、トレントの枝、スピードウルフの毛皮がある。

 今は素材からの加工は難しいので素材自体の加工については俺がしてるが、カルラたちには王立魔法学校を卒業するまでには素材からの作成をしてもらう。


「これが昨日の素材で作った物だよ。魔法陣を書き込みマジックアイテムにするようにね」


 カルラとペロンだけではなく、クララとプリッツも参加しての魔法陣作成会を行う。


 アイアンマンティスの翅は加工してマントにしているので、主に防御系の魔法陣を書き込む。

 シルバービートルの角は長さ50cmほどの杖で魔法攻撃力アップ、トレントの枝は長さ150cmほどの杖で魔力消費削減効果、が杖にした時点であるので自分たちの魔法を補う魔法陣を書き込む。

 最後にスピードウルフの毛皮は鞣してブーツを作っており、スピードアップの効果が最初からあるのでここにひと手間加えて更にスピードを上げても良いし、別の効果を与えるのも自由だ。


「僕はアイアンマンティスの翅マントに土属性で防御力を高めようかと思っているけど、カルラはシルバービートルの角杖にどんな効果を付けるの?」


「ボクは得意な火属性の威力を上げようと思ってるわ。元々の効果を更に強化するって感じかな。クララたちはどうするの?」


「私はトレントの杖に闇属性の威力アップね。最近、魔物が強くなってシャドーバインドも効果時間が短くなってきていたからね。本当は角杖にしようかと思ったけど魔力消費削減は捨てられないわ」


「僕はスピードウルフのブーツに飛翔の効果を付けて空間機動力を上げようと思っているよ」


「なんか、プリッツのブーツが凄いものになりそうな予感ね。上手くできたらボクにも作ってね」


 君達、成功する前提の話だけど、失敗もあるからね。

 自分たちの力量を考えて慎重に魔法陣を構成して書き込んでね。


 最終的には俺が用意したマント、杖、ブーツでものになったのは9つ。

 皆、大いに失敗していました。

 まぁ、失敗前提で数を用意していたけど、まさか全部使って成功が9つとは・・・想定外だよ。





 夏季休暇の期間は8月11日から9月30日までの50日だ。

 日本の中高生の夏休みより少し長いし、時期としてもややずれている。

 まったく同じ世界ではないので細かいことは考えないことにしています。


 休みに入って最初の5日は母上が寂しがっているので王都の屋敷で過ごしながら旅行の準備をする。

 母上のお腹も大きくなってあと2ヶ月もすると臨月となる。

 それとクラン対抗戦の後に屋敷に戻った時にお爺様とお爺様の末の弟で大叔父にも会ったのだが、お爺様に抱きしめられたのは苦い思い出だ。

 あの太い腕と分厚い胸板でしっかりとロックされた俺の体からSPが激減した記憶は封印したい。

 そんなお爺様なので一緒に旅についていくと言うのだが、俺のSPのためにも屋敷に残ってもらっている。


 8月16日の朝一、俺たちは旅行のために王都を発つ。

 何故かカルラ、ペロン、クララ、プリッツ、が俺の旅行に同行することになった・・・

 おい、お前たち、予定無いのかっ?!


 てなわけで、俺と愉快な仲間たちは旅立ったのであった。


「ねぇ・・・この馬車なんで揺れないの?」


「あ、カルラも思った? 私も思ってたのよ」


 無言の控えめ男性陣も含め4人が俺に視線を集める。


「・・・まぁ、あれだ、色々とマジックアイテム化してるから」


「「「「やっぱり!」」」」


 合唱団か!

 思わず突っ込んでしまったよ。

 そこまで声を揃えなくても良いと思うのだけどね。


 馬車の旅は一度経験しているのでバッチリと対策をさせていただきました。

 俺のお尻のためにも魔改造は必須です!


「それとあれは何?」


 皆の視線が馬車の前後左右にはめ込まれたガラス窓の内、前の窓の先に集中する。


「僕もあれが気になっていたんだけど・・・」


「そうよね、私の目がバカになっていたのかなと今まで見ないようにしていたんだけど、やっぱり皆にも見えるのね?」


「クララ、それは現実だと思うよ・・・」


「あれは馬型のゴーレムだね」


「「「「・・・」」」」


「ゴーレムって魔物は存在しているんだから珍しくないだろ?」


「「珍しいわよっ!」」


 カルラ君、クララ君、そんなに叫ばなくても聞こえますよ。


「クリストフ君、馬型のゴーレムなんてどうしたの?」


「ゴーレムっていうのは魔術生物なんだよ」


「「「「魔術生物?」」」」


 王立魔法学校合唱部一同と改名したろか。


「魔術生物ってのは私が勝手に付けた総称みたいなものだよ。ゴーレムはね他の魔物と違って体内に魔法陣が必ず書かれているんだ。つまり魔術の一種って括りになると思うから私は魔術生物って呼ぶことにしたんだ」


「え、ゴーレムに魔法陣?」


「そう、魔力操作を追究するとね、魔法陣の形や書かれたバルムス古代語まで感知できるようになるんだよ。所謂、魔力感知って言われているスキルだね。で、私はその魔力感知が他の人より高い次元でできるからゴーレムの体内に書かれていた魔法陣を見ることができるんだ。いやぁ~苦労したよ。ゴーレムが倒されると魔法陣が完全に散霧するようになっているものだから、ゴーレムを生け捕りにして魔法陣を観察しなければいけなかったからね」


「「「「・・・」」」」


 そんなに見つめるなよ。

 照れるじゃないか。


 因みにゴーレムは鉱山や岩山などの場所に多く生息?しているのでこっそり研究しにいってました。

 内緒だからね!


「クリストフ、それがどれだけ凄いことかは分かってる?」


「クララ、そんな目で見ないでくれるかい?・・・まぁ、この魔力感知がここまで正確にできるのは私くらいなものだしね。ある程度は自覚はあるよ」


「自覚してるんだ・・・」


 プリッツ君、そんな呆れた顔をしないでよね。


「ゴホンッ。・・・ボクの家の領地ってそこそこ遠いからこんな馬車があると間違いなく買うわね。4面に窓があり、その窓は外から中が見えないし、それに揺れないから乗り心地は最高だし、ゴーレムまであるんだから・・・クリストフ、絶対に売れると思うから売り出す気はないの?」


「何言ってるの、今まで私が教えたことを踏襲すれば馬車の方は皆だって作れるよ。・・・要は発想だよ」


「「「「つくれるかっ!(ないよ)」」」」


 やっぱり王立魔法学校合唱団(・・・)と呼んであげよう。


 この馬車の性能は現在の馬車とは一線を画す。

 先ずこの馬車は車輪はあるが車体は僅かに浮いているので路面の凹凸に左右されず揺れないのだ。

 これはさすがに人前で見せることができないので街中用にちゃんとサスペンションをつけ、更に防振の魔法陣も組み込んでいる。

 でも地上を走らせるよりは浮かした方が振動が少ないので街を出ると浮上モードONにしています。

 ブリュトゼルス辺境伯家の者も知っているのかって?

 そこら辺は父上や母上もそうだけど、一部の家臣も知っているよ。

 まぁ、身内ってことで目を瞑ってもらっています。


 次に4面にガラス窓を設置しているので中から外がよく見えるのだ。

 ガラスには曇り防止が施され、更にマジックミラー化して外側から中を見ることはできない。


 ゴーレムに関しては俺が最上位の命令権をもっており、次いでカルラたち4人や護衛の者にも命令権がある。

 動力は魔結晶なので餌は不要だし、不要になったら俺のストレージに馬車ごと収納もできるのだ。

 俺のストレージは時間経過を止めており、生物を入れることができないのでゴーレムはいいけど、生きている馬だとストレージに入れることができなくなるので生きている馬だと不便なのだ。

 まぁ、ストレージ以外に亜空間の倉庫を作って生き物を入れてもいいけど、ストレージを維持するだけでも1日に魔力を1000ほど使うので今は止めておこうという結論に至っている。


 てか、1日に1000もの魔力を消費するってことはたとえ時空属性をもっていてもストレージを使える者は滅多にいないってことだね。

 だって1000なんて魔力はロザリア団長でギリギリ供給できるレベルなので俺を除いて世界最高レベルの魔力が必要ってことだね。

 しかもストレージだけで魔力が空になるから他の魔法を使うこともできないオマケつきだ。

 つまり人間では俺ぐらいしかストレージを使いこなせる者はいないと思っていいだろう。

 いても極少数だね。

 ・・・こんなことが知られてしまえば間違いなく大騒ぎだけど、幸いカルラとペロンは口が固いのでセーフだ。


 話は少しそれたけど、馬車には防御結界も張ってあるし、ゴーレムにも障壁の腕輪以上の防御を施してあるので簡単に言うと動く要塞?って感じかな・・・馬車の窓は開閉できるので俺たちは馬車の中から魔法を撃ち放題だし。


 そんな感じなのだが、護衛が18人もついている・・・

 俺専属の護衛騎士が6人に更に父上が12人追加している。

 それと荷馬車の御者2人だ。

 これが旅を許す条件だったので仕方がない・・・

 こんな感じなのでルーナには屋敷で待機を指示した。

 ルーナは行きたがったが、だって人が多すぎるんだもん。


 俺たちの乗る馬車以外に荷物用の馬車が2台と護衛の騎士たちは全員騎馬だ。

 しかも俺の懐から全員の費用を捻出しているので地味に痛い。

 マジックアイテムの開発費もバカにならないのだから、あまり無駄な出費はしたくなかったよ。



 

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