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041 クラン対抗戦・予選1

 


 クラン対抗戦の予選に参加するのは43チームだ。

 昨年のベスト4はシード権を得ているので本戦からの出場となる。

 そして一次予選で24チームが勝ち抜けとなり、二次予選で4チームが勝ち抜けて本戦に駒を進める。


「第485回クラン対抗戦を今から始める。予選1回目の課題は等身大のシーレンス先生の像を作ってもらう。制限時間は3時間。作業が完了したクランは審査を申請するように。では、はじめっ!」


 俺たちは校庭の指定されたエリアにいる。

 3時間以内に男性教師が発表した課題をクリアして審査を受けなければならない。

 しかしいきなりセクハラまがいの課題を出すとは・・・そういうの好きだよっ!


「像と言えば土か氷よね?」


 カルラの声で俺たちはペロンを見る。

 俺を除けば氷属性は存在しないので必然的に土属性を持っているペロンに視線があつまるのだ。


「あ、あまり土属性は得意じゃないんだけど・・・」


 一歩後退しうろたえながら皆の視線に答えるペロン。


「皆でフォローするから死ぬ気でやりなさい!」


 カルラは平常運転ですな。

 因みに何で皆が俺にやれと言わないかと言うと、カルラが最初に『クラン対抗戦の予選はクリストフに頼らずに突破するわよ!』と宣言して皆が納得しているからだ。

 4人が俺におんぶに抱っこで寄生するつもりならこのクランに存在価値はないと言っていたし。

 うん、良い心がけである!


「頑張ってみるよ。土でいいのかな?」


「石の方が良いんじゃないかしら?」


「でも石だと加工しづらいよ?」


「でも土だと柔らかくて加工しているうちに崩れてしまわないかしら?」


 クララとプリッツの兄妹が材質について協議している。


「土にするわ! 石では短時間で加工ができないといけないし」


 カルラが材質を決定したのでペロンが魔法陣に魔力を込める。

 ペロンは土魔法のギャザーソイルで高さ2m近いの塊を作り出した。

 これだけでペロンの額からは大粒の汗が流れ落ちている。


 ペロンが作り出した土の塊は柔らかくこのままでは加工どころではない。


「クララ、土を固めることはできる?」


「任せなさい!」


 クララは土の塊に近付くと土に魔力を流し込む。


『小さき魔を捧げ、闇の力を注ぐ、彼のものを固定せよ・・・ダークミスト』


 クララの放ったダークミストは闇の霧を作り出し対象に纏わり着いて視界を遮ったり行動を阻害する闇属性の魔法だ。

 そのダークミストを土の隙間に流し込んで接着剤のような役割をさせるってことだな。

 ふむ、上手いことを考えるな。


 俺があの土の塊を加工できる状態にするなら水魔法で土をこねくり回して空気を抜ききったら火魔法で焼き上げて固定したが、これはこれでありだろう。

 まぁ、最初から手をつけるんだったら最近覚えた土属性の上級魔法のアースクリエイトでも良いね。


「プリッツ、風で切り出して頂戴」


「うん、やってみる」


「ペロンは魔力の回復を急いでね」


 カルラはテキパキと指示を出し、プリッツは風魔法で土の塊を削っていく。

 ペロンはマナポーションで魔力を回復させるが、一度襲ってきた疲労感までは回復できないのでしばらく休憩だ。


 プリッツの作業を横目にクララが羊皮紙にシーレンス先生のイメージ図を描き、出来上がった絵を皆に見せる。

 ・・・色気がなさ過ぎるな。

 男性の先生ばかりなんだからもそっと色気を入れるとポイントが高いと思うが、皆が納得しているなら良いか。


 プリッツの魔力量は他の生徒に比べると多い。

 そんなプリッツでも慣れない作業を行うと消費が激しく連続では作業ができない。

 ペロンとプリッツが交代しながら土の塊からシーレンス先生の大まかな輪郭を削り出していく。


 大体の輪郭を削り出した2人は既にマナポーションを10本近く飲んでおり腹が水腹になっているんだろう動くとタプンという音がする。

 ・・・ガンバレ!


「よし、次は私ね!」


 カルラは細部を加工するために右手の人差し指の先に雷を纏わせ土を削っていく。

 大雑把なようでカルラは魔力操作がこの中で一番上手い。

 勿論、俺を除いての話だ。


 時間は過ぎていきもう直ぐ3時間になってしまうというところだ。

 先ほど後15分のアナウンスがあった。


「できた!」


「「「おおお!」」」


 ペロン、クララ、プリッツの3人から歓声が上がる。

 皆で作り上げた作品なので感激している。


 だが、俺は不満だ!

 この出来であれば予選突破できるか微妙なところだと思う。

 だから心を鬼にして言うべきだろう。


「感動しているところ悪いけどもっと細かく作り込みをしないと予選突破はできないと思う」


「た、確かに・・・角ばっている所が多いけど・・・」


 4人は先ほどまでの笑顔が無くなり意気消沈している。

 全力を注いで作り上げた像では予選突破できないと言われれば落ち込むなと言う方が無理かもしれないが、うな垂れていても状況が好転することはないぞ。


「私が仕上げをしてもいいかな? これでも『MIツクール』の一員だし何もしていないのでは気が引けるんだけど?」


「そうね! クリストフも『MIツクール』の一員なんだから作業をしてもらいましょう!」


 ここまで4人で頑張ってきたんだ、俺が少し手を出したっていいよな?


 ・・・

 ・・

 ・


「3時間が経過した。作業を止めるように! 今後手を加えた場合は失格になるからな!」


 ま、こんなものだろう。


 

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