033 決闘3
何だろうこの不毛感は。
バカボンもいい加減諦めて奥の手を出してくれれば良いのにな・・・
「え~っと、ブレナン侯爵家の・・・バーカーさん?」
「ワーナーだっ!」
ちょっとフザケタだけなのにそんなに目くじらを立てて怒らなくてもいいじゃないか!
「そんなことはどうでも良いのですが、いい加減本気を出してくださいよ。あまり遊んでいると私が弱い者イジメしているようでイメージが悪いし」
バカボンはギリギリと奥歯を噛むが、何の工夫も無く中級や上級魔術を撃ちまくっているだけでは俺に傷を負わせることなんて一生できないよ。
魔結晶を無駄に使い続けるだけなのが分からないかな?
「僕の攻撃を防ぐだけで手一杯のくせに言うじゃないかっ!」
「え、私はまだ何もしていないよ? バーカーさんが真面目に決闘しないのならもう終わらせるけど良いかな?」
「フザケルナっ!」
だったらそんな玩具で遊んでおらず、奥の手を使ってほしいな。
取り敢えず、バカボンに危機感を持ってもらうために少しダメージを与えてやるか。
「じゃあ、僕も飽きてきたから攻撃するね」
俺は左手をバカボンに向けて突き出し、火属性のファイアランスを具現化する。
「そんな下級魔術などっ!」
バカボンは防御用の魔法陣に魔力を供給し防御結界を展開する。
それからこれは火属性の下級魔法だからね、その程度の判断もできないのに俺に決闘を申し込むなんて自殺願望者なのかしら?
俺はバカボンの防御結界など構わずファイアランスを発射する。
ファイアランスは高速で飛翔し一瞬でバカボンの防御結界を突き抜けバカボンの左足の足首に命中する。
「ウガァァァァッ!」
俺の放ったファイアランスは高密度の魔力で貫通性を高めているので、バカボンの展開した一般的な上級防御結界などで防げるわけもなく防御結界を簡単に貫通し、バカボンの足首に命中したのだ。
バカボンは倒れこみ左足を抱えて転げ回り痛みに悲鳴を上げている。
俺は一応シーレンス先生がどうするか確認するためにシーレンス先生の顔を見るが、止めに入るか迷っているようだ。
まぁ、左足の足首から下を消失しただけだから決闘を継続しようと思えばできると思うけどね。
バカボンの能力ではこの状態からの逆転はできないと思うのだけど、止めないのね?
それとも別の思惑があるのかな?
『こ、これは・・・火属性の下級魔術であるファイアランスに見えましたが・・・ワーナー君も防御結界を展開したように見えたのですが、クリュシュナス様説明をお願いします』
『はい、あれはファイアランスで間違いありませんし、ワーナー君も防御結界を展開しておりました』
『しかし、ファイアランスは下級の魔術ですが、何故防御結界の効果がなかったのでしょうか?』
『ワーナー君の防御結界は恐らく上級レベルの物だと思います。そして防御結界の効果がないのではなく、ファイアランスの攻撃力が高過ぎて防御結界を貫通してしまったのです』
『上級の防御結界を下級のファイアランスで貫通なんて・・・有り得るのでしょうか?』
『クリストフであれば何も不思議ではありませんね。クリストフが魔法の訓練を始めたのは12歳を過ぎてからですが、そんなクリストフが魔法の訓練を始めてたった6日で魔法を発動させたことは我が家では普通に語られる事実ですし、その最初に発動させた下級魔法で大木を大破させたそうです』
『そ、それが事実でしたら・・・素晴らしい才能と言えると思います・・・あれ、ではクリストフ君は魔法を使い出してから1年ほどってことですか?』
『そうですね、まだ1年は経っていませんが概ね1年ですね』
クリュシュナス姉様、個人情報を漏らすのは止めてください!(2回目!)
「クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!」
バカボンが汚い言葉を連呼しておりますよ。
「もう降参してください。何をしてもバーカーさんが勝つなど有り得ませんから」
「ウルサイッ!ウルサイッ!ウルサイッ!ウルサイッ!ウルサイッ!ウルサイッ!ウルサイッ!ウルサイッ!ウルサイッ!ウルサイッ!ウルサイッ!ウルサイッ!ウルサイッ!ウルサイッ!ウルサイッ!ウルサイッ!ウルサイッ!ウルサイッ!ウルサイッ!ウルサイッ!ウルサイッ!ウルサイッ!ウルサイッ!ウルサイッ!ウルサイッ!ウルサイッ!ウルサイッ!ウルサイッ!ウルサイッ!ウルサイッ!ウルサイッ!」
壊れた?
シーレンス先生は止めに入りそうもないから追い討ちをするか。
と思ったら、バカボンがついに奥の手に手を出すか?!
「殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!」
うわ~、悪役丸出しの台詞だよ。
バカボンが奥の手に魔力を込めるとマジックアイテムが周囲の魔素を大量に吸収し始める。
通常、魔素は人間が取り込み体内で魔力に変換をする。
なのでマジックアイテムが直接魔素を取り込むことは無いと思われているが、バカボンの持っているマジックアイテムは直接魔素を取り込んで魔力に変換しているようだ。
やっと奥の手をだしてきたけど、これって・・・
・・・この闘技場の結界って・・・王級レベルか・・・まずいな。
バカボンのマジックアイテムは帝級の威力を持っている・・・つまり、王級より威力がある魔術を使おうというのだ。
幸いバカボンの魔力では発動に必要な魔力を供給できないので魔結晶を使っているし、それでも不足する魔力をマジックアイテム自身が周囲の魔素を取り込むことで補っているので発動するまでに時間が掛かっているようだが、発動すると観客にも被害が出ることは間違いないだろう。
『何でしょう? ワーナー君の周囲に膨大な魔力を感じます』
『あれは・・・もしかしたらまずいかも知れませんね』
クリュシュナス姉様も気付いたようだし、シーレンス先生をはじめとした教師陣も顔を青くしている。
「ワーナー君、今直ぐその魔術を中止しなさいっ! クリストフ君は今直ぐ逃げなさい!」
シーレンス先生、それはできないよ。
だって、バカボンの目を見てみてくださいな、意識が飛んでいるって感じですよ。
発動させる魔術の威力が大きすぎるので、マジックアイテムに魔力が全部持っていかれバカボンはマジックアイテムに取り込まれているって感じだね。
さて、どうするか・・・
マジックアイテムを壊すのは簡単だが、それだとバカボンはほぼ間違いなく死ぬな。
今、あのマジックアイテムを破壊すると蓄えた魔力が暴走し爆発を起こすだろう。
つまり所持者は爆発に巻き込まれてしまうのだけど、威力が小さければ怪我ですむが今のあのマジックアイテムの魔力量で暴走し爆発したらバカボンの肉体は消し炭になるね。
ん~、悩んでいたら観客席の生徒たちからも魔力を吸い出したぞ・・・
『直ちに避難してくださいっ! 生徒会は避難誘導を!』
クリュシュナス姉様、ガンバレ!
よしあれでいくか。
『虚無の力にて魔を喰らいし者よ、彼のものの全てを奪いつくすことを許す、彼のものの全てを喰らい尽くすことを許す、虚無の主たる我が命ず、出でよ!・・・・・・・・』




