026 自由時間
15年7月6日
誤記修正多数。
自由時間中に決めるべきことを決め、申し込むことについても申し込んだ。
単位修了試験については算術、歴史、魔史、国語、バルムス古代語の5科目について受験することにした。
魔史というのは魔法や魔術の歴史のことで、それぞれの成り立ちやこれまでどのような場面で使われてきたかなどが纏められた学問だ。
勇者召喚のことも触れられているが、詳細は秘匿されている。
俺が単位修了試験を受けないのは魔物学と地理学でそれぞれ授業を受講することにしている。
正直な話、この2科目については時間がなく殆ど勉強をしていない。
因みに魔物学は必須科目だが、地理学は選択科目になっている。
それから実技系は魔術講座、実戦講座、アイテム講座の3科目を受講する予定だ。
実戦講座は必須科目なので外せないし、アイテム講座は選択科目だが興味があるしブリュト商会での実用性を考えて受講を決めた。
魔術講座は対となる魔法講座とどちらかを選択しなければならない半必須の授業なので、俺は魔法講座ではなく魔術講座を受講することにした。
てか、魔術講座と魔法講座は共に受講しても良かったのだが、あまり詰め込んでも大変なので最低ラインをクリアする程度に収めたのだ。
俺は10科目で修了を目指すが、王立魔法学校では3年間で必須7科目を含め最低10科目を修了しないと卒業ができない。
まぁ、他の科目は興味が出たら追加で受講するということで問題無いだろう。
実戦講座は王立魔法学校のカリキュラムの中でも最も重要視されており、パーティーを組んだ3人で魔法や魔術を駆使して実戦を積んでいくというものだ。
言っていることは単純なのだが毎年何人も死傷者が出るそうだ。
どんだけハードなんだと思うが、実際の戦闘を行う以上は仕方がないとも思う。
ちょっと不安です!
「ペロンとカルラはどれだけ単位修了試験を受けるの? 因みに私は算術、歴史、魔史、国語、バルムス古代語の5科目だよ」
「あら、アナタも単位修了試験を多く受験するのですね」
不意に声を掛けられたが、この声は彼女だろう。
声がした方に顔を向けると金髪の巻き髪と真ッ平な胸が特徴の取り巻きを引き連れた王女様が仁王立ちしていた。
「今、失礼なことを考えていたでしょ!」
胸のことはかなりコンプレックスに思っているようだ。
しかしどんだけ勘が良いんだ!
「そのようなことはありませんよ?」
「・・・いいでしょう・・・アナタには負けませんので覚悟をしてくださいましね」
無い胸を張ってはいけません!
「殿下、発言をお許しください」
「・・・何ですの?」
「殿下のご勘気に触れるようなことをしておりましたら気を付けたいと思いますので仰ってください」
「・・・」
・・・何故黙る!
「――――」
王女様は真っ赤になりながら小声で何かを言ったようだが、踵を返して立ち去ってしまった。
いったい何なんだ?!
てか、もし容姿のことを言われたのだったらどうしよう・・・
「クリストフは女心が分かっていないね」
「・・・クリストフ君、もう少し優しく接しましょうね」
何故俺が悪い系の話になっているんだ?!
「なぁ、ペロン。私の何が悪い?」
「ん~・・・興味の無いことには無頓着?」
それ普通じゃないの?
興味ないんだから仕方が無いじゃん!
「・・・」
「そういうのって性格だと思うよボクは・・・」
カルラ君、それは地味に俺の性格に問題があると言っているのでしょうか?
王女様に性格を否定されたらどうすれば良いのだろう?
気持ちを切り替え、今後の予定を3人で詰めていく。
パーティーを組んだ以上は実戦での連携も考える必要があるが、先ずは単位修了試験を乗り切ることだ。
「よし、先ずは単位修了試験を無事に乗りきるぞっ!」
「「おおぉぉ!」」
お前たち、結構乗りが良いな!
「お前たち、五月蝿いぞっ!」
うお、いきなり後ろで大声を出すなよ。お前の方が五月蝿いだろう!
「あっ、すみませんね」
「うわ、ワーナーだよ」
「おい、貴様! 俺様を呼び捨てにするとはブレナン家を舐めているのかっ?!」
カルラがボソっと呟いたのだが、そんな小声でも聞こえるのか、地獄耳だな。
「うわっ、自分の実力じゃなくて家の名前を出すなんて恥ずかしいなぁ~」
あ、思わず本音が漏れてしまった。
え、俺も家名を出してるじゃないかって?
俺は相手が突っかかってこない限り弱い者いじめはしませんからね。
そこのところは分かってほしいなぁ~
「なっ!」
久々に登場したバカボン君が真っ赤な顔をして叫んでいる。
こいつは相変わらず平民差別の言動を続けているしウザイ。
ペロンなんかは俺と仲良くしているせいか、速攻で嫌がらせを受けていたのでペロンに近付くな!とやんわり注意はしておいた。
これで止めるようなら問題ないがコイツは馬鹿だから無理だろうな。
てか、真っ赤を通り越して真っ青になっている。
顔色悪いぞ?
「君は何がそんなに気に入らないのかな?」
「ふんっ! 平民風情と馴れ合う貴様らなど貴族ではないわっ」
馬鹿らしいことを言う。
貴族がそんなに偉いのか?
平民や奴隷が居なければ生きていけない貴族がなんぼのもんじゃい!
「君は本気でそんなことを言っているのかな? もしそうなら何故この学校に入学したんだい? あまりにも御粗末な考え方だよね?」
俺に殴りかかってきそうだったので、足元に小石を作ってやったら躓いて転んでいます。
教室の中からはこの馬鹿の動向に注目していた者たちの失笑の声が聞こえてくる。
「大丈夫ですか? 顔色が悪そうだから医務室に行ったらどうだい? 因みに自分で行ってね。私は連れていく気は無いからね」
「く、五月蝿い!」
バカボンは飛び起き教室の中の者たちを睨みつけてから俺を睨む。
お前が一番五月蝿いんだがね。
しかしここまで馬鹿だと若いからって更正は見込めないだろうな。
どうしよう?
「またアナタですか、幾ら高位の貴族家の者とは言えあまり騒ぎを起こすのは感心しませんよ」
王女様のご登場!
面倒だから王女様に丸投げでいいかな?
「殿下もこう仰っています。お互い頭を冷やしましょう」
俺も煽っている部分はあるし王女様の顔に免じて許してやるからさ、早くどっか行けよ。
と思いながら最早関心は無いとばかりにバカボンに背を向ける。
「貴様・・・決闘だ! 決闘を申し込む!」
「ちょ、ちょっと決闘なんて危ないから止めなさいよ」
カルラが止めに入ったが、バカボンはお構いなしだ。
「五月蝿い、ブスは黙っていろ!」
「何ですって! 誰がブスだって言うのよ! アンタこそ1人では何もできない無能でしょ!」
うは、止めに入ったカルラの方がエキサイトしてますよ。
2人がワーワー騒いでいると王女様の声が響いた。
「お止めなさい!」
「申し訳ありません。殿下」
カルラは王女様にペコリと頭を下げたが、バカボンは完全に頭に血がのぼっているようで回りが見えていない。
お前、貴族云々言うなら王女様にその態度は問題だろう?
所詮は世間知らずのバカボンか。
「まぁ、落ち着いて。それと君からの決闘については条件付きで受けてもいいよ」
仕方がないから俺が収めることにした。
え? 俺が原因だって?
それは違うよ。
バカボン君が俺や俺の友達に不快な思いをさせなければ俺は何もしないのだから。
「条件だと?! 言ってみろ」
「決闘だと言いながら代理人を立てるなんてみっともないことはしないと思うけど、君自身が決闘にのぞむことと、取り巻きをゾロゾロ連れてこられても面倒だし1対1の決闘ね」
「いいだろう! ルールは何でもありだ。死んでも文句は言うなよ!」
「いいですけど、先生の許可は君が取ってくださいね。無許可の決闘は禁止されていますから」
こいつ本当に馬鹿だ。
何でもありなら俺がバカボンを殺してもいいってことがわかっていない。
「いいだろう」
そう言ってバカボンは取り巻きを引き連れ教室を出ていった。
「殿下にはお騒がせしまして申し訳ありません」
「彼は貴方を殺す気でいるようですが大丈夫ですか?」
王女様は決闘を止めはしなかったが、心配はしてくれているようだ。
「何とでもなると思います。殿下にご心配いただけて光栄です」
でも初めての決闘だから少し緊張するかも?
「大怪我をしないように気を付けてください。貴方が居ないと私が首席をとっても不戦勝みたいで後味が悪いですからね」
そう言って踵を返す王女様の動きは優雅だ。
これで胸があれば言うこと無いのだけどね。
うわっ、睨まれた!
「クリストフ君、決闘なんて本当に大丈夫かい?」
「何とかなるでしょ?」
「まったく・・・それよりクリストフは決闘なんてしたことあるの?」
「ロザリア団長に対人戦闘は禁止されていたから・・・」
俺の魔法は下級でも相手が命懸けになるって禁止されていた。
なので対人戦はロザリア団長以外とはしたことがない。
そう、ロザリア団長とは戦闘訓練をしているのだよ、明○君!
「ロザリア団長ってもしかして元宮廷魔術師のロザリア・フォン・エクセル様のこと?」
「そうだよ」
「クリストフ君!」
「うわっ、何だよいきなり大声を出して」
「今度、ロザリア導師に会わせてください。お願いします!」
へ? 導師? 何だ?
ペロンってもしかして御姉さんが好きなの?
確かロザリア団長は今年で24歳だったから、え~っと12歳も年上だよ?
俺は元は30超えのオッサンだからありだけどさぁ~
因みに俺は13歳だが、ペロンやカルラは12歳だ。
「ロザリア導師と言えば最年少で宮廷魔術師となった英雄じゃないか! お会いして少しでもお話を伺えれば一生の思い出になるよ!」
あ~、そういうことね。
ペロンも意外とミーハーなんだね。




