021 魔法陣2
魔法陣には一般的にバルムス古代語が使われているが、明確な意味さえあればどのような言語を使おうと構わない。
このことから俺はバルムス古代語に換えて日本語を魔法陣に使っている。
主に漢字ですね。
大神殿の石板に日本語が書いてあったので、試しに魔法陣に日本語を使ってみたら効果が得られたし、漢字だと文字数が少ないので漢字表記にすることで書き込める意味が多くなる。
つまり付与する効果を通常より多く込めることができるのだ。
そんな感じなので日本語については極秘事項として、魔術師の4人にマジックアイテムに書き込んでいる日本語を教える。
「力のリングは【火魔使三腕力加二十】と記載する。これは【腕力】を20ポイントUPするという意味で、【火魔使三】が火属性の魔力を3使う(消費)を表し、【腕力加二十】が【腕力】を20ポイントUPさせるという意味だね」
簡単過ぎるが故に明確な意味を持っている。
「魔力を3・・・?」
「そう、魔力を数値化することで魔力を制御しているが、それ以外にも周辺の模様も重要だからしっかりと覚えてほしい」
誰でも初めてだと戸惑うものなので、今直ぐ戦力になれと言わないからガンバレよ。
「本来身体強化系の魔法は無属性の代表みたいなものだけど、私の魔法陣は他の方とは違うからね。力は火属性の象徴でもあるので、力のリングは火属性の魔力を込める。だからロックの担当にするよ」
ロックの属性適性は火が上級なので充分作れるレベルだ。
「それと魔力の込め方だけど、他の方は『小さき魔力』などの様に抽象的な表現をするけど、私の魔法陣では数値化しているからね。あ、魔力の数値化は私が独自に測定して決めているのでこれは超極秘事項なので今教えることはしないから」
「魔力の数値化なんて・・・どうやれば・・・」
ロック君、悪いけど今はそれを教えられないよ。
心理の眼で鑑定していますなんて言えないから濁しておくしか無いけど、いつかは説明できるようにしないとな・・・
「守りのリングは【土魔使四耐久加三十】と記載する。これは守りの強さを30ポイントUPするという意味で、【土魔使四】が土属性の魔力を4使う(消費)を表し、【耐久加三十】が【耐久】を30ポイントUPさせるという意味だね。耐久は土属性を込めているのでジャモンに任せるね」
ジャモンの属性適性は土が上級なので、これも問題なく作れるはずだ。
「ファイアボールリングも火の属性なのでロックに任せるよ。【火魔使四火球射】と記載してほしい。【火魔使四】が火属性の魔力を4使う(消費)、【火球】がファイアボール、【射】は発射、するという意味だね。あ、作る優先は力のリングなのでそっちを優先してね」
「ウォータリングは水属性と氷属性で共に下級なのでジュリエッタの担当だね。【水魔使二氷魔使一冷水】と記載するけど、【水魔使二氷魔使一】が水属性の魔力を2と氷属性の魔力を1使う(消費)という意味ですね。【冷水】が冷たい水、の意味ね。ただ、2属性を同時に込めなければいけないのでリングの中では一番難しいかな。ジュリエッタは魔法陣を書くこともそうだけど、2属性の魔力を同時に扱えるように魔力操作の訓練もしなきゃね」
俺は全員の顔を見回し一呼吸を置く。
「ここまではリング系の付与だね。どれも下級レベルの魔法陣なので皆が中級や上級の魔法を操れればもっと高威力の物が作れるだろう。しかし、私の許可が無い限り今の魔法陣をリングに記載してもらう作業だよ。何か質問はあるかな?」
ロックが手を挙げたので指名する。先生の気分だ。
「何故下級魔法の付与ばかりなのでしょうか? クリストフ様のお話では火属性が上級まで使える某はもっと高品質のマジックアイテムが作れると言われているように聞こえました」
「そうだね、もっと高品質のマジックアイテムを作ることはそれほど難しくない。・・・あまり高品質な物を市場に流通させるとこれまでのパワーバランスが崩れるので、投入するにしてももう少し後だね。だから今は作ることを禁止する」
俺の意図を分ってくれたのかロックも他の者もそれ以上は何も言わなかった。
「ロック、ジャモン、ジュリエッタはこの羊皮紙に魔力を込めずに魔法陣を記載してみてくれ。初めて使う文字だから形をしっかり覚えろ」
「あの、私は・・・」
「セルカにも仕事があるよ。でも先ずは3人の魔法陣を見てからだね」
「・・・はい」
心配しなくてもセルカにもしっかり働いてもらう。
あれ? 心配してないって?
3人にはしっかりと文字を書けるようになるまで筆記をしてもらう。
それまでは魔法陣をリングに書くことはさせない。不良品ばかりできるからな。
ロックは興味津々だったし結構器用なので直ぐに覚えそうだ。
ジャモンも問題なさそうだが、ジュリエッタは少し時間が掛かりそうだ。
ジュリエッタ君、【腐二鈴永】・・・スズが永遠に腐る? って何だよ!
てか、何気に難しい漢字だし!
「ジュリエッタ、見本をよく見て書いてね」
「・・・はい」
「さて、セルカにはポーションを作ってもらう」
「錬金術は得意では・・・」
苦笑いのセルカ君。
「気にしなくてもいい。私も錬金術は使えない。私のポーション作成法は魔力付与だから」
「それって錬金術より高度って言われていたと思いますが?」
「そうかな? 私は錬金術を試したことが無いから分らないな」
諦めの苦笑いのセルカ君。
「先ずは水属性の下級魔法のアクアで瓶の中を満たし、そこに無属性の魔力を込める。やってみて」
「クリストフ様、無属性の魔力を込めるのはどのようにすれば宜しいのでしょうか?」
「ああ、そうだな・・・じゃぁ、先ずはアクアで瓶を満たして」
「はい」
『小さき魔を捧げ、小さき水を作りて、瓶を満たせ・・・アクア』
ふむアクアは問題なしだな。
「では今のアクアと同じぐらいの魔力で『小さき魔を捧げ、無の力を与えん・・・ピュアマナ』と唱えてみてくれ」
『小さき魔を捧げ、無の力を与えん・・・ピュアマナ』
ボンッ!
「どうやら魔力を込めすぎたようだね」
「すみません」
ストレートヘアのセルカがアフロになっているので笑ってはいけないと思うのだが笑えてしまう。ププププ。
「プ・・先ずは魔力水を上手く作れるようになってね。ププ・・・その先はその後で教える・・・よ」
「クリストフ様・・・酷いです、グスンッ」
「ご、御免」
こんな感じで4人はそれぞれが担当するマジックアイテムを作れるように努力を重ねる。




