020 魔法陣1
古アパートは地上4階の建物で1階は店舗にも簡易工房にもなるスペースで、2階から4階には合計9部屋の居住スペースがある。
王都でこれだけの物件を建てる場合、土地と建物を含め1千万Sを超える資金が必要になるだろうと商業ギルドの職員が教えてくれた。
日本で言う1億円かぁ~
「・・・これはまた酷いですね」
「・・・」
築180年という上物さえ無ければ土地だけでも500万S以上で売れる物件だと言う。
商業ギルドの職員からは改築という言葉が出ていたが、この物件を改築するのだったら建てなおした方が安いのではと思う佇まいだ。
しかし、取り壊すだけでも150万Sという見積もりが出ており、更に瓦礫の撤去や処分には100万Sがかかり、同規模のアパートを建てるのにも500万S以上・・・果てには貴族のカツアゲにあうと・・・金ばかり飛んでいくな。
だが、俺だったら貴族に嫌がらせをされてもやり返すだけの後ろ盾があるし、建物に関しても裏技があるので、何とかなるだろう。
「まぁ、良いでしょう。150万Sなら購入します。売主とご相談してもらえます?」
一応、足元を見てみた。
だめでも200万S払えばいいしね。
「・・・分りました、今日中には回答できるように手配します」
「宜しくお願いします」
他の2件も見せてもらい昼前には店に戻った。
相変わらず店は盛況だった。
奴隷たちは客扱いが不慣れではあるが苦労しながらも何とか捌いていた。
そんな中、元カフェ店員のプリエッタは接客慣れしており、即戦力になっている。
「おーい、クランプ、ベッケナー、ベネゼッタ~」
「何でしょうか?」
3人は直ぐに俺の前に来て、ベネゼッタが代表して俺が呼んだ理由を尋ねてくる。
「近くのソラマメ亭という食堂で弁当を30人分買ってきてくれ」
「30人分?」
俺に、フィーリアに、奴隷が11人に、警備を頼んでいる兵士が1人に、俺の護衛が4人で18人だが、よく食いそうなのが何人もいるから30人分にした。
「俺の護衛の騎士たちを入れて18人だが、お前たちはよく食いそうだからな。多くても食いきるだろ?」
納得した顔をしたベネゼッタと飯がたくさん食えそうだと喜ぶクランプとベッケナーだった。
「買うものは任せるが、色々な弁当を買ってきてくれ」
「「「分りました!」」」
俺はベネゼッタに大銀貨5枚を握らせ3人に弁当を買いに行かせた。
何故あの3人に弁当を買いに行かせたかと言うと、接客が似合わないゴツイ3人だったからだ。・・・ただそれだけだ。
まだ昼前だったのが幸いしてかゴツイ3人はそれほど時間を掛けずに大量の弁当を抱えて戻ってきた。
3人が買ってきた弁当を皆に分け与えるのだが、12個は余る。
ゴツイ3人に護衛騎士4人に兵士1人の合計8人には2人分の弁当を渡す。
それでも4個あまるので肉体派以外の者に聞いたら元猟師のベネスとドワーフの魔術師のジャモンがお代わりを持っていった。
残り2個はゴッツイ3人が嬉しそうに持っていって分けていた。
おい、おかずの取り合いで喧嘩するなよ・・・よく食うやつらだ。
昼を済ませると先ずはゴツイ3人の装備を購入をするために武器屋に足を運ぶ。
3人は元々金属鎧を身に着けていた前衛系だが、店で金属鎧を身に着けた3人が居ると想像しただけで暑苦しいので防具は見栄えの良い革鎧にロングコートを買い与える。
武器は片手剣を与えるが、常時装備はしないが槍と大斧も購入した。
ついでに盾も購入した。
店の中で常時装備するのは片手剣だけだが、不測の事態が発生した場合には槍や大斧の使用を許可する。
で、購入した装備を持って帰り、早速強化を始める。
この時は魔術師4人を呼び俺の作業を見せて勉強させる。
「「この魔法陣はいったい?!」」
マジックアイテム馬鹿のロックとジャモンが俺の魔法陣を見て驚く。
俺の魔法陣は大神殿で石板を見てから進化を遂げたのだ。
つまり魔法陣に使う文字を日本語にしたのだ。
俺としては母国語?の日本語は明確な意味を持たせやすいし、漢字だと魔法陣に一般的に使われているバルムス古代語より文字数が少なくて済むので重宝している。
因みに俺たちが住む中央大陸で使われている言語はヘーカト共通語で、魔法陣に使われるバルムス古代語とは違う。
時代の移り変わりで文字や文化も変わるのですよ。
「今、4人に見せた魔法陣に使っている文字はバルムス古代語ではない。この文字は特殊な文字なので他言はしないように!」
「「「「はい!」」」」
魔術には魔法陣が必要だ。
そして魔法陣は一般的にバルムス古代語で意味を持たせるのだが、意味を持った文字であればバルムス古代語に拘る必要はない。
このことは既に発見されていることで特に珍しいことでも発見でもないのだが、バルムス古代語の使い勝手が良いので一般的に使われているのだ。
つまり明確な意味さえあればどんな言語を使おうと魔術は発動するので、過去には独自の魔術言語を作り上げた者も存在する。




