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019 待遇

 


「私はブリュト商会の会頭だが、色々やることがあるのでブリュト商会のことはこの副会頭で店長のフィーリアに全てを任せる。皆にはフィーリアの指示に従いブリュト商会を盛り上げてほしい」


 閉店後に奴隷たちとフィーリアの顔合わせを行いフィーリアがブリュト商会の舵取りを行う者であると紹介する。


 まだ子供のフィーリアがブリュト商会のナンバー2だと聞いた奴隷たちに動揺が走る。

 しかし、このフィーリアを舐めてはいけないぞ。

 フィーリアはあのハンナのスパルタ教育を生き残り、ハンナに認められた侍女界の勇者なのだ!


 俺の専属侍女だったルーナがハンナに認められるまでになるのに3年は掛かったと言っていたから驚異の成長力だ!


「フィーリアです。クリストフ様のために命懸け(・・・)でブリュト商会を盛り立てていきます」


 いや、命はかけなくてもいいよ・・・


「フィーリア、店員と在庫管理を行ってもらう4人だ。鍛えてやってくれ」


 クララ、ペネス、プリエッタ、マーメルの女性店員候補の奴隷たちが自己紹介をしていく。


「こっちが警備員の3人だ。装備は明日用意する」


 クランプ、ベッケナー、ベネゼッタが得意武器を含めて自己紹介をする。


「魔術師の4人は明日からマジックアイテム作りを教える。そのつもりでいてくれ」


 ジュリエッタ、ロック、ジャモン、セルカの4人が自己紹介をする。


「皆には交代で休みを与える。基本的には6勤1休だ。休みは今の3班内で被らないように調整する。勿論、フィーリアも休めよ」


 フィーリアと奴隷たちは休みを与えるということに驚いていたが、そんなことはどうでもいい。

 要は奴隷たちをいかに効率よく働かせるかであり、死んだ目の奴隷より生き生きとした奴隷の方が仕事の効率が上がるだろうと思っているから、それなりの環境は整えてやるつもりだ。


「それと年末年始と収穫祭の頃には連休を与える。当然、店は休みにするから事前に店先に張り紙をして告知もする」


 更に連休などというシステムまで入れてしまったので、全員の目が半眼だ。


「奴隷たちの給金は月に金貨1枚だ。売り上げによってボーナスも出すし、衣食住はこちらで用意をする。給金をどう使うかはそれぞれの自由だが、私が皆を購入した倍の金額で皆を奴隷から解放するから自分を買い戻すために貯めても良いと思う」


 奴隷たちが自分を買い戻せると目を見張る。

 魔術師たちは比較的高かったのでより多くの金が必要だが、金を貯める目標になるだろう。


「あの、質問を宜しいでしょうか?」


 魔術師のジュリエッタが質問の許可を求めてきた。


「何だ?」


「売り上げによってボーナスを出すと仰いましたが、ボーナスとは何ですか?」


 この世界にはボーナスという言葉は無いのか?


「ボーナスというのは特別報酬と考えてくれればいい。つまり売り上げが多ければ皆に給金以外の報酬を払うということだね。勿論、ボーナスについては働きによって差をつけるので頑張って働いてほしい」


 想定の売り上げは遥かに超えることになるし、計画を上方修正して思い切って奴隷を大量購入した。

 労働意欲を向上させるために売り上げが想定以上になった場合はボーナスとして従業員に還元してやろう。

 当然のことだが売り上げを伸ばすために商品の充実も図る必要があるけどね。


 奴隷に対して休みや給金を出すということはこの世界の常識ではないことなので俺の話を信じられないといった感じの奴隷たちだったが、最後にフィーリアが纏めてくれた。


「皆さん、私も元は奴隷でしたがクリストフ様によって命を助けていただき、更に奴隷から解放していただきました。クリストフ様は他の方々のように奴隷を物のように扱わないお方です。ですから皆さんがクリストフ様を信じれば必ず良い未来が訪れると思ってください!」


 奴隷たちが「おおおー」とか言って俺の言葉を全部ではないだろうが、ある程度は信じた感はある。


「最後に! 私への意見はドンドン言ってほしい。一々、発言の許可を求める必要は無い。それと仲間を害することは許さないが多少の喧嘩程度は許す。但し、弱い者虐めは許さない! 喧嘩を売るなら自分より強い者に売れ!っていうのが私の考えだ。解ってもらえたかな?」


「はい!」


 全員がしっかりと返事をしてくれた。

 取り敢えずこんな感じで良いだろう。


 フィーリアに奴隷を任せて近くの宿屋に連れていってもらった。

 俺はと言うと商業ギルドに向う。

 皆が住める家と作業場を見繕う必要があるのだ。


「それでしたら、この物件などはいかがでしょうか?」


 見せてもらった物件は店から近い場所にある4階建ての建物だ。

 って、これアパートじゃん。


「1階部分は店舗にも使えますが、簡易的な工房としても使えます。それと2階から4階にそれぞれ3部屋の合計9部屋ありますので充分の居住スペースがあります。ただ、築180年以上の物件ですので色々と手直しが必要なので買取が前提になり、改築はお客様の負担になります」


 いらねぇな。

 今直ぐ入居したいし、何よりこれだけの敷地の物件を買い取りだと金が足りないのが分りきっているしな。


「販売額は200万Sです!」


「え?」


「200万Sです」


「・・・何でそんなに安いの?」


「この物件の持ち主が他界されご親戚の方が相続したのですが、古い建物なので入居者もおりませんし取り壊すにも改築するにもそれなりの費用が必要なのです。その費用が捻出できず、所有者には毎年納税の義務が発生するためにできるだけ早く処分をしたいと言われております」


 なるほど、相続したは良いが不採算物件というわけか。・・・だが、本当にその程度なのか?


「それだけですか?」


 商業ギルドの店員は苦笑いをして話を続けた。


 このボロアパートは簡単な改築程度では入居希望者は見込めないし、1階が店舗なのだが借りたいと言う商人は滅多にいないと思う。

 つまり立地が悪いのだ。

 立地と言っても大通りに面しているし、人通りは良いのだ。・・・そう人通りは多いのでそこだけを見れば優良物件だ。


 しかし今は直ぐ横に下級貴族が経営する店ができており一般人がわざわざトラブルの中に飛び込むことはしないと思う。

 しかも両横(・・)に下級貴族の店が存在するのだ。


 この物件の改築をするには両隣の下級貴族の店に工事で迷惑を掛けることになり多額の補償金を要求されるのだと言う。

 取り壊して新築するのも同様で、あまりにも馬鹿馬鹿しい額を要求されるとのことだ。

 だが、俺であれば、親の威を借る俺であれば下級貴族が経営する店とトラブルにはならないだろう。

 無茶を言ったら逆に潰される程度のことは考えられる貴族であればだけど。


 この神聖バンダム王国は他国に比べ人種差別は無い国だが、それでも貴族の傲慢さは目立つのだ。

 これでも他国よりはマシだと聞いたことはあるが、さりとてこの世界で連綿と続く貴族階級の特権意識は消えることは無い。

 ここまで聞いた程度では貴族と上手く付き合う方法を考えれば良いのではないかと思うだろう。

 だが、貴族はそんなに甘くはない。

 大げさな言い様だが日本で言う893の事務所が両隣にあると思ってもらえれば良いと思う。

 更に貴族相手では国家権力が当てにできないのでもっとタチが悪いと思ってもらえば良い。


「明日の朝一でその物件を見せてください。気に入ったら購入します」


 それから2物件ほど資料を見せてもらい、古アパートの購入をしない場合は他の2物件を見せてもらうことにした。


 

サイドストーリーの『我が侭な創造神様』もありますので良ければ読んでください。

でもネタバレが含まれていますのでご注意くださいね。


http://book1.adouzi.eu.org/n8657cs/

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