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017 開店

15年6月27日

誤記修正多数。

 


 いや~盛況、盛況。


 開業記念の特別価格なのでポーション類もリング類も一律3割引で販売している。

 これで購入した者から口伝いに噂が広がればこっちのものだ。


「傷ポーション10本お願いします!」


 ほいほいっと、忙しや、忙しや。

 人手が足りないのでフィーリアが販売窓口で俺は倉庫からの品出しをしている。

 警備用に派遣してもらった兵士にも客の整理を頼んでいるし、今日は追加報酬を個人的に与えてやろう。


「上白糖を5壷!」


 フィーリアの口調が乱暴になってきた。

 目が血走っている・・・

 そういえば昼飯も食ってないや。

 後でお菓子を出してやろう。


 夕方になり客足も止まったので店を閉める。

 初日は忙しかったが特に問題も無く終わった。

 一応、父上に了承を得てブリュトゼルス辺境伯家の紋章を看板に入れているので変な奴は現れないと思うが、そこら辺はしばらく様子見だ。


「皆さん、今日はご苦労様でした。フィーリアもお疲れ様」


「疲れましたです」


 フィーリアの頭を撫でてやると、フィーリアは嬉しそうに尻尾を振る。


「これは少ないですが、取っておいてください」


 今日は初日なので特別に3人の兵士を派遣してもらった。

 おかげで客の整理に役立ってくれたし、3人も昼食抜きで頑張ってくれたので昼食代と特別報酬として3人にそれぞれ1万Sを渡す。


「「こ、こんなに!?」」


「こんなに貰えません」


 平の兵士の月給は3万Sほどなので、1万Sは月給の3分の1にもなる。


「今日は特別忙しかったので特別報酬です。それに皆さん昼ご飯も摂っていないでしょ? 明日は忙しくないと思いますので今日だけですし、それに開店のご祝儀だと思ってください」


 派遣料はブリュトゼルス辺境伯家に支払うので俺が兵士に直接お金を渡すことは無いのだが、今日は忙しかったし開店のご祝儀だ。


「「「ありがとうございます!」」」


 3人の兵士は思わぬ臨時収入に顔を綻ばせ帰っていった。


 当然、俺の護衛たちにも報酬を与える。

 護衛たちも接客とか手伝ってくれたしな。


 残った俺とフィーリア、そして護衛の6人を連れて近くの食堂に行って食事を摂る。

 さすがに腹が減ったので直ぐに作れる物を中心に頼んだ。


「クリストフ様、明日は忙しくないと思っておいでですか?」


「そうだなぁ、口コミで噂が伝わるのに少し時間が掛かるだろうし、数日は暇になると思ってるよ」


 フィーリアは少し考え込んで口を開く。


「私は明日も忙しいと思います。なので食事が終わりましたら、在庫を補充してほしいと思っております」


「何故そう思うんだい?」


「今日のお客様の3割は女性でした」


「ほ~、でも3割だろ? 3割の人が口コミで噂を広げても今日ほど忙しくはならないだろう?」


「女性のネットワークはバカにできません!」


 何か妙に納得してしまう理由だな。


「分かったよ、できるだけ在庫を積んでおくよ」


「ありがとうございます」


 夕食後にまた仕事が待っていると思うと食事を味わうより早食いになってしまう。


 食堂からの帰り道、今日は徹夜を覚悟する。

 しかしフィーリアは売り子なので早めに休ませるつもりだ。

 まだ10歳のフィーリアに徹夜は厳しいだろうし、それに目の下にクマを作った売り子なんて見たくないしな。


「ゲール、今日は店に泊まるから屋敷にはそう伝言を頼むよ」


「しかし奥方様がご心配されますぞ」


「母上には帰ってから謝っておくよ」


 ゲールは仕方が無いなという感じで部下に指示を出す。

 因みに俺には専属の護衛が6人いるのだが、このゲールが隊長だ。


 店に帰るとフィーリアは今日の売り上げの確認と空きが目立つ棚へ商品の陳列を、ゲールたちは交代で休憩しながら警備についている。

 俺はと言うと意外にも一番売れた上白糖の生産を一気に進め、ポーション類、リング類を補充していく。

 この上白糖の報告をした時に父上がいやらしい顔をしたのを覚えている。

 この上白糖の値段も父上からの要望が無ければここまで安くはしなかったしね。

 俺は今から政治的なことに顔を突っ込みたくないし、敢えて理由は聞いていない。

 ・・・想像はできるが、今は無視をしておこう。


 補充が完了したのは夜中の2時を回っておりなんとか徹夜は回避できたと胸を撫で下ろす。

 フィーリアには2階の自室で休むように言い聞かせたのだが、店のカウンターで明日の準備をしているし、護衛の者たちも思い思いの場所で休んでいた。

 皆には苦労かけるね。


「フィーリア、早く寝ろと言っただろ」


「クリストフ様御一人を働かせ私が寝るなんてできません!」


「まったく・・・もう在庫補充も終わったから寝るよ。だからフィーリアも自室で寝るんだぞ」


 フィーリアを無理やり自室に押し込め俺もさすがに疲れたので別室で睡眠を取ることにした。

 売り上げの報告は明日の朝聞こう。

 ・・・おやすみ。



 物音がするので目を覚ます。

 陽は出ており外は明るくなっていた。

 時計を見ると6時を少し回ったところで、店に行くと護衛たちは昨日の場所には居なかった。


「おはようございます、クリストフ様」


 後ろからフィーリアが声を掛けてきた。


「お早う、フィーリア」


「朝食の準備ができていますので、奥へお越しください」


 どうやら食事の仕度をしていたようだ。

 一応、この店舗にはキッチンも食堂もあるし、2階に居住スペースもある。

 ただ、残念なのは風呂がないことだ。

 屋敷に戻れば風呂があるので、今日は屋敷で風呂に入ることにしよう。


 この世界には風呂の習慣はあまり定着しておらず、貴族の屋敷には風呂はあるが毎日入るということはない。

 そんな中、俺はほぼ毎日風呂に入るので皆に変な目で見られることも多々ある。


 もっと稼いで俺の店を一から作る時は風呂も設計にいれてやる!


 朝食も済み、開店前に昨日の売り上げをフィーリアから報告を受ける。


「昨日の売り上げは傷ポーションが・・・・・・合計で1,613,300Sとなります。凄いです!」


「そうか、思ったより売れてしまったな。商品も増やさないといけないしなぁ~」


 実際、店を出すには品揃えが少ないのでもう少し商品の種類を増やしたいと思っていたのだ。

 それと俺が生産しなくてもいいような商品も欲しいのでそういった物を考える必要がある。


 何か、王立魔法学校に行っている場合では無くなってきた気もする・・・


 

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