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013 入試2

15年6月23日

少し加筆しております。


15年6月27日

誤記修正多数。

 


「おい、ブレナン侯爵家のワーナー様を侮辱してただで済むと思っているのか?」


 何これ、ヤクザですか? てか、チンピラですね!


 さて、どうするか?

 ここでこいつらを再起不能にするのは簡単だが、それだと俺の入学がパーになりそうだからなぁ~。


「放してもらえますかね。服に皺がついてしまいますから」


「この野郎!」


 ソバカス豚が俺を殴ろうと手を振りかぶる。

 1発くらい殴られてやるかな。

 そうすれば正当防衛でこいつらを心置きなく地獄行きにできるしね。


「お止めなさい!」


 女の子が止めに入ってきたが、ソバカス豚は振り下ろしかけた拳を止めきれず俺の顔を殴る。

 ハッキリ言って腰が入っていない拳など痛くも痒くも無いが、一応は痛がっておこう。


「何だきさ・・・ドロシー様!?」


 ブレナン侯爵家のワーナー君が様を付けて呼ぶってことはそれなりの身分なんだろうな、この娘。


「貴方たちは大勢でたった1人を囲んで卑怯ではありませんか!」


 女の子の剣幕にブレナン侯爵家のワーナー君たちはタジタジで、何度か頭を下げてこの場を去ろうとした。


「そこの体の大きなアナタ、こちらの方に暴力を振るって謝りもせず逃げるのですか?」


 ソバカス豚を睨みつける女の子っていうのもシュールな図だな。

 ソバカス豚は俺を睨みつけ「すまん」と小声で一言だけ吐き捨てるように言って立ち去る。


「大丈夫ですか?」


「ええ、大丈夫ですよ」


 ドロシーと呼ばれた気の強い女の子は俺に一言だけ掛けて立ち去っていった。


 何だよ、ここはテンプレで行けば俺に惚れるパターンだろ?

 殴られただけだけど・・・


 まぁ、真ッ平な胸の女の子には興味ないけどね。

 って、何か睨まれた!?


 とりあえず、ソバカス豚には時限爆弾をセットしておいたから実技の頃にはまともに動けないだろう。

 殴られてそのままにするなんて温いことはしないからね。

 やられたらやり返す!

 テレビのドラマの台詞ではないが、倍返しだ!


 その後、俺が休憩所を後にしようとした時にまた声を掛けられた。


「君、勇気があるね。殴られたけど・・・」


 黒髪黒目で小柄な女の子だ。

 ただ、胸はそこそこ育っているし、顔も日本人的な可愛さがある。


 この世界で黒髪黒目は珍しくない。

 勇者と言って日本人ポイのが何人も何十人も召喚されているので、その子孫であれば黒髪黒目になることもあるからだ。


「別に思ったことを言ったまでですよ。それからただ殴られたわけではないのでね」


「ふ~ん、ボクはカルラ・フォン・アダチね。この王立魔法学校に入学することになったら又会えると思うけど一応勇者(仮)君に挨拶しておくね」


 ボクっ娘来ました!


「勇者(仮)君って何だよ?」


「あんなバカでも一応は高位の貴族だしね、そんなバカに普通のことを言えるのは勇者(仮)ですよ」


「高位の貴族をバカ、バカと連呼できる君も勇者(仮)じゃないか?」


「そんなこと無いよ。ボクは面と向ってバカとは言わないしね。あ、実技試験始まっちゃうね。名前だけ教えてくれる?」


 あ、名前名乗ってなかったっけ?


「私はクリストフ・フォン・ブリュトゼルス。ブリュトゼルス辺境伯家の次男です」


 俺の名乗りが終わったところで実技試験の開始の合図が鳴ったので、カルラは「またね」と言って走っていった。


 さて、俺も行きますかね。

 一応、ブリュトゼルス辺境伯家も高位の貴族だから早めに呼ばれるだろう。


 で、最初に呼ばれたのがソバカス豚が俺を殴った時に止めに入ってきた胸の真ッ平なドロシーと呼ばれた女の子だ。

 心理の眼で見たら、あらビックリ! 王族ですね。第3王女ってなってます。


 ドロシー王女は1人別室に呼ばれ、数分後に戻ってきた。


 実技試験は魔法の発動か魔法陣を書いて発動させることで試験官4人が採点するそうだ。


 次に呼ばれたのはあのバカボンのブレナン侯爵家のワーナーだ。

 取り巻きが居なくて大丈夫か?

 1人で歩けるのか?


 馬鹿なことを考えていたらバカボンが帰って来て俺の名前が呼ばれた。


「次はクリストフ・フォン・ブリュトゼルス君」


 王族、侯爵家のバカボンの次は辺境伯家の俺ってことか。

 会場がザワ付いたのは何でだろう?

 あ、バカボンの取り巻きたちが青い顔をしている。

 それもそうだろう、ブリュトゼルス辺境伯家の俺を殴ったんだからね。

 バカボンが助けてくれると思わないことだよ。


 俺が会場の外に出ていこうと歩いていたら、ドロシー王女がガン見してきたし、バカボンには睨まれたし・・・無視だ無視!


 別室に通されると試験官が4人奥に偉そうに座っていた。


「失礼します。クリストフ・フォン・ブリュトゼルスです」


「クリストフ君、中央に立ってください」


 一番若そうな男性試験官が立ち位置を指示してきた。


「今からクリストフ君に魔法か魔術を見せてもらいます。得意なもので良いですが、攻撃系ですとそちらの人形に向けて放ってください。この部屋には上級の防御結界が張ってありますので思いっきりやってください」


「失礼ながら、上級の防御結界では私の攻撃魔法に耐えられないと思いますが、宜しいので?」


「ははは、本気で言っているのかい?我が校が誇る防御結界の達人が張った結界だよ? 大丈夫だから」


 顔は笑ってはいるが、目が笑っていないぞ。

 若い者が道を誤ったら年配者が正してやるのが良いと思うが、他の3人は静観って感じだな。


「はぁ、では思いっきりやらせてもらいます」


 とりあえず、壁の向こう側に誰か居ると大変なことになると思うから心理の眼で確認っと。

 建物を壊しても俺のせいじゃないからね。アンタがやれと言ったのだからね。

 火や水は後始末が大変そうだから、光属性の特級魔法の『サン・レイ』を放ってやるか。


「・・・サン・レイ」


 俺の翳した掌から魔力が抜け、光を高集束させた高熱のレーザーを放った。

 資料によれば昔の勇者が得意としていた特級魔法で範囲攻撃ではなく単体攻撃用の魔法で、攻撃力は王級に匹敵する威力の魔法だ。

 ただし、魔法構築が難しいらしくあまり使われない。


 当然のことだが、上級程度の防御結界などでは『サン・レイ』を防ぐことなどできなかったので、防御結界を破り後方の壁を融解させ3部屋分の壁に穴を開け校舎に穴を開けてやった。


 この騒動で急遽試験会場が変更されたし俺は校長室に呼び出されてしまった。


「何か言うことはあるかね?」


「はい、私が上級の防御結界程度では私の攻撃魔法に耐えられないと訴えましたが、試験官殿が聞く耳を持たずやれと言った結果ですので、私に落ち度は無いと思います」


「そうか、試験官がな・・・」


 試験官でも教師でも、もう少し思慮深く考えることを覚えると良いと思います。

 何でもそうですが、見た目だけで相手を判断すると大怪我をしますよね。

 今回のことは若い試験官の教育費だと思ってくださいね。


 校長だと思うが、黒髪に白髪混じりの頭髪と顔の皺が苦労をしているような雰囲気を醸し出している。

 そんな校長は俺の後方で立っていた付き添いの女性の顔を窺っているようだ。

 この女性は試験会場にも居たので俺の証言について確認しているのだろう。


「あい分かった、今回の件は試験官に()落ち度があったので不問とする。帰って宜しい」


 俺が校長室を出る時に校長が頭を抱えていたのが印象的だった。

 こうして俺の入試は終わったのである。


 

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