少女 降り立つ
「Where are you from ?」
「じゃ Japan.」
「What's your purpose of your visit?」
「…………For sightseeing.」
英語に悪戦苦闘しながらも降り立ったニューヨーク。
ついにたどり着いた。
「体ガチガチだよもう……。」
背中を丸めてから大きく伸びをする。
「ここが、アメリカ。」
早く見て回りたい気持ちを抑えつつ空港を出る。
「先ホテルに荷物置かなきゃ。」
これから2週間のアメリカ生活が始まるんだ。
ワクワクしながらホテルへ向かう。
街は賑わっていてまさに自由の国って感じだ。
「~♪! ~♪!」
すごい迫力のサウンドに思わずサイネージを見るとそこには鬼気迫る表情で歌うアーティストのライブ映像が映し出されている。
「セラだ……。」
大量の汗を流しながらも歌うその顔は美しかった。
「セラのライブはパワフルよね!」
「CDですら周りが震えるぐらいの迫力だからな!」
「セラは音楽界の自由の女神だ!」
サイネージを見て人々は口々にセラを褒めたたえている。
「音楽界の自由の女神……。」
羨ましい。
あれだけ音楽ができたら楽しいんだろうな。
背中にのしかかる相棒が酷重く感じた。
サイネージをこれ以上見る気にもなれずホテルへと足を進める。
「え?」
予約したホテルに着くとドアには
「CLOSE」
という赤い看板がかかっていた。
「なんで?なんで?」
スマホで調べると昨日付で閉業したらしい。
「じゃあ予約取れるようにすんなよ!!」
幸いにも現地払いだったからお金は取られてないけど泊まる場所なんて今更探せない。
「とんぼ帰りするしかないの?」
泣きそうになりながら周りをキョロキョロする。
周りの人は見向きもしない。
ぐぅぅ。
お腹も空いたしもう嫌。
来たの間違いだったのかな。
足を引きずりながら歩いているといい匂いがした。
まぁ帰るにしてもご飯は食べよう。
「ダイナーH?」
ドアを開くとそこはハンバーガーショップらしい。
肉のジュウと焼ける音とトントンという野菜を切る軽やかな音が響いている。
メニューを見るとボリューミーなものばっかりだ。
「食べ切れるかな……?」
はぁ。
全然決まんない。
店内には誰もいないし店員さんもこっちを伺いながら作業してるからそこまで気まずくは無いけど……。
もう一度メニューに目を落とす。
カランカラン
新たに客が入ってくる。
や、やばい!急がなきゃ!
でもそう思えば思うほど決まらない。
どうしよう譲る?店を出る?
あわあわしていると
「あなた、ここ始めて?」
少しカタコトな日本語が後ろから聞こえた。
静かで重たい雰囲気の声だ。
「え、い、いえす。」
「hum……。これ、小さくて食べるの簡単。」
後ろから伸びてきた腕に驚いて振り向くとそこには金髪を黒い帽子の中に入れ、サングラスをかけている女性がいた。
アメリカ人っぽい?
なんて言ったらいいかわからずこくこく頷いていると女性は少し笑って
「Two,please.」
と言った。
綺麗な発音をぽかんと聞いていると彼女は財布を取り出してお金を払ってしまった。
「あ!待って!wait!wait!」
ガサゴソとカバンを漁る私の手を触って彼女はヒラヒラと手を振った。
「んふふふ。いいよ。」
そう言うと私のキャリーを引いて席に持っていってしまった。
「え!」
急いで彼女を追いかけると1番奥のふたりがけにいた。
「あなたは、Japanese?」
席に座ると彼女は聞いてきた。
「い、いえす。」
「ah〜なに?しにきたの?」
「観光……trip!」
「ギター持ってるのに?」
彼女は私が持っているギターを指さした。
「あ、うん……。」
なんだか責められてる気がして私は下を向いた。
「ホテルでギターできるの?」
「ううん。もう帰るの。closeって……。」
「when……いつ来たの?」
「Todayだけど……。」
「what a……。」
彼女は考え込んでしまった。
そうだよね気まずいよね……。
お金払って帰ろうかな。と思っていると彼女がパンっと手を鳴らした。
「家来ればいいよ。」
「え?」
いやいやいや。素性も分からない人の家なんて泊まれないよ!
「怖いから大丈夫!帰れる!」
「そうなの?私怖くないよ?」
「いや!知らない人は怖いよ!」
あぁ〜!と彼女は納得したように頷いた分かってくれたのだろうか。
「I'm Sera. Sera Lauren. Nice to meet you.」
そう言って彼女は握手を求めてきた。
まるでこれでいいでしょ?というように。
……ってえ?セラっていった?セラ ローレンって言った?!
「え!セラ? 歌手の?」
「かしゅ……?」
「Singer?!」
「そう。」
彼女は頷いた。
「嘘だ!」
「だってセラは!」
サイネージに映し出されていたセラを思い出す。
もっとパワフルでもっと破天荒なはずだ。
「Powerful?」
「そう!」
「It's only on stage.」
「え?」
「夜、ここに来て、みせてあげる。」
そう言って彼女は1枚の紙を取り出した。
「JAZZ CLUB IDiOM?」
「じゃあ、Bye.」
「あっちょっと!」
いつの間にか彼女は食べ終わっていて席を立った。
私は1人手に紙を持ったままじっと彼女を見つめるしかなかった。
長らく時間が空いてしまいました。
お元気でしたでしょうか?
なんとか書き終わるよう頑張りますので次回もよろしくお願い致します。
それではまた次の夜に。




