空色のハイヒール
ちょっと難産すぎる~。でも、頑張ります。
「真由美さん猫背はなおしましょう」
ヒギンズ教授が控えめに言った。
「背筋を伸ばすと、私身長が高いから目立ってしまって」
暗い顔で言う。
「それはよくありませんね。真由美さんは身長が高く、スタイルが良いのにもったいないですよ」
「自信がなくて」
弱々しく答えた。ヒギンズ教授は少し思案して、
「真由美さん、これからハイヒールを買いに行きましょう」
と誘った。
「僕について来て下さい」
私は抵抗する気持ちもあったが、彼の自信に満ち溢れた姿に背中を押されて、
「分かりました」
といつの間にか答えていた。
ヒギンズ教授と電車に乗り街の中心にある、地下街の専門店に繰り出した。電車の中では、女性の視線を感じることが多かった。その視線は、私と教授を見比べているようだった。
無理もない。ヒギンズ教授は端正な顔立ちをしていたし、身に着けているスーツやネクタイ、時計はとても趣味がよかった。普通の女性なら意識してしまうのではないだろうか。
一方私はというと、あまりに違うステージにいる男性として彼を捉えていたので、緊張こそすれ憧れの対象にすらなりそうになかった。
ヒギンズ教授は地下街を颯爽と歩く。私はひけ目を感じて横に並ぶことが出来ず、後ろについて行った。しばらくそうしていたら、
「真由美さん、なんで後ろを歩くのです。歩くのが速すぎましたか?」
と心配そうに尋ねてきた。
「いえ、横を歩くのには抵抗があって」
言いにくかったが本音を伝えた。
「真由美さん、僕がエスコートします。何も考えず腕を貸して頂けませんか?」
「それはちょっと」
と私が渋っていると、
「控えめなのは美徳かもしれませんが、卑屈になってはいけません。僕は貴女と楽しく街を歩きたいだけなんです」
と罪な台詞を吐いた。勇気を出して私は腕をヒギンズ教授と組む。彼は微笑んだ。
その婦人靴専門店は、普段の私にはとても敷居の高い店に思えた。ヒギンズ教授は度々利用しているようで、店員の応対も丁寧だった。
私はソファーに座って、彼がチョイスしてくれた十種類以上の靴を履いては歩き、感触を確かめた。
どの靴も足にしっかりフィットした。踵が高いのが不安ではあったが、履いたことがないような素敵な靴ばかりだった。その中から私は青空を連想させる薄いブルーのハイヒールを選んだ。値段を見てぎょっとしたが、貯金を下せば買えそうだった。
「決まりましたか?」
ヒギンズ教授は私が選んだ靴を見てにっこり笑い、店員を呼び値札を取るよう言った。座った私に、かしずいてまるでお姫様にするように靴を履かせた。恥ずかしすぎて真っ赤になってしまった。
「真由美さん、よく似合っています。これからは、このハイヒールを常に履いて下さい。いい靴は、姿勢を保ちやすくしてくれますから」
ヒギンズ教授は支払いを一人で済ませてしまった。私は抗議した。だが、
「貴女が淑女になるための必要経費です、お気になさらず。それよりも、猫背をなおしましょうね」
とのたまったのだ。
少しは楽しんで頂けたかな、未熟ですが、読んで下さって本当にありがとうございます。




