表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/65

気がかり

更新遅くなりました。悪戦苦闘中です。

 橘さんか。きれいなお嬢さんだったな。どうやって私のことを知ったのだろう? 彼女の丸くぱっちりした目が思い出される。『貴方は西村さんに相応しくない』か。

 給湯室でポットにお湯を補給しながら、思い出す。よくない言葉って、ふとした時に頭をよぎるんだよね。仕事に集中しないと駄目だ。自分に言い聞かせながら、割り切れない感情に支配されかかっていた。


「矢野さんどうしたんですか、浮かない顔をして。俺のことでも考えて胸を痛めていたんですか」

 織部君が私の手からポットを引き取りながら、冗談を言う。彼の冗談は、気がかりなことをオブラートに包むときにも使用される。

「それは、違うから。ポット運んでくれてありがとう」

 冗談を切って捨てながらも優しい奴だとありがとうを心の中で言う。


「原因は聞きませんが、何か俺に出来ることがあれば言ってください」

「織部君はプロジェクトリーダーで忙しいでしょ。私のことで煩わせられないよ」

「プロジェクトはみんなで頑張っています。でも矢野さんのことは第一優先事項ですから、なぜなら俺ほど貴女のことを知っている人間は会社にいない」

 相変わらず表向きは強気なんだから。クスッと笑いが出た。

「会社だけが私の世界じゃないんです」

 ベーッと舌を出して執務室のドアを一緒にくぐる。

「いつでも俺の胸は空いてますから」

「心に木枯らしが吹き荒れたらお願いね」

 冗談を返しながら、珍しく真顔の織部君に勇気付けられた。

 

 仕事が終わった。思い切って優輔に尋ねてみることにした。当然、橘さんが私の前に現れたことは伏せて。 

 優輔は文房具会社で商品開発をしている。彼とお互いの仕事の話はしたことはほとんどないが、たまに二人で出かけ文房具店を見付けると、必ず寄って行くので熱心なんだと感じていた。

 

 まだ仕事が終わっていないかもしれない。留守電だけでも入れておこう。ロッカー室から、電話を架ける。五コール鳴らしたとき、優輔が電話に出てくれた。

「もしもし、真由美さん。お疲れさま。仕事がちょうど終わったところです。電話に出ることが出来て良かった」

「優輔、お疲れさま。今日はこの後予定ある?」

「どうしたんです、仕事後に会うなんて初めてじゃないですか」

 優輔は嬉しそうだ。

「尋ねたいことがあって、直接会って話がしたいの」

 彼の声色に陰が混じる。

「はい、予定はないです。暗くなってきましたし、僕が真由美さんの会社近くまで行きましょう」

 こちらの都合に合わさせてすまないと思いながら、優輔お勧めの定食屋さんで待ち合わせをすることになった。


読んでくださってありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 『よくない言葉って、ふとした時に頭をよぎるんだよね。』が分かりすぎます! 真由美さんの感情や言葉は、すごく自然で身近に感じます。 寄り添いたくなるし、応援したくなる主人公、素敵です。
[一言] 悪戦苦闘、頑張って!読者な私は気楽に続きを待てる。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ