運命の人は
しばらく、出来たら更新頻度を上げるつもりです(予定は未定)
夜通し唯と語り合う、内容はお互いの仕事に恋愛のこと。でも途中から記憶がない。酒に飲まれたみたいだ。
テーブルの上には空のワインとウィスキーの瓶がある。
ずいぶん飲んだなと、がんがんする頭で反省する。唯は相変わらず酒に強いようで、起きるとケロッとしている。
ソファに二人窮屈な姿勢で寝たので、体が痛む。唯も同じらしく肩を回したりストレッチをしていた。
「話が出来てよかったよ」
「それにしても、真由美はヒギンズ教授に夢中なのね」
「そう思う? でも彼にとって私は、一生徒なんだ。以前は彼のことしか見えずに胸が痛かった。でもね、教授が私が気付いていないことを沢山教えてくれたの。そのお陰で周りの世界が輝き出して、幸せを感じる機会が増えたんだ」
「真由美がきれいになった理由ってそれなんだね」
「きれいになったなんてことはないよ」
私は戸惑った。
「ううんきれいになったよ。それから優輔は、あなたのことを忘れてないよ。誰かと付き合ったって話も聞いたことないし。彼くらいモテる人なら告白されることは頻繁にあると思うんだ」
「彼は素敵な人だもの、きっと相応しい女性が現れるよ。今更私に関心を持つ必要はないと思う」
「人は必要、不必要の判断で恋をするわけじゃないよ」
唯は痛いところを突いてくる。
私は、本当は怖かった。最後に、私に縋るように対話の機会を持とうとした優輔は何を求めていたのか? 彼の真っ直ぐな目の光に戸惑ったのだ。
「優輔は自分から、去っていったんだ。きっと私に嫌気が差したんだと思う」
「嫌気がさしたって彼からじかに聞いたの?」
「二人でいても何も変わらないから出ていくって」
「そういう経緯があったのね。真由美、物事はそれほど悲観的じゃないと思うよ。彼はきっと、まだあなたのことが好きだったんだと思う。思うところがあって、あなたの為に離れることを選んだんじゃないかな」
「嘘でしょ、私は優輔の負担も考えずに彼に頼り切ってしまった。そんな私に彼と再び接点を持つことが許されると思う?」
「とにかく、彼と話しなさい。私は親友に後悔をしないでほしい」
そう言って、彼女は優輔の連絡先を私に渡した。唯が、彼の連絡先を持っていたことに驚いたが好意に甘えることにした。
翌日、ヒギンズ教授が突然私のアパートを訪ねてきた。いつも通り緑茶と、お土産でもらった最中を出す。心ばかりのもてなしだ。
教授はいつもと変わらぬ美しい所作でお茶を飲み干し、私に向かって、言った。
「真由美さん、恋人と再会したようですね」
驚いて、湯飲みを落としそうになった。
「何でそれを?」
私は質問した。教授には何も言っていなかったのに、気味が悪いと思った。
「貴方にとってその人はとても大切な意味を持つ人です」
教授の顔が陰るのを私は感じた。
「助言をしに来ました」
私はとても複雑な気持ちになる。過去と今どちらも大切だった。
読んで下さってありがとうございます。




