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別れた人

更新は久ぶりになりました。少しずつ物語は加速していく予定。

 ヒギンズ教授の電話を切った後、大学時代からの友人小林こばやしゆいから久しぶりにLINEが届いた。

「真由美こんばんは! 久しぶり。元気にしている?」

 私は懐かしさもあり直ぐに返信した。

「元気にしてるよ。何かあった?」

 唯は元気な様子で、飲み会に誘ってくれた。普通だったら、旧友との再会は嬉しいものだけど懸案事項が一つあった。唯の話によると、私たちが入っていたオーケストラサークルのOB・OGが揃うらしい。その中には別れた恋人の西村にしむら優輔ゆうすけも来る可能性が大いにあるということだ。


 同棲を解消された記憶がフラッシュバックする。もう別れて一年近く経ったが、あの日のことは鮮明に覚えている。私にとっては、突然の予測出来ないことだった。

 いつも通り、部屋に帰宅すると優輔が淡々と荷物をまとめていた。そして言った。

「真由美さん、僕はもうこの部屋には戻らない」

 私はびっくりして理由が分からず、動悸と目眩を感じていた。

「優輔、どうしたの? 私、何かした。昨日だって楽しく夕飯を一緒に食べて、変わったところなんてなかったじゃない」

 私は狼狽していて、声も震えていた。

「それが、理由だよ。僕たちは一緒にいても何も変わらない。その意味に君が気付かなければ、僕は戻れない」 

 そして彼は必要最低限の荷物を持って、去っていった。その後ろ姿を私は忘れられないでいた。


 もし、優輔が飲み会に来ていたらどんな顔して会えばいいのか。私は、あれから変われたのだろうか。そんな思いがとめどなく溢れて、煎餅布団の中で寝返りをうつばかりで眠ることが出来なかった。


 こんな時、ヒギンズ教授はどう言うだろうか? 答えを聞きたい気持ちもあった。だが敢えて一人で解決したいと私は思っていた。


 彼は本当に誰に対しても優しい人間だった。それは上辺だけではなかった。同棲している間、人の悪口を一度も聞いたことはなかった。むしろ、他人の心配をよくする人だった。

 家事を手伝ってくれた優輔。公園で小さな子供に懐かれて一緒に夕方まで遊んだこと。風邪をひいたときに作ってくれたおかゆが美味しくて泣きそうになったこと。とめどなく思い出が浮かんでくる。


 忘れていた景色を思い出す。それは鮮やかで胸を締め付けた。まだ、あの香水を着けてくれているだろうか? もう新しい恋人は出来たのだろうか?

 私は未練だなと感じながらも、思いを止められなかった。





読んで下さり、ありがとうございました!

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