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水族館デートⅡ

何とか更新!

 水族館には実は一人になりたいときたまに来ていた。薄暗い空間、青い水槽とゆったり泳ぐ魚が心を静かにしてくれるからだ。

 私はラッコが好きで水槽に張り付くのが常だった。

 今日は織部君と一緒だったので、彼が好きだというクラゲのコーナーに長くいることになった。クラゲの水槽は幻想的にライトアップされ、彼らはフワフワと優美に泳いでいた。織部君のイメージにクラゲはなかったので意外に思った。あくまでも勝手な私の思い込みだが、シャチとかが好きなイメージだった。


 だが、ただ一心不乱に水槽を眺める織部君を見ていると私もクラゲに興味が出てきた。彼らをみつめていると普段の生活から意識が離れて自身が水の中を漂っているような不思議な錯覚に陥った。

「クラゲが好きなんです。ぼーっと漂って気まぐれに泳いでいて見ていて飽きないんですよ。だから、会社で嫌なことがあったときはひたすらクラゲで現実逃避していましたね」

「私、織部君はいつも自信に満ちていて、会社で嫌な事があっても跳ね飛ばしてここまできたのかと思っていたよ」

 自分の思い込みを反省しながら呟いていた。織部君は水槽から私の方に向き直って、

「俺にだって弱いところがあるんですよ。それを矢野さんに知ってもらえて良かったです。俺にとって貴女は特別な人だから」

 そう言うと彼は握った手に力を込めた。胸が切なくなる。

 私はなにも織部君のことを知らなかったんだな。知ろうとすらしてなかったのだと恥ずかしくなった。

「矢野さんのことだから、また反省してるんでしょ。俺は貴女の前では敢えて強がってたし、焦って強引に迫ったし。そんな男に関心持つ女性は一般的ではないですよ。だから、矢野さんが間違えたわけじゃない。それより今日俺に会ってくれて感謝してる。一緒にクラゲを見ることが出来て、嬉しい」

 織部君は輝く笑顔を私にこぼした。そしてラッコのコーナに辿り着いてはしゃぐ私を嬉しそうに写真におさめていた。

 私たちは、時間を忘れて水族館を隅々まで見てまわった。お土産コーナーでは、私に似ているからとガラス細工のフグを買ってプレゼントしてくれた。


 デートを終えた私たちは、どうしてだろう絡めた手を離すのが名残惜しかったが、どちらからともなく繋いだ手を離した。

 私が知っていることは小さいかもしれないが、これからの行動次第で世界が広がっていく気がした。

 以前より心が軽くなり解放された気がしていた。





 


読んで下さりありがとうございます。

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