ヒギンズ教授の目的Ⅰ
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丁寧にナチュラルメイクを仕上げる。肌の質感も作り込み過ぎないで少し素肌感も残しておく。眉毛は地毛を生かしてアーチを緩やかに。そして唇はピンクベージュで仕上げる。髪はボブをアイロンで軽く癖付けした。ドレッサーの中の私は、睫毛も綺麗にカールして仕上がりは上々だ。
クローゼットから、カーキ色のシンプルでフォルムの綺麗なワンピースを取り出す。襟と裾にさりげないレースの刺繍がしてあって気に入っているものだ。
駅近くの喫茶店近くに着くと、入口近くでヒギンズ教授が姿勢を正して私を待っていた。長身の整った体躯と知的で端麗な容姿は年齢を重ねていても、渋く格好いい。遠巻きに彼を見つめている女性が何人かいた。流石だなと思いながら、そんな視線には目もくれず私を待ってくれている教授に駆け寄った。
「ヒギンズ教授待たせてすいません」
私は頭を下げた。
「いえ、真由美さんそんなに待っていませんよ。休日に呼び出してしまってすいません」
柔和な微笑を浮かべて彼は答える。きっちり分けられた髪の、ワックスの香りが男だと意識させる。
「久しぶりに会えてホッとしました。お元気でしたか?」
明るいトーンで尋ねる。
「お気遣いありがとうございます。真由美さん印象が変わりましたね。さぁ、美味しいコーヒーを飲みましょうか」
教授が私を優しくエスコートする。喫茶店の奥のテーブルに案内され向かい合って二人ゆっくり座った。
「素材が良かったのは確かですが、ここまで素敵に変身なさるとは思いませんでした。見かけももちろんですが、内面にも成長があったようですね」
ヒギンズ教授に褒められ、気分が高揚する。私は素直に感情を表した。
「とても嬉しいです。今日まで色々なことがありました。正直ヒギンズ教授に迷惑をかけてしまったことも。でも貴男に会えて、私の人生は色を取り戻したように思います」
「過大評価です。元々真由美さんに眠っていた力を、ご自身で取り戻したんですよ。もっとご自分を褒めて下さい」
「会社での人間関係も深まって、楽しいことも増えました。私一人ではとてもここまで来ることは出来なかったはずです。だから教授に感謝しています」
心からの笑顔を彼に向ける。
「素敵な笑顔ですね。まだ卒業証書は渡せませんが、貴女には僕の目的をお伝えしてもいいのかもしれません」
「えっ、どういうことでしょうか?」
私はびっくりして教授の顔をみつめた。すると彼は聴いたことのない呪文のようなものを唱えたのだった。
その瞬間、店内の人々と私たちの時は隔てられた。
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