契約の解除
朝食が済むと、全員でギルドに向かう。
先頭をルイーズさんが歩き、その後ろをレーナさんを囲むようにして歩いている感じだ。
カトレアは平然とした表情をしているけどバイルさんはかなり警戒しているようで周囲に目を向けている。
流石に朝から襲撃はしてこないとは思うけど、一応自分もいつ戦闘になってもいいように周囲には気を配るも特に何もなくギルドへ到着した。
ギルドに入ると、既に噂が広まっているのか、冒険者達の視線が自分達に集まる。
ルイーズさんはそんな視線を気にする事も無く、受付に向かいそのままギルドマスターを呼ぶように言う。
恐らくルイーズさんが今日来る事を知らされていたのか直ぐにギルド支部長のダイルンさんと副支部長のエドマスさんが出て来た。
うん、最近知ったんだけど、インテリ副支部長ってエドマスさんって名前らしい。
カトレアとルイーズさんは応接室へと言うダイルンさんの言葉を遮り、その場で魔道契約書をだして竜の牙がフォレストに行った事を告発し始めた。
魔道契約書を前に、フォレストが竜の牙に騙されバイルさんは大怪我を負わされ、レーナさんは魔道契約で意思や思考を封印され奴隷のように売り飛ばされたことを説明していく。
ギルドに居る冒険者達はルイーズの話と、カトレアによって解析され上書きされる前の内容が分かる魔道契約書が有る事に驚き、ざわつき始める。
ダイルンさんもエドマスさんも解析され読めるようになった最初に交わされた契約の内容を見て眉をひそめている。
「これが本当なら…、いや本物である以上竜の牙がフォレストのメンバーを殺し、レーナを魔道契約で縛った事が判明した訳だ、それどころか奴らと共にダンジョンに行って帰って来なかった冒険者も同じように殺されたってことか…。 急ぎ各支部には通達を出して冒険者証の無効及び拘束と聴取を依頼する」
「今すぐに拘束はしないのかい?」
ルイーズさんが訝しむようにそう聞くと、どうやら昨日ルイーズさんがギルドに来て話をしていた事が伝わったらしく竜の牙は昨日のうちにキャールの街を出たとの事だった。
とは言えダイルンさんの話ではここまで証拠が揃っているからギルドに顔を出したらその場で拘束と聴取をされるとの事だ。
「それはそうとバイルの右腕が再生している事と古傷が治っている事、そしてレーナの舌が再生してるのはどういう事だ?」
証拠を突き付け竜の牙を告発した事にも周囲は驚いていたが、ダイルンさんのその言葉を耳にした周囲の冒険者達も今更気付いたようで驚いたような、そして再生させた方法を聞き逃すまいといった顔をしている。
「ただの治癒魔法よ! 偶然手に入った高ランクポーションと治癒魔法を併用したら再生出来たの。 まあ墳墓のダンジョンで手に入れたポーションでもう残ってないけど」
カトレアがそう言うと、周囲の冒険者達の目の色が変わった…。
今迄ハズレダンジョンって言われていたのに自分が結界を解いた影響で通常のダンジョンに戻った事が証明され今ではチラホラと攻略に挑む冒険者も増えているらしいけど、これだと更に増えそうな気がする…。
告発が終わり、竜の牙への指名手配がされたことで、もうギルドには用が無い為、宿に戻りレーナさんを縛っている契約の解除をおこなう。
魔道契約書自体は紙で出来ているものの、魔力が込められた紙で出来ている為、火を付けても燃えず、水に浸けても濡れないといった代物で本来なら契約内容が履行されれば自動的に只の紙に戻るらしいが、カトレアの取った解除方法は至って簡単なものだった…。
解除と同時に契約後から今までの事が一気にレーナさんにフラッシュバックされる為、バイルさんがレーナさんいつでも抱きしめられるよう、手を握り、暴れだして手が付けられなかった際には当身で気絶させようとルイーズさんが構える。
そして自分はフラッシュバックにより心が壊れてしまわない様にリカバリーの魔法をかけ続ける為、レーナさんの後ろに陣取り魔法を準備する。
ただリカバリーでどうにかなるのかという質問に対して帰って来た答えはしないよりはマシじゃない? って事だったのである意味自分は今回役に立つことはなさそうだ…。
だってリカバリーって病気治す魔法だよ。
リカバリーをかけ続けるように言われて、張り切ってたら「しないよりはマシじゃない?」って…。
そして準備が整ったところでカトレアが魔道契約書の解除をおこなう。
ビリィ~!!!
ビリィ~!!! ビリィ~!!!
えっ? 破くだけ? 魔法で出来て人の意思や思考まで縛るような物の解除、紙を破るだけでいいの?
驚いているのは自分だけではなくルイーズさんモバイルさんも同様で、えっ…、何やってるの? って顔をしている。
カトレアが魔道契約書を破いた直後、レーナさんの身体がビクッと反応し目に光が宿り、そして宿に悲鳴が響き渡る。
「いやぁ~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!」
宿に響き渡るレーナさんの悲鳴。
バイルさんが必死に声をかけるもレーナさんの耳には届いていないどころか目の前に居るのがバイルさんという事にも気づいていない様子でバイルさんの手を振りほどこうと必死に暴れる。
「いやぁ~~~~~~!! こ。来ないで!!! 近づかないで!!!!! やめてぇ~~~~~!!!」
「レーナ!! 俺だ! バイルだ!!」
必死に声をかけるバイルさんの声も届かずレーナさんは髪を振り乱し涙を流しながら叫び続ける。
トンッ!!
ルイーズさんの手刀がレーナさんの首に吸い込まれ、直後レーナさんが意識を失いガクッとバイルさんにもたれ掛かる様に倒れ込む。
「な、何をするんだ!!」
バイルさんがルイーズさんに抗議の声をあげるも、カトレアが指示したようであのままだと本当に心まで壊れて廃人のようになってしまう可能性がある為、一旦強引にでも眠らせた方が良いとの判断だと言うとバイルさんは自分の無力さが悔しいのか、唇をかみしめ意識を失ったレーナさんを抱きしめてから、ベッドまで運んでいく。
バイルさんはレーナさんがいつ目を覚ましてもいいようにベッドの横で付ききりで居るらしい。
レーナさんの取り乱しようを見ていたカトレアは、苦々しい顔をして、恐らく意思と思考を封印されている間に相当酷い事をされていたと思われ、目を覚ました後も同様に取り乱し、正気を取り戻せるかは分からないと言っていた。
そしてルイーズさんはとても後味が悪いような顔をし、ジョッキの酒を飲み干すと部屋に戻って行ってしまった。
レーナさん目を覚ました時に落ち着いて居てくれるといいな…。
これで心まで壊れて廃人みたいになったら魔道契約で縛られていた時と変わらないもん。
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と思う今日この頃…。
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