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動画を作って、ホームページ作って、漫画を載せて、動画も載せて、最後に轟作品を語るスレだったり、オススメ漫画を紹介するスレだったりに紹介レス載せて、
「よし、終わり」
全ての作業が完了したので、そう律子は呟いた。
「おー! ありがとう、りっちゃん!」
「色々とありがとう、律子ちゃん」
そんなことを言ってくる花梨とおじさんに、
「いやいや、それほどでも……まあ、あるかもしれないわね」
なんておどけた返しをしていたら、動画を撮った後、外に出ていた常盤さんが帰って来た。
その手には、近くの高級寿司屋の丸盆、4人前を抱えていた。
「おお、ブルジョワ……」
思わず、呟いてしまった。
そして、常盤のおっさんに作業が終わったことを報告すると、
「おお、そうか! ありがとう律子ちゃん! さ、これは君の為の寿司だ。遠慮なく食べてくれ!」
そう、言われたので、
「あ、ありがとうございます……」
ちょっと早いけど、夕飯にすることにした。
これが何だといえば、律子がホームページを作ったことに対する報酬だったりする。
昨日の時点で、お寿司をごちそうになることは決まっていた。
というか、最初はストレートに現金による報酬を提示された。しかも、2日だから2万とかいうザルな計算で報酬を提示されたのだが、
「いやいやいや、こんなお手伝いで、お金なんて貰えませんてば!」
そう断った。いや、律子だってお金が欲しいか欲しくないかで言えば欲しいに決まっているが、知り合ったばかりのおっさんから、万単位のお金を貰うというのは遠慮したい。
それにやっぱり、自分の中では花梨に手を貸している範疇で、報酬を貰うほどのことではないと断ったのだが、おっさん曰く、
「まだ、君には分からないだろうけどね、もとサラリーマンの私は、サービス残業とか休日出勤とかがあるたびに、会社が滅べばいいのにって常々思っていたんだ。……そんな訳で律子ちゃんにはおっさん死ね! とか思われたくはないのだよ」
とのことなので、
ーーんなこと思わねーよ! いや、本当にねーよ!
と、思いつつも、折衷案として現物のお寿司になった。ついでにホームページ開設記念も兼ねている。
そんな訳で4人でお寿司を摘むことになったのだが、
「おー……」
おっさんは、気もそぞろにホームページをチラチラ、チラチラ覗いている。
行儀が悪いといえば悪いのだが、気持ちは分からなくもない。ホームページにせよ投稿サイトにせよ、作ったばかりの頃は気になるものだ。
律子だって、初めて作品を投稿した時は、1日に何回も何回も覗いては、増えないアクセス数にがっかり……いや、止めよう、過去の話だ。
そんなことより、今はこの甘エビの美味しさを噛み締めればいいのだ。
近所にあるとはいえ、およそ関わる事のなかった回らない寿司屋の上のネタ。しっかり味わなければバチが当たる。
「あ、カウンターが回った! 誰かが見てる!」
「ええっ⁉︎」
「本当ですか⁉︎」
おっさんの声につられて、花梨とおじさんまで画面に張り付いた。
ーー花梨はともかく、おじさん……あんた、売れなかったとはいえ、全国の書店に単行本置かれたんでしょうが。今さら一人二人の閲覧者で騒がなくても……。
ーーいや、そんな事よりお寿司、お寿司。
律子は右往左往する三人を横目に、丸盆の中身をどんな順番で食べるか、真剣に考え始めた。
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【轟平太先生の作品を語るスレ188】
1:名無しの轟ファン
轟平太関係なら何でもOKの雑談スレです。
喧嘩、アンチはNGでお願いします。切に切にお願いします。
いいじゃないですか、誰が一番だって。貶している相手だって轟ファンなんですよ。いがみあって、世紀末のような最低限の秩序すらないスレにすることが、真の轟ファンと呼べるのでしょうか? お互い節度を持って、みんなで楽しいスレを作りましょう。
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336:名無しの轟ファン
みんな喜べ、天空のフルール2巻が三週間で1万部を突破、どうやら打ち切りは回避されそうだ。
337:名無しの轟ファン
やったあ! それにしても毎回、先生はハラハラさせてくれるよね。
338:名無しの轟ファン
フルールは轟先生にしては、ずいぶんと設定がシンプルだから、逆に新規ファンを取り入れた感じ。
339:名無しの轟ファン
あー、338のコメ納得できるわ。ジンとフルールが素直に恋愛関係で物語が変に捻くれてない。
340:名無しの轟ファン
正直、処女作リミットオーバーからのファンの俺としては、熱々の唐揚げ店から、さっぱりソーメン屋に鞍替えしたみたいで、ちょっと物足りない。
341:名無しの轟ファン
↑古株自慢乙!
342:名無しの轟ファン
↑止めとけ、もう暗黒期はうんざりだ。轟先生の新刊が好調で嬉しい。それでいいじゃないか。
343:名無しの轟ファン
パンドラの契約者の漫画を作った。みんなに見て欲しいからアドレス置いとく。×××××××.××.×××.××
344:名無しの轟ファン
宙を舞うフルールを下から見上げたい! だってミニスカートじゃん?
345:名無しの轟ファン
↑の見上げた顔面に鳩のフンが落ちて欲しい。
346:名無しの轟ファン
つーか343はなに? パンドラの契約者? 今更?
347:名無しの轟ファン
懐かしいなパンドラの契約者、打ち切りからもう6年……いや7年近いぞ。ちょっと見てくるわ。
348:名無しの轟ファン
いってら。(因みに俺はその作品読んだことない)
349:名無しの轟ファン
俺なんかリミットオーバーも知らない天空世代よ。
350:名無しの轟ファン
リミットオーバーとパンドラを知らずして轟ファンを名乗るなど笑止千万。
351:名無しの轟ファン
↑まあまあ、学生だった俺が、子供ができる位の時間が過ぎたんだからしょうがないって。
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365:名無しの轟ファン
あああああああ! パンドラ! パンドラー!!!
漫画見てきた! そんで、お前らに言いたい! 漫画見ろ! 頼むから見てくれ! パンドラの契約者のファンなら……いや、轟ファンなら絶対に見た方がいいから! 俺はこれからパンドラーとして、布教の旅に出てくるわ!
366:名無しの轟ファン
何? パンドラー?
367:名無しの轟ファン
大袈裟じゃね? ……もしかして自演? 釣りなの?
368:名無しの轟ファン
まあ、でも、釣られてくるわ。見たら詳細説明したるよ。
369:名無しの轟ファン
いってら。( ´ ▽ ` )ノ
370:名無しの轟ファン
jmこはmapgtたさなや2pj?
371:名無しの轟ファン
↑の奴だがスマン! 涙でキーボードが打てなかった! おっさん! あんた間違いなく馬鹿だ! 本当に馬鹿だ! だけど、俺はあんたを支持する! パンドラの契約者が打ち切られてから、俺はこんな日が来るのを待っていたんだ! みんなも漫画見てくれ! 俺はこれからパンドラーとして呟きに行くよ!
372:名無しの轟ファン
さっきから、なんなの一体?
373:名無しの轟ファン
そもそもパンドラーって何? 割と本気で興味湧いて来たんだけど。
374:名無しの轟ファン
でも、俺なんかは原作知らないしな……。
375:名無しの轟ファン
原作は3巻打ち切りだぞ。
376:名無しの轟ファン
なら、途中で切れることが決まってんじゃん。萎えそうで嫌だな。
377:名無しの轟ファン
368だけど、漫画見て来た。今から詳細を説明する。
378:名無しの轟ファン
おかえり、待ってました。
379:名無しの轟ファン
アドレスの先は、いかにも作り立てって感じのホムペ。中にはパンドラの契約者の第1話から第3話までと、製作者というかスポンサーのおっさんの説明動画が置いてあった。その説明動画によると、おっさんは投資でお金を稼いだ資産家。んでパンドラの契約者の大ファンで、サラリーマン辞めて漫画家を雇って漫画版のパンドラの契約者を作り始めたんだって。目的は漫画版パンドラの契約者を大ヒットさせて、打ち切りの先の物語を見ること。ここで重要なことは、その漫画の製作に轟先生は一切関わっていない。
380:名無しの轟ファン
サラリーマン辞めて漫画家を雇った⁉︎ 何、そのアグレッシブ⁉︎
381:名無しの轟ファン
それで、3話まで実際に作ったから、轟先生に見せて先生の許可を貰いたいんだけど、先生はSNSもツイッターもやらない硬派なお人だから、そもそも連絡のしようがない。出版社に問い合わせても個人情報だから教えてくれない。だから、ネットに流して噂が広まって、先生の耳に届くように閲覧者に助けて欲しいらしい。因みにパンドラーってのはパンドラの契約者のファンの事で、グラップラーとかマヨラーとかそんな意味合い。
382:名無しのパンドラー
で、肝心の漫画の中身なんだが、これがガチでヤバイ。どれ位ヤバイかって言うと、轟先生の作品の中でも、パンドラの契約者にはあんまりハマらなかった俺が、一瞬でパンドラファンになる位にヤバイ。あれは完全に原作越えている。でも、4話目以降は先生の許可を貰ってから作るから、読者は協力してくれってこと。……という訳で俺はこれから夜勤なんだけど、一人のパンドラーとして、同僚に紹介してくるわ。みんなも、漫画を見ることをお勧めする。それじゃ。
383:名無しの轟ファン
382、お前もパンドラーになったのか。
384:名無しの轟ファン
その漫画を見た者は、みなパンドラーになる。…………怖っ!
385:名無しの轟ファン
呪いのビデオかよ(笑) よし、そのおっさんの事も気になるし、ちょっと見てくるわ。
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「うーん……ふぁ……」
律子は目覚ましが鳴る前に目が覚めた。時計を見ると、現在6時30分。普段の起きる時間より30分は早い。
ーーあー、昨日は早く寝たからなー……。
早めに夕食を食べた影響か、普段より早く眠くなったのだ。
ーーさて、これからどうすっかな……。
そうぼんやりと考えた結果、布団の中でゴロゴロすることにした。
寝がえりをうちながら枕元に置いてあるスマホを取り、適当にニュースを眺めた。
特に目を引くニュースもなく、あー、いっそ7時まで2度寝するかぁ……と思いつつも、ふと昨日作ったホームページのことを思い出した。
ーー覗いてみるかー……。
ーーっても、まだ半日だしな……あー、でも、あれならもしかしたら100人位は来てるかも。
寝ぼけながらも、スマホにアドレスを打ち込んでサイトを開いた。
ーーどれどれ……。
来訪者:10253人
「………………………………はあっ⁉︎」
律子は一瞬で目が覚めた。




