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第八十一話 リーフとタラちゃんの涙

「むにゃむにゃ」


 朝起きると、俺にミケが抱きついて寝ていた。

 昨夜はミケも一緒に寝ることに。

 やはり水をかけられたときのショックがあるのか、寝ている間少しうなされていた。

 暫くは、ミケの様子も見てあげないとな。


 朝食を食べて、それぞれ持ち場に移動。

 ワース商会監視組のタラちゃんが領主邸組に移るので、ポチとフランソワに引き継ぎで色々話をしていた。

 領主邸組がタラちゃんとスラタロウにヤキトリにショコラで、リーフも一緒に行くという。ワース商会にポチとフランソワとタコヤキ。

 鳥の背中に乗って空飛ぶスライムか。中々面白い絵面だ。

 宿には馬一頭にホワイトにサファイア。オース商会はもう一頭の馬にシルがいる。

 用心棒にしては中々凶悪な布陣だ。


 ビアンカ殿下とルキアさんも自治組織の建物に向かっていく。

 そしてオース商会の手伝いに、ミケとエステル殿下とリンさん。

 ミケは昨日手伝いの経験済だけど、エステル殿下とリンさんは生粋の貴族令嬢なのに、商会の手伝いなんて大丈夫なのかとても不安だ。

 

「おはようございます、ネルさん」

「おはようございます、サトーさん。今日は美人さんがいっぱいですね」

「ははは、確かに美人ですよね。邪魔にならないように手伝いをさせていただければと。エステルさんとリンさんです」

「昨日の調子だと荷出しも大量に必要なので。お二方は荷運びとかは大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ。こう見えて力はあるからね」

「はい、お任せください」


 ということで、まず二人には荷出しと陳列をやってもらう。

 ちなみに二人は執事服で接客を行う。

 メイド服だと商品にスカートが引っかかってしまうという現実問題があり、ミケ以外は執事服を着ることになった。

 

「いらっしゃい、いらっしゃい!」

「お、嬢ちゃん今日も手伝いかい?」

「うん、そうだよ!」

「ミケちゃん、昨日は水かけられたって聞いたけど、大丈夫だったかい?」

「ミケ大丈夫だよ!」


 相変わらずミケは大人気だ。

 いかついおっさんとかも気にせずに声をかけるので、男女関係なく気に入られている。

 そして特におばさんを中心として、昨日のワース商会の水ぶっかけ事件は大丈夫かとミケや俺に聞いてくる。

 それと同時にワース商会の評判もかなり落ちてきているそうだ。

 今までにない小さい女の子を狙った妨害とあって、街の人の怒りも結構なものがあるという。

 と、昨日もミケの事を気遣ってくれた、大阪のおばちゃんのような女性から話を聞いた。

 

「美人店員さん、中にいる美人さんも店員かい?」

「はい、昨日一杯商品が出ましたので応援です。接客よりかは陳列とか補充が中心ですね」

「そうかい、そうかい。いやあ、嬢ちゃんもべっぴんだし小さいメイドさんも可愛いし、ここの店はいう事ないねえ」

「そうですか、ありがとうございます」


 ちょっと小太りの調子のいいおっちゃんと話をしていたが、やはりエステル殿下とリンさんも美人なので話題になりつつあるという。

 そりゃ美人が複数いるお店なんて、珍しいだろうね。


「だが、やっぱり嬢ちゃんが一番の美人だね。みんなも言っているよ」

「あ、ありがとうございます……」


 そしておっちゃん曰く、俺が一番人気らしい。

 それは街の人も同意見だという。

 もう気にしないことにしよう。


「エステルさん、リンさん。大丈夫ですか?」

「補充が中心だから大丈夫ですよ」

「補充しても補充しても、次々に売れていきますね」

「お客さんも多いですからね」

「ミケちゃんと美人店員さんのおかげですね」

「私も良く聞かれますよ。あの美人店員は誰だって」

「ははは、もう諦めています」


 良く商品が売れるので、補充部隊はこのままになるだろうな。

 エステル殿下もリンさんも忙しく働いている。

 だが流石は騎士だ。体力があるので一気に荷運びをしている。

 しかし、お客さんがエステル殿下にリンさんに聞いてくるのも俺目当ての情報かよ。

 

 しかし今日はワース商会はおとなしいなあ。

 昨日の夜も宿に襲撃も無かったし、今日も馬に吹き飛ばされているならずものがいない。

 さっき店先から宿の様子を見ていたが、馬は暇を持て余していて街の子どもと遊んでいた。

 予備戦力もあるから昨日以上の襲撃があっても全く問題ないけど、ワース商会の静けさが不安になってくる。


「すみません、いいですか?」

「はい、ただいま」


 おっと、お客さんから呼ばれたぞ。

 急いで向かわないと。


「今日はワース商会から、嫌がらせも襲撃も何もありませんでしたね」

「それは昨日のミケ様への嫌がらせが原因なのです」


 閉店時間前にトルマさんに呼ばれて二階の執務室へ。

 ミケとエステル殿下とリンさんは、一足早く宿に帰った。

 今日もお店は大繁盛だったので、結構疲れてしまったらしい。

 騎士や冒険者と違った気遣いも必要だから、慣れていないと精神的にも疲れてしまうだろうね。

 しかし昨日のミケの嫌がらせ行為が、ワース商会が今日一日大人しかった原因?


「ミケへの嫌がらせが原因なのですか?」

「はい、昨日のミケ様への嫌がらせは様々な人に目撃されています。そして相手は無抵抗な小さい女の子。街の人の怒りに触れてしまい、ワース商会の評判がかなり悪くなりました」

「完全な自業自得な感じもしますがね」

「今までも同様な嫌がらせはありました。ただ、力で押さえつけていたのもあり、誰も反論出来ずにいました。それが完膚なきまで返り討ちにあったのです。これも街の人にとっては衝撃的な事だったのです」

「成程、ワース商会に怯えていたのがあれ? ってなったんですね。しかし主にならずものを倒していたのは馬ですけど。まあ、普通の馬じゃないですが」

「実は馬がならずものを倒したのも理由にあります。言い方が悪いですが、言わば馬は家畜です。ならずものが家畜に負けたのも理由にあります。なので、ワース商会としてはこれ以上傷口を広げないようにしたのです」


 ワース商会にとってはだいぶ今更な気もするが、襲った相手が悪かったというのもある。

 街の人にとっては恐怖の存在だったワース商会が、実は弱いのではという疑惑も生じ、ミケの事も重なって大人しくなったわけだ。

 ただ、こちらとしてはワース商会の事は信用できないので、警戒は続けていくけどね。


「昨日サトー様にお渡しした招待状も傷口を広げない為の対策です。そしてサトー様が研修でここにきているという情報をワース商会も掴んでいるので、研修の間ならと思っているそうです」

「それにしても、ワース商会としては妙に対応が早いですね」

「ワース商会も上の者は頭が切れます。下の者は上の者には逆らえないので、従うしかないのです」

「しかしながら、下の者の暴発には十分注意しないといけませんね」

「恐らく明後日の誕生パーティで何かがあった際は、暴発する危険性が高いと思われます。十分にご注意下さい」

「忠告ありがとうございます。誕生パーティーの時は、この周辺にもメンバーを配置して万が一に備えます」

「万が一がなければ良いですが」

「望みは薄いかと思いますよ」


 このままワース商会が静かにしていてくれれば色々な事が平和的にいくけど、どうせやつらは溜めたうっぷんをはらそうとするだろうな。

 こちら側も返り討ちにできる陣容にしておこう。


「ただいま。あれ? リーフとタラちゃんとスラタロウがどんよりとしていない?」


 トルマさんとの話を終えて宿に帰ってきたら、食堂のテーブルの上でタラちゃんとスラタロウが落ち込んでいた。

 いつも元気な一人と二匹だけど、今はやけにおとなしい。


「ここでは話せぬ。後でサトーの部屋で話すのじゃ」

「ビアンカ殿下、わかりました」


 ビアンカ殿下が判断するとなると、だいぶ重たい話なのだろう。

 どうも俺以外のメンバーは話の内容が分かっているようだ。

 夕食も何となく重い雰囲気の中で進んでいった。


「先に妾から話そう。リーフにタラやスラタロウの話とも繋がってくるのじゃ」

「今日、自治組織に行った時の内容ですね」

「うむ、中々情報が入らなかった領主夫人とその子どもの話じゃ」


 今日タラちゃんとかは囚われの領主の治療に行っているから、ビアンカ殿下の話はそのあたりに繋がっているのだろう。


「まずは領主夫人の話じゃ。こやつはとんでもない悪じゃのう。派手好きで浪費癖が酷く、我がままで癇癪持ちじゃ」

「もうこの辺で、その人の性格についてはお腹いっぱいになりそうなんですけど」

「この辺は序の口じゃ。自分の意のままにならないとヒステリーを起こし、物にあたるのは当たり前で、メイドなどの使用人に対しても殴る蹴るや物を投げるのは当たり前じゃ」

「なんですか、その横暴さは」

「じゃが、お金や宝石などにはとても弱い。ワース商会も献金を欠かさないのは、この辺もあるじゃろう」


 うわあ、想像以上に物凄い夫人だ。

 自分が一番で誰も諌めないから、ワガママし放題なんだろう。

 現に忠告しそうな人達はみんな解雇されているし、ルキアさんに至っては殺されかけている。

 メイドなどの使用人は奴隷が多いというし、ワース商会などは夫人をおだてるから止まらないのだろう。


「続いては息子じゃな。ルキアが殺害されそうになった一年前に生まれていて、明後日が八歳の誕生日だ」

「次期領主候補ですね」

「父親は恐らく屋敷にいる若い執事じゃ。二人はランドルフ伯爵領にいた頃からの付き合いらしい。息子も二人にそっくりだそうじゃ」

「実際に会えば分かりますけど、ルキアさんとは全く似ていないでしょうね」

「そして、親が親なら子も子じゃ。ワガママで誰も止められない。頭も悪く手に負えないそうじゃ」

「まともな教育を受けてなさそうですね」


 中々衝撃的な子どもだな。まだ貴族主義をこじらせた子どもの方がマシな気がする。

 話が通じない以上、誰も子どもに対して対応できないし。


「そしてここからが本題じゃ。先程言った通りに、この親子は暴力で憂さ晴らしをしている」

「自分が一番上と思っていますからね」

「そしてワース商会は、そんな二人に対して定期的に違法奴隷を提供しているという」

「それって、まさか……」

「ああ、そういう事じゃろう。そして、地下牢に傷ついた違法奴隷が数多くいたそうじゃ」

「まさか、殺害された子どももいたのでは?」

「それは分からぬ。少なくとも、地下牢にいた違法奴隷はみな生きていたという。ちなみにワース商会にも違法奴隷を見つけたそうじゃが、みな健康であったそうじゃ」


 思った以上に夫人と子どもはクズだと判明した。

 そしてそんな親子に違法奴隷を提供した、ワース商会もクズだ。

 周りの人も怒りで険しい顔になっているし、話しているビアンカ殿下も拳を握りしめていた。


「地下牢には領主もいた。幸いにも治療は上手くいったらしい。しかしそれ以上に怪我を負った子どもが多く、骨折や殴られてあざになったり、ムチで無数に叩かれた痕があったそうじゃ。リーフとタラとスラタロウは、可能性な限り治療を行ったという」

 

 酷い。酷すぎる。抵抗できない子どもに対してなんてことを。

 リーフとタラちゃんとスラタロウが落ち込むのもしょうがない。

 

「リーフにタラちゃん、スラタロウ。もし気持ちが辛かったら、明日は休んでもいいんだよ」

「サトー、私は行くよー。子ども達が待っているんだよー」

「サトーお姉ちゃん、タラも行くよ。だって子どもたちが、痛い痛いって言っているんだもん」


 リーフもタラちゃんも、大粒の涙を流しながらそれでも行くという。

 スラタロウも行く気だし、タコヤキも行くつもりらしい。


「分かった。明日はリーフとタラちゃんとスラタロウとタコヤキに、ルキアさんのお父さんと子どもたちの治療を任せよう。明後日に領主邸を制圧したら、囚われている人を早く助け出そう」


 リーフとタラちゃんの頭を撫でながら、明日のプランを立てる。

 今回は従魔に色々負担をかけてしまっている。

 せめて明後日は、俺達の手で色々けりをつけないと。

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